39 / 387
ウタと愉快な盗賊くん
アイリーンの贈り物
しおりを挟む
前回のあらすじ。ポロンくんにおれた。
押しに弱いのがヘタレというもの……そして、真っ直ぐな目を見逃せないのがアリアさんの優しさである。危険と分かっていても、強く否定することができず、押しきられてしまったのだ。
「……って言っても、おいらもそこまで情報知らないんだよなー」
「そうなのか?」
場所を移して、今は僕とアリアさんの泊まっている部屋。かなり大きい部屋だし、机もあるから、そこに座って今後どう行動するか話し合っていた。
「そりゃあ、一般人よりは知ってるだろうけど、したっぱには何も教えてくれねーんだ。
だから、分かることといえば、人数と、名前と、レベルくらいだな。それなら分かるぞ」
「じゃあ、とりあえずそれを教えてくれ」
「分かった」
ポロンくんが言うには、幹部四人はみんなレベル65。ローレン、モーリス、カーター、エイプリーといるらしい。ちなみにローレンとモーリスは男性、カーターとエイプリーは女性だ。
それぞれ得意な魔法と弱点になる魔法があるらしいが、一人一人違うということしか分からず、それ以上の情報はない。
頭領はレベル70。ノーセスという男性で、こちらもまた得意な魔法と弱点になる魔法があるらしい。……ここまでが、上層部の能力値に関する情報だ。
「で、上層部の居場所だけど、どっかに塔みたいな建物があるらしいんだけど、偽装かなにかを使ってて見えない……」
「あぁ、大丈夫だ。その場所は知ってる」
「…………は?!」
そう、場所はわかるのだ。これがアイリーンさんに聞いた二つ目の情報。アイリーンさんの千里眼にかかれば偽装なんて屁でもないらしい。
ちなみに、これ以上の情報は例のごとく教えてくれなかった。うーん、気遣いなのか、めんどくさいだけなのか、それとも……?
……あの人に関しては考えたら負けな気がする。やめよう。
とまぁその辺の事情をポロンくんに話し、情報共有する。
「……だからおいらの場所分かったのか……。たまたまかと思ったよ」
「たまたまで見つけられるほど運はない」
「まぁ、なさそうだよな」
「……で?」
「あぁ、そうそう。その塔は5階に分かれていて、最上階に頭領がいるみたいなんだ。それぞれのフロアを幹部が守ってるぽくて」
「なるほど、一人ずつ倒していく感じか」
ふむふむ、大体分かったぞー。弱点が分かればいいけれど、分からないんだよなー。
と、そのとき、扉を叩く音が聞こえた。
「はーい?」
すると、扉が開き、アイリーンさんがひょこっと顔を出して、それから中に入ってきた。
「スラちゃん返却に来たよー」
「ぷるるー!(ただいまー!)」
「あ! ありがとうございます!」
スラちゃんを受け取り、なでなでする。……やっぱりかわいい。
「……なぁ、アイリーン」
「なぁにー?」
「どうしても、これ以上は教えてくれないのか?」
「うんダメー! だって、旅は楽しんでこそでしょー? 分かってたら楽しくないよー」
「でも……」
やはり、情報不足で挑むのはなかなか難しい。作戦をたてないと……。
「……というかー、ウタくんとアリアさんはー、もう弱点知ってるよねー?」
「え?」
「え?」
「え?」
三連続はてなですよ、アイリーンさん。意味が分からんのですが。
「不安ー?」
「そりゃあ、まぁ」
「じゃーあ! これあげるー!」
アイリーンさんが小さな玉のようなものを僕とポロンくんに差し出してくる。あっ、なんだっけこれ。えーっと……。
「魔属性球体?」
「おいらにもくれるの?」
「うん! 二つしかないんだけどねー、友達にスキルもらったの! 一回しか使えないけど、役に立つと思うよー? 鑑定してみてー!」
「ウタ、頼む」
「はい! ……えっと、」
まずは僕の手の中にある方からみてみる。
三時のおやつ……一時的にパーティー全員のステータスを10倍にする。発動時間は30分間。パーティーで行動していない場合、対象(1~5まで)を選択可。
「わぁ!?」
「な、なんだったんだ!?」
「ステータス10倍、だそうです」
「「はぁ!?」」
さすがアイリーンさんの友人。スキルがえげつない。そして今度はポロンくんの方を鑑定する。
プランツファクトリー……対象(無限に選択可)に草木が絡み付き、完全に動きを封じる。発動時間は解除しない限り無限。焼却するには熟練度9以上の炎魔法。
「……相手の動きを完全に封じてくれるそうです。熟練度9の炎魔法でしか解除できないと」
「……うわぁ」
「強いでしょー!」
「そっすね……」
ていうか、強いのは強いけど、ネーミングセンスどうなってるの? いや、僕が言えたことじゃないか。
と、アイリーンさんがポロンくんに近づき、にこっと笑った。
「どう使うかは君次第だよー?」
「…………え」
「あー、そうそう! アリアさーん!」
今度はアリアさんに近づき、アイリーンさんは右手を出した。
「あくしゅ!」
「……え? あ、あぁ?」
そして、二人が握手したその瞬間、手と手の間から真っ白い光があふれた。
その様子に僕もポロンくんも、そしてアリアさんも驚いていると、アイリーンさんがほわほわとした口調でとんでもないことを告げる。
「ジャッジメント伝授しちゃったー!」
「…………は、え!? す、ステータス!」
アリアさんが慌てた様子でステータスを開く。僕も鑑定させてもらうと…………。
ふ、増えてる……。ユニークスキルのところが、『王室の加護・魔力向上・ジャッジメント』ってなってる……!
「あのねー、光属性だから、闇の人に効くかもー! 伝授されたものだから、発動範囲は半径1mだよー!
あ、でも、消費MP、最低で15000だから気をつけてねー!」
「使えないじゃないか!」
「アイリーンはふとっぱらなのだー! 一回だけ無条件に使えるようにしといたよー! 二回目以降はー……まぁそのうち?」
「適当! というか伝授なんて技、聞いたことないぞ!」
「んー……相性がいいとできるっぽいー? レベル差50以上って条件付きみたいだけど、スキルとかじゃなくて、なんか出来るー!」
さっきからとんでもないことばっかり言ってる気がするよこの人。うーん、このテンションにもなれてきたと思ったのになぁ。
「ていうか、止めたりとか、そういうのはないんですね」
「…………? 何で止めなきゃいけないの?」
「え、だって……」
「ウタくんたちなら勝てるよー! らくしょーらくしょー!」
本当に楽勝なのはアイリーンさんでは……? そんな言葉をグッと押さえつつ、目の前にいる実力者にそんな風に言われて、溢れてくる自信を感じていた。
「ありがとうございます、アイリーンさん!」
「ジャッジメントか……使いこなせるかは分からないが、やれるだけやってみよう。ありがとう、アイリーン」
「どういたしましてー! ……ふぁぁ…………おやすみー」
アイリーンさんが出ていくのを、僕とアリアさんはあたたかい目で見送った。そして、上層部討伐への心の準備を整えるのだった。
……ただ、ポロンくんだけは思い詰めたように魔属性球体を見つめ、じっと考え込んでいた。
押しに弱いのがヘタレというもの……そして、真っ直ぐな目を見逃せないのがアリアさんの優しさである。危険と分かっていても、強く否定することができず、押しきられてしまったのだ。
「……って言っても、おいらもそこまで情報知らないんだよなー」
「そうなのか?」
場所を移して、今は僕とアリアさんの泊まっている部屋。かなり大きい部屋だし、机もあるから、そこに座って今後どう行動するか話し合っていた。
「そりゃあ、一般人よりは知ってるだろうけど、したっぱには何も教えてくれねーんだ。
だから、分かることといえば、人数と、名前と、レベルくらいだな。それなら分かるぞ」
「じゃあ、とりあえずそれを教えてくれ」
「分かった」
ポロンくんが言うには、幹部四人はみんなレベル65。ローレン、モーリス、カーター、エイプリーといるらしい。ちなみにローレンとモーリスは男性、カーターとエイプリーは女性だ。
それぞれ得意な魔法と弱点になる魔法があるらしいが、一人一人違うということしか分からず、それ以上の情報はない。
頭領はレベル70。ノーセスという男性で、こちらもまた得意な魔法と弱点になる魔法があるらしい。……ここまでが、上層部の能力値に関する情報だ。
「で、上層部の居場所だけど、どっかに塔みたいな建物があるらしいんだけど、偽装かなにかを使ってて見えない……」
「あぁ、大丈夫だ。その場所は知ってる」
「…………は?!」
そう、場所はわかるのだ。これがアイリーンさんに聞いた二つ目の情報。アイリーンさんの千里眼にかかれば偽装なんて屁でもないらしい。
ちなみに、これ以上の情報は例のごとく教えてくれなかった。うーん、気遣いなのか、めんどくさいだけなのか、それとも……?
……あの人に関しては考えたら負けな気がする。やめよう。
とまぁその辺の事情をポロンくんに話し、情報共有する。
「……だからおいらの場所分かったのか……。たまたまかと思ったよ」
「たまたまで見つけられるほど運はない」
「まぁ、なさそうだよな」
「……で?」
「あぁ、そうそう。その塔は5階に分かれていて、最上階に頭領がいるみたいなんだ。それぞれのフロアを幹部が守ってるぽくて」
「なるほど、一人ずつ倒していく感じか」
ふむふむ、大体分かったぞー。弱点が分かればいいけれど、分からないんだよなー。
と、そのとき、扉を叩く音が聞こえた。
「はーい?」
すると、扉が開き、アイリーンさんがひょこっと顔を出して、それから中に入ってきた。
「スラちゃん返却に来たよー」
「ぷるるー!(ただいまー!)」
「あ! ありがとうございます!」
スラちゃんを受け取り、なでなでする。……やっぱりかわいい。
「……なぁ、アイリーン」
「なぁにー?」
「どうしても、これ以上は教えてくれないのか?」
「うんダメー! だって、旅は楽しんでこそでしょー? 分かってたら楽しくないよー」
「でも……」
やはり、情報不足で挑むのはなかなか難しい。作戦をたてないと……。
「……というかー、ウタくんとアリアさんはー、もう弱点知ってるよねー?」
「え?」
「え?」
「え?」
三連続はてなですよ、アイリーンさん。意味が分からんのですが。
「不安ー?」
「そりゃあ、まぁ」
「じゃーあ! これあげるー!」
アイリーンさんが小さな玉のようなものを僕とポロンくんに差し出してくる。あっ、なんだっけこれ。えーっと……。
「魔属性球体?」
「おいらにもくれるの?」
「うん! 二つしかないんだけどねー、友達にスキルもらったの! 一回しか使えないけど、役に立つと思うよー? 鑑定してみてー!」
「ウタ、頼む」
「はい! ……えっと、」
まずは僕の手の中にある方からみてみる。
三時のおやつ……一時的にパーティー全員のステータスを10倍にする。発動時間は30分間。パーティーで行動していない場合、対象(1~5まで)を選択可。
「わぁ!?」
「な、なんだったんだ!?」
「ステータス10倍、だそうです」
「「はぁ!?」」
さすがアイリーンさんの友人。スキルがえげつない。そして今度はポロンくんの方を鑑定する。
プランツファクトリー……対象(無限に選択可)に草木が絡み付き、完全に動きを封じる。発動時間は解除しない限り無限。焼却するには熟練度9以上の炎魔法。
「……相手の動きを完全に封じてくれるそうです。熟練度9の炎魔法でしか解除できないと」
「……うわぁ」
「強いでしょー!」
「そっすね……」
ていうか、強いのは強いけど、ネーミングセンスどうなってるの? いや、僕が言えたことじゃないか。
と、アイリーンさんがポロンくんに近づき、にこっと笑った。
「どう使うかは君次第だよー?」
「…………え」
「あー、そうそう! アリアさーん!」
今度はアリアさんに近づき、アイリーンさんは右手を出した。
「あくしゅ!」
「……え? あ、あぁ?」
そして、二人が握手したその瞬間、手と手の間から真っ白い光があふれた。
その様子に僕もポロンくんも、そしてアリアさんも驚いていると、アイリーンさんがほわほわとした口調でとんでもないことを告げる。
「ジャッジメント伝授しちゃったー!」
「…………は、え!? す、ステータス!」
アリアさんが慌てた様子でステータスを開く。僕も鑑定させてもらうと…………。
ふ、増えてる……。ユニークスキルのところが、『王室の加護・魔力向上・ジャッジメント』ってなってる……!
「あのねー、光属性だから、闇の人に効くかもー! 伝授されたものだから、発動範囲は半径1mだよー!
あ、でも、消費MP、最低で15000だから気をつけてねー!」
「使えないじゃないか!」
「アイリーンはふとっぱらなのだー! 一回だけ無条件に使えるようにしといたよー! 二回目以降はー……まぁそのうち?」
「適当! というか伝授なんて技、聞いたことないぞ!」
「んー……相性がいいとできるっぽいー? レベル差50以上って条件付きみたいだけど、スキルとかじゃなくて、なんか出来るー!」
さっきからとんでもないことばっかり言ってる気がするよこの人。うーん、このテンションにもなれてきたと思ったのになぁ。
「ていうか、止めたりとか、そういうのはないんですね」
「…………? 何で止めなきゃいけないの?」
「え、だって……」
「ウタくんたちなら勝てるよー! らくしょーらくしょー!」
本当に楽勝なのはアイリーンさんでは……? そんな言葉をグッと押さえつつ、目の前にいる実力者にそんな風に言われて、溢れてくる自信を感じていた。
「ありがとうございます、アイリーンさん!」
「ジャッジメントか……使いこなせるかは分からないが、やれるだけやってみよう。ありがとう、アイリーン」
「どういたしましてー! ……ふぁぁ…………おやすみー」
アイリーンさんが出ていくのを、僕とアリアさんはあたたかい目で見送った。そして、上層部討伐への心の準備を整えるのだった。
……ただ、ポロンくんだけは思い詰めたように魔属性球体を見つめ、じっと考え込んでいた。
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる