チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない

植木鉢たかはし

文字の大きさ
上 下
16 / 387
駆け出し転生者ウタ

説明してね!

しおりを挟む
 ……僕のステータスは、壊れていた。分かりやすいように、前との比較も踏まえて見てもらおう。


名前 ウタ

種族 人間

年齢 17

職業 村人(仮)

レベル 1→1200

HP 1500→1800000

MP 800→960000

スキル 言語理解・アイテムボックス・鑑定・暗視・剣術(初級→上級)・体術(初級→上級)・初級魔法(熟練度1.2→15)・使役(初級→上級)

ユニークスキル 女神の加護・勇気

称号 転生者・ヘタレ・敵前逃亡



 これは、なんだ?
 完全にフリーズしている僕の目の前でアリアさんが手をヒラヒラさせ、心配そうに覗きこんでくる。


「……大丈夫か?」

「アリアさんも見たら同じ反応しますよ」

「は?」


 僕はステータスを一つ一つ丁寧に読み上げる。


「……は?」


 ほらフリーズした! ね? 僕は正常ですっ!


「ど、どうなってるんでしょう、僕のステータス! 壊れた? 壊れたのか!?」

「これはあれか……? 勇気が、発動したのか?」

「発動してたんですかぁ?!」

「だって、鑑定できたんだろ?!」


 それにしたってレベル1200はおかしすぎるだろ……。


「これはーあれか? ドラゴンを倒したことで、レベルが12まであがって、そのステータスが100倍になってるってこと、なのか?
 というか熟練度15って……熟練度の限界は10のはずなんだが」

「そんなチートあります!?」


 いや、それにしたっておかしい! だって、100分の1にしてもHP18000だ。アリアさんどころか、エヴァンさんをも大きく上回っている。


「それは、『勇気』のおまけだな」

「おまけってなんだよ!」

「そうですよ! おまけって一体!」

「ぷるるっ!」

「……あれ?」


 僕らは顔を見合わせる。『おまけ』とか言ったその人の姿が見当たらないのだ。思わず突っ込んでしまったけど。


「こっちだ、人の子よ」

「……ウタ、私は今、猛烈に嫌な予感がしている。よって振り向きたくない」

「激しく同意します」

「おい」


 あー! これは分かってても振り向かなきゃいけないやつ! 僕はアリアさんの手をつかんだ。


「いいいいい、いきますよ? せーので、いきますよ?」

「わ、分かった。せーのだからな」

「……いきます、」

「「せーのっ!」」


 振り向いたそこには、倒したはずのドラゴンがいた。
 僕がつけたはずの傷はすっかり塞がっていて、もう元気はつらつって感じですね、はい。


「人の子よ、我はダークドラゴン。この地を治めていた龍種の王であり――」


 そんなドラゴンの言葉は、僕の耳には届いていなかった。


「……アリアさん、さ、叫びたい」

「わ、私だって我慢してるんだ……男だろ、耐えろ」

「そこで性別出さないでぇ……」


 そ! そうだ! 今僕のステータスは壊れてるんだから、きっと大丈夫! うん!



名前 ウタ

種族 人間

年齢 17

職業 村人(仮)

レベル 12

HP 18000

MP 9600

スキル 言語理解・アイテムボックス・鑑定・暗視・剣術(初級)・体術(初級)・初級魔法(熟練度1.5)・使役(初級)

ユニークスキル 女神の加護・勇気

称号 転生者・ヘタレ・敵前逃亡



 勇気きれたぁぁぁ! そういえば時間制限あるんだった! え!? ヤバイヤバイ! 絶体絶命ってやつ?! というか3分は短いだろ! 僕ウルトラマンじゃないんだから!


「……おい、聞いているのか?」

「はい! 全く聞いていません!」

「ばっ、正直に答えてどうする!」

「うわぁぁぁぁぁ!」

「…………」


 あからさまにあきれたような表情をするドラゴンに、スラちゃんが「ぷるっ(ごめん、ちょっと待ってあげて)」と目で訴える。……スラちゃんが一番肝が座っていた。


「……はぁ、我はこんなやつに助けられたのか」

「ごめんなさい! ごめんなさい! だから殺さないでぇっ!
 ……え? 助けられた?」

「お主らに手を出すつもりは、今はもうない。だから頼むから、落ち着いて話を聞いてくれんか?」

「は、はい……」

「ぷるる(やれやれ)……」


◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈


「……気を取り直して、だな。我はダークドラゴン。この地を治めていた龍種の王であり、これからお主に遣えるであろう者だ」

「ストップ! いくつか質問させてほしいです!」


 一旦落ち着いてドラゴンの話を聞き始めた僕らだが……開始早々意味が分からないよ! どういうこと、どういうこと?!


「王?!」

「この辺りだけだがな。仲間にはそう呼ばれている」

「で、これからウタに遣えるとか言ったな?」

「そうだな。我はこやつに助けられた。だからそうするまで。なにかおかしいか?」

「助けるもなにも、剣ぶっ刺したんだけど……。あ! あとそう! さっきおまけとか言ってましたけど、おまけとは……?」


 まぁまぁ慌てるな、とドラゴンは僕らを制し、ゆっくりと説明し始めた。


「簡単な方からいこうか。お主……ウタ、といったか? ウタ殿のスキルである『勇気』の基本的な能力は発動したときにステータスをあげることだ。
 しかし、発動していないときにも勇気はちょっとした仕事をする。それが、『ステータス制限無効』だ」

「ステータス制限無効?」

「ウタ……お前、そんな力もあったのか」

「いやいやいや! 分かんない分かんない!」


 アリアさんに聞いたところ、普通の人はレベルが1から2に上がったところでステータスが二倍になるわけじゃない。そこにはある程度の制限がある。よって、ある一定の割合でちょっとずつ増えていくのだ。まぁ、だからこそのアリアさんたちのステータスというわけだ。
 しかし、僕のその能力があれば、制限なく、二倍なら二倍、三倍なら三倍と限りなくステータスが伸びる。そういうことらしい。


「……っていったって、僕がヘタレなのには変わりありませんから、どっちにしろ戦いはへなちょこですけど」

「まぁ、それが『勇気』のおまけというわけだ」

「おまけにしてはでかすぎる気が……」

「だな」


 やはり、なんだかんだで僕は規格外らしい。ヘタレだけど。
 ……はいここ重要! テスト出るよ! リピートアフターミー、『ヘタレだけど!』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

婚約破棄追追放 神与スキルが謎のブリーダーだったので、王女から婚約破棄され公爵家から追放されました

克全
ファンタジー
小国の公爵家長男で王女の婿になるはずだったが……

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

処理中です...