チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない

植木鉢たかはし

文字の大きさ
上 下
37 / 387
ウタと愉快な盗賊くん

千里眼

しおりを挟む
「……大丈夫か?」

「大丈夫です……大丈夫じゃないけど、大丈夫です」

「それだいじょばないよな」


 朝から僕の顔色が悪いのか、アリアさんに心配されっぱなしだ。しかし、決して言わないが、察してほしい。そもそもの原因がアリアさんだということに。


「まぁ、それはともかくだ。今日はをお願いするんだから、体調は整えておけよ」

「はーい……」


 ……ん? あれって何かって? そりゃもちろん、あれのことだよ。


◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈


「よし、じゃあ頼むぞ」

「いいよー! お代はチョコレートー!」

「チョコ、いっぱい買ってきました!」

「よかろうー! じゃあ、やるねー!」


 お代はチョコレート……もちろん、宿泊代のことじゃない。そっちはそっちでちゃんと払った。まぁ、もう一泊するんだけど。……その前にアイマスクとかほしい。あと耳栓。
 ってまぁ、とにかく今はそれではないのだ。

 アイリーンさんにお願いしているのは、『千里眼』だ。これで、ある人と場所を見つけてもらう。
 ディランさんやもう一つの『勇気』のことについても知りたかったけど、そちらに関しては『いくらチョコレート積まれてもやらないよー』とのことだったので諦めた。自分達で頑張れよ的なことなのだろうか?


「んーーーーーー……あ! みーつけた!」

「分かったんですか!?」

「うん! ちょっと待ってねー、地図持ってくるからー!」


 その後、地図に印をつけてもらい、僕らはギルドへ向かった。ラミリエの外に出る必要があるので、ついでに依頼でも受けようかと思ったのだ。


「……あ! アリアさん! 薬草採取の依頼がありますよ! しかも二つ! 量は多そうですけど、報酬は金貨三枚ですって!」

「嬉しそうだなー、お前」

「だってこれなら泣かないで済むじゃないですか! すみませーん! この依頼なんですけどー!」

「……ったく、少しはなれないと、自分の身が危ないぞ」


 二人それぞれ依頼をとったあとは、身分証を提示し、急ぎ足でラミリエの外に出る。木々が多く、視界は良くないのだが、だからこそ、納得もいく。
 地図を頼りに、しばらく奥の方へ歩いていくと、僕らが探していた人が木の根もとに座り込んでいた。アリアさんと目配せして回り込む。


「……よっ!」

「うわぁぁ?! な、なんだよ! まだ何か用かよ!」

「まだって、話し終わる前に逃げたのはポロンくんじゃ……」

「うっ……そ、そりゃ、捕まる前に逃げるのが盗賊の鉄則だろ!?」

「捕まってたけどね」

「そうだな」

「う、うるさいうるさいうるさい! おいらはお前らと話なんてしたくないやい!」


 そうして駆け出しそうになったポロンくんの腕を、僕とアリアさんが掴む。


「まぁまぁまぁまぁ」

「まぁまぁまぁまぁ」

「ぷるぷるぷるぷる」

「なんだよ気持ち悪いな! 離しやがれ!」

「……まぁまぁまぁまぁ」

「まぁまぁまぁまぁ」

「ぷるぷるぷるぷる」

「ちゃんとした言葉を話せぇぇぇ!!!」


 まぁ、もうお分かりだとは思うが、僕らが探してもらった『人』とはポロンくんのことであった。アイリーンさんいわく、『あんまり食べてないみたいだから、少しくらい時間がたっても遠くに行かないだろうしー、逃げ足も遅いと思うよー』だそうだ。

 全くもってその通り。アイリーンさんにこの場所を聞いたのは1時間ほども前だが、印の場所からほとんど離れていない。そして逃げ足も、前より遅い。……口だけは元気だが。


「くっそぉ……また捕まったぁ。今度はどこ行く気だよ! 先に説明しやがれー!」

「薬草採りながら、ラミリエに。なー!」

「なー!」

「ぷるー!」

「答えになってるようでなってないような!? ってか! ラミリエって、おいらのこと突き出すのか!?
 というか薬草採りながらって、なんだよそのビミョーな感じ! 連行するならもっとちゃんと連行しろー!」

「レンコン?」

「れ・ん・こ・う!」

「……れんこーん! れんこーん! れんこーん!」

「うっそだろ!? って、腕掴んだまま行進的なのするのやめろ!
 ……お、おい! お前こいつの変な言動やめさせろよ!」

「…………ポロン、」

「な……なんだよ…………。まさか!?」

「れんこーん! れんこーん! れんこーん!」

「お前もかあ!!!」

「っとまぁ、冗談はさておき」

「今の冗談ですまされると思ってるの!?」

「さっさと行くか、ウタ。鑑定は任せたぞ」

「了解でーす!」

「ちょ! 腕掴んだまま歩くな! そしておいらはまだ許してないぞ! とりあえず10個くらい突っ込ませろーーー!!!」

「まぁまぁまぁまぁ」

「まぁまぁまぁまぁ」

「ぷるぷるぷるぷる」

「何これ! 永遠ループって怖くね!?」


 騒ぎ立てるポロンくんをあやしながら、薬草を採っては鑑定しを続けながら、僕らはラミリエへ戻っていった。お! ノルマ達成、やったね!
 そして、街への入り口が見えると、ポロンくんが今までにないほどの抵抗をした。


「まっ、待てよ! おいらは捕まりたくねーんだ! 門番がいるんじゃ捕まって終わりだよ! 頼むから離してくれよ!」

「悪いがポロン、お前には色々聞きたいことがあるんだ。だから逃がすわけにはいかない」

「…………」


 ムッとした様子のポロンくんに優しく微笑み、アリアさんは言う。


「だからまぁ、私に任せておけ」

「……は?」


 そしてポロンくんの手を離し、門番に近づき、言った。


「こいつ、森の中で行き倒れてたんだ。身分証とかもなくしたらしくてな。私が必ず面倒見るから、入れてくれないか?」

「はっ! アリア様がそういうのであれば!」

「ありがとう」


 手招きするアリアさんと、未だに腕を持ったままの僕を交互に見てポロンくんはポツリと言う。


「……どういうことだよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

婚約破棄追追放 神与スキルが謎のブリーダーだったので、王女から婚約破棄され公爵家から追放されました

克全
ファンタジー
小国の公爵家長男で王女の婿になるはずだったが……

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

処理中です...