33 / 387
ウタと愉快な盗賊くん
ギルドへ
しおりを挟む
結果として、やっぱり女侍にぼったくられ、金貨二枚を失い、僕らはしぶしぶ手に入れた睡眠学習用枕もろもろをアイテムボックスに入れた。
それからしばらくして、ようやく本来の目的であるギルドに辿り着いたのだった。……まぁ、あの人が言っていたことが気にならなくもないが、今はこちらから攻めようという話になった。
ギルドに入り、受付嬢の一人にアリアさんが声をかける。
「少しいいか?」
「はい、どうなさいましたか?」
「キルナンスのやつらは、ここに捕らえられているんだな?
会わせてほしい。いくつか聞きたいことがあるんだ」
「え!? 何いってるんですか! ダメですよ一般の人がそんなこと!」
「……あー、そうなるわけか」
アリアさんは、少し前まではただ帽子をかぶっているだけだったが、キルナンスの狙いが自分だと分かり、今は長く綺麗な金髪を帽子にいれて隠している。
まぁそのせいで、受付嬢さんに話が通じなくなってしまったようだが。
「んー……どうしましょうか」
「まぁ、これが一番手っ取り早いだろう。
めんどくさいことになるかもしれないが、その時は、上手く立ち回ってくれ」
「…………?」
そしてアリアさんが帽子に手をかけると、ふわっと綺麗な金髪がこぼれ、アリアさんの胸より少し下くらいまで落ちていった。
アリアさんは唖然としているギルドの受付嬢さんを横目に、蝶の髪飾りで手早く長い髪をまとめると、にっこりと笑った。
「これならいいか?」
「あ……あ、アリア様!? 本当にいらっしゃったんですか!?」
「あぁ。だから、キルナンスのやつらの――」
……なんだか、周りがうるさい気がするなぁー?
「アリア様!」
「アリア様だ! 本物だ!」
「お、おい……めっちゃ美人じゃねーかよ」
「こうしてられるかよ! 握手だけでもしてもらわねーと!」
「ちょっと! あんたばっかりずるいわよ!」
「あ、わ、私も!」
「俺もー!」
「……え、わ、ちょっと待っ」
「アリア様ー!!!」
「うわぁ!?」
アリアさんはあっという間にギルド内にいた人々に囲まれ、完全にもみくちゃにされていた。……めんどくさいって、こういうことか。人気者は辛いなぁ……。
「……う、ウタっ! 助けてくれっ!
っ、あー! ちゃんと順番に対応するから、少し離れろー!」
「あっ、アリアさん! ちょっと待ってください!」
人混みを押し分け、なんとかその隙間からアリアさんを逃がす。……レベル上がっててよかったぁ。ステータス上限無効持っててよかったぁ。でなきゃみんな格上だから弾き飛ばされて終わりだったよ。
……こうして始まったアリアさんの握手会(?)は、相当な時間にわたって行われた。いやいや、アリアさんアイドルかい。って、なんか人増えてるし。
その間に僕はキルナンスの人たちについて交渉をし、今回のキルナンスの部隊長だった人と面会する許可をもらった。
なんやかんやあって、ようやくみんなから解放されたアリアさんは、これからはもっと冷静に行動しろと言い、みなさま、元気なお返事をしていました。
「……ふぅ、やっとか」
「お疲れ様です。……いつもこうなんですか?」
「いつもって訳じゃないが、王都に近いところだと高確率でこうなる。他国や田舎だとそうでもないさ」
「そうなんですか。……いやまぁ、他でもこうだったら大変ですもんね。
部隊長だった人と面会できるらしいです」
「そうか。任せっきりで悪かったな」
「逆にあれで対応しようとか無理じゃないですか?」
「…………まぁ、な」
僕らがカウンターの奥の扉に入ると少し開けた空間になっていて、そこには一人の男性が立っていた。
「このギルドのギルドマスター、クラークといいます。アリア様と、ウタ様ですね、どうぞこちらへ」
「はい。……あの騒ぎの中、キルナンスの人がみんな倒れて、誰も不思議に思わなかったんですか?」
「アイリーン様の実力は、みな存じておりますので」
「なるほど」
そして、そのまま奥に案内される。広くはない通路を進んでいくと、やがて、頑丈そうな真っ黒い扉の前に来る。
「この部屋は面会用の隔離部屋となっています。中は透明な壁で仕切られており、全ての攻撃体制があるため危害は与えられませんが声は聞こえます。
万が一なにかありましたら私をお呼びください。少しは力になれるでしょう。
あぁ、スライムは、中へは入れないでください。私がちゃんと見ています」
「ぷる……」
僕はスラちゃんを肩から床に下ろし、そっと撫でた。
「……分かった。ちなみに、中にいるのは何て言うやつだ?」
「確か、ガルシアという男です。レベルは50を越えているようですが、捕らえられたキルナンスの中では話が出来る方ですよ。中には、錯乱しているのか、誰彼構わず魔法を放つような輩もいましたからね」
そこまで言うと、クラークさんは扉を開き、僕らを中へ促した。それに従って中に入ると、少し薄暗い印象で、例えるとすれば、刑事ドラマであるような面会室。あれによく似たつくりになっていた。
こちら側には椅子が二つ。他にものはなく、入ってきた扉があるだけだった。
あちら側も、造りとしてはほとんど同じ。違うことがあるとすれば、あちらには椅子は一つしかなく、もうすでに、一人の男が座っていた。
瞳は深い緑色。髪は黒く、ボサボサだった。髭も伸び、きれいとは決して言えないような見た目だが、雰囲気だけは妙に落ち着いていた。
僕らは用意されていた椅子に腰を掛けると、じっとその男の、深い緑の目を見た。
「……お前が、ガルシアか?」
アリアさんがたずねると、男はにたぁっと、気味の悪い笑みを浮かべた。
それからしばらくして、ようやく本来の目的であるギルドに辿り着いたのだった。……まぁ、あの人が言っていたことが気にならなくもないが、今はこちらから攻めようという話になった。
ギルドに入り、受付嬢の一人にアリアさんが声をかける。
「少しいいか?」
「はい、どうなさいましたか?」
「キルナンスのやつらは、ここに捕らえられているんだな?
会わせてほしい。いくつか聞きたいことがあるんだ」
「え!? 何いってるんですか! ダメですよ一般の人がそんなこと!」
「……あー、そうなるわけか」
アリアさんは、少し前まではただ帽子をかぶっているだけだったが、キルナンスの狙いが自分だと分かり、今は長く綺麗な金髪を帽子にいれて隠している。
まぁそのせいで、受付嬢さんに話が通じなくなってしまったようだが。
「んー……どうしましょうか」
「まぁ、これが一番手っ取り早いだろう。
めんどくさいことになるかもしれないが、その時は、上手く立ち回ってくれ」
「…………?」
そしてアリアさんが帽子に手をかけると、ふわっと綺麗な金髪がこぼれ、アリアさんの胸より少し下くらいまで落ちていった。
アリアさんは唖然としているギルドの受付嬢さんを横目に、蝶の髪飾りで手早く長い髪をまとめると、にっこりと笑った。
「これならいいか?」
「あ……あ、アリア様!? 本当にいらっしゃったんですか!?」
「あぁ。だから、キルナンスのやつらの――」
……なんだか、周りがうるさい気がするなぁー?
「アリア様!」
「アリア様だ! 本物だ!」
「お、おい……めっちゃ美人じゃねーかよ」
「こうしてられるかよ! 握手だけでもしてもらわねーと!」
「ちょっと! あんたばっかりずるいわよ!」
「あ、わ、私も!」
「俺もー!」
「……え、わ、ちょっと待っ」
「アリア様ー!!!」
「うわぁ!?」
アリアさんはあっという間にギルド内にいた人々に囲まれ、完全にもみくちゃにされていた。……めんどくさいって、こういうことか。人気者は辛いなぁ……。
「……う、ウタっ! 助けてくれっ!
っ、あー! ちゃんと順番に対応するから、少し離れろー!」
「あっ、アリアさん! ちょっと待ってください!」
人混みを押し分け、なんとかその隙間からアリアさんを逃がす。……レベル上がっててよかったぁ。ステータス上限無効持っててよかったぁ。でなきゃみんな格上だから弾き飛ばされて終わりだったよ。
……こうして始まったアリアさんの握手会(?)は、相当な時間にわたって行われた。いやいや、アリアさんアイドルかい。って、なんか人増えてるし。
その間に僕はキルナンスの人たちについて交渉をし、今回のキルナンスの部隊長だった人と面会する許可をもらった。
なんやかんやあって、ようやくみんなから解放されたアリアさんは、これからはもっと冷静に行動しろと言い、みなさま、元気なお返事をしていました。
「……ふぅ、やっとか」
「お疲れ様です。……いつもこうなんですか?」
「いつもって訳じゃないが、王都に近いところだと高確率でこうなる。他国や田舎だとそうでもないさ」
「そうなんですか。……いやまぁ、他でもこうだったら大変ですもんね。
部隊長だった人と面会できるらしいです」
「そうか。任せっきりで悪かったな」
「逆にあれで対応しようとか無理じゃないですか?」
「…………まぁ、な」
僕らがカウンターの奥の扉に入ると少し開けた空間になっていて、そこには一人の男性が立っていた。
「このギルドのギルドマスター、クラークといいます。アリア様と、ウタ様ですね、どうぞこちらへ」
「はい。……あの騒ぎの中、キルナンスの人がみんな倒れて、誰も不思議に思わなかったんですか?」
「アイリーン様の実力は、みな存じておりますので」
「なるほど」
そして、そのまま奥に案内される。広くはない通路を進んでいくと、やがて、頑丈そうな真っ黒い扉の前に来る。
「この部屋は面会用の隔離部屋となっています。中は透明な壁で仕切られており、全ての攻撃体制があるため危害は与えられませんが声は聞こえます。
万が一なにかありましたら私をお呼びください。少しは力になれるでしょう。
あぁ、スライムは、中へは入れないでください。私がちゃんと見ています」
「ぷる……」
僕はスラちゃんを肩から床に下ろし、そっと撫でた。
「……分かった。ちなみに、中にいるのは何て言うやつだ?」
「確か、ガルシアという男です。レベルは50を越えているようですが、捕らえられたキルナンスの中では話が出来る方ですよ。中には、錯乱しているのか、誰彼構わず魔法を放つような輩もいましたからね」
そこまで言うと、クラークさんは扉を開き、僕らを中へ促した。それに従って中に入ると、少し薄暗い印象で、例えるとすれば、刑事ドラマであるような面会室。あれによく似たつくりになっていた。
こちら側には椅子が二つ。他にものはなく、入ってきた扉があるだけだった。
あちら側も、造りとしてはほとんど同じ。違うことがあるとすれば、あちらには椅子は一つしかなく、もうすでに、一人の男が座っていた。
瞳は深い緑色。髪は黒く、ボサボサだった。髭も伸び、きれいとは決して言えないような見た目だが、雰囲気だけは妙に落ち着いていた。
僕らは用意されていた椅子に腰を掛けると、じっとその男の、深い緑の目を見た。
「……お前が、ガルシアか?」
アリアさんがたずねると、男はにたぁっと、気味の悪い笑みを浮かべた。
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

異世界転生漫遊記
しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は
体を壊し亡くなってしまった。
それを哀れんだ神の手によって
主人公は異世界に転生することに
前世の失敗を繰り返さないように
今度は自由に楽しく生きていこうと
決める
主人公が転生した世界は
魔物が闊歩する世界!
それを知った主人公は幼い頃から
努力し続け、剣と魔法を習得する!
初めての作品です!
よろしくお願いします!
感想よろしくお願いします!

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる