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一日目、朝。
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一日目、朝。
今日から中学校は新学期。僕は一学期を怪我で欠席していたので、夏休みも含めて、数ヶ月ぶりの登校。みんな、元気だろうか?
あ、怪我、というのは、交通事故のことである。僕が覚えていることといったら、深夜の横断歩道に僕がいたことと、ライトが信じられないぐらいの速さで近づいてきたことだけ。まだ犯人も捕まっていないし、そもそも、近郊の監視カメラにすら、何も写っていないという。
あと、全身がものすごく痛い記憶。きーん、きんという音。それが長時間続いたような気がする。思い出そうとするだけで、体調が悪くなってしまう。
今日の空は爽快だ。
街角でクラスメイトの未凪さんと会う。相変わらず背が高い。
「おはよー、みなぎさん」
「あ、あかおくん?久しぶり」
以前もたまにこうして出会っていた。出会えると幸運、僕はそれくらいの認識をしている。未凪さんは男女問わず人気で、僕なんかが話せる機会はここくらいなのだ。
「僕がいなくなってから、学校の様子はどう?彩奈さんの派閥とか、一学期は色々あったけど」
「うーん。私が言ったってことは言わないよね?」
こちらを見返す未凪さんは何か迷っているようだった。
「あやなと仲のいい子たちの中に、子雀ちゃんっていたよね。あの子が頼人と付き合ったんだよね。それでグループから除外されてる」
待ってほしい。僕は人の名前を覚えるのが得意じゃないのだ。
彩奈・子雀・頼人。三人が登場人物。彩奈は頼人が好きだった、はず。頼人は子雀と付き合った。ああ、やっと理解できた。
「思い出せてない感じ?」
未凪さんに心配されてしまった。適当に濁しておく。
事故に遭ってから、僕の脳みそは少し回線が遅くなったようなのだ。
学校について、自分の靴箱を思い出す。
教室について、自分の机を思い出す。何か、戸惑うような気配を感じた。なんだろう?誰からなのかはわからなかった。好きな推理小説を読んでいると、先生が来て、HRが始まった。
僕はこれから、平凡な日常を再開するつもりだった。ところが、そうはならなかったのである。それは崩壊のファンファーレだったのだけれど、僕はそれには気づけない。
今日から中学校は新学期。僕は一学期を怪我で欠席していたので、夏休みも含めて、数ヶ月ぶりの登校。みんな、元気だろうか?
あ、怪我、というのは、交通事故のことである。僕が覚えていることといったら、深夜の横断歩道に僕がいたことと、ライトが信じられないぐらいの速さで近づいてきたことだけ。まだ犯人も捕まっていないし、そもそも、近郊の監視カメラにすら、何も写っていないという。
あと、全身がものすごく痛い記憶。きーん、きんという音。それが長時間続いたような気がする。思い出そうとするだけで、体調が悪くなってしまう。
今日の空は爽快だ。
街角でクラスメイトの未凪さんと会う。相変わらず背が高い。
「おはよー、みなぎさん」
「あ、あかおくん?久しぶり」
以前もたまにこうして出会っていた。出会えると幸運、僕はそれくらいの認識をしている。未凪さんは男女問わず人気で、僕なんかが話せる機会はここくらいなのだ。
「僕がいなくなってから、学校の様子はどう?彩奈さんの派閥とか、一学期は色々あったけど」
「うーん。私が言ったってことは言わないよね?」
こちらを見返す未凪さんは何か迷っているようだった。
「あやなと仲のいい子たちの中に、子雀ちゃんっていたよね。あの子が頼人と付き合ったんだよね。それでグループから除外されてる」
待ってほしい。僕は人の名前を覚えるのが得意じゃないのだ。
彩奈・子雀・頼人。三人が登場人物。彩奈は頼人が好きだった、はず。頼人は子雀と付き合った。ああ、やっと理解できた。
「思い出せてない感じ?」
未凪さんに心配されてしまった。適当に濁しておく。
事故に遭ってから、僕の脳みそは少し回線が遅くなったようなのだ。
学校について、自分の靴箱を思い出す。
教室について、自分の机を思い出す。何か、戸惑うような気配を感じた。なんだろう?誰からなのかはわからなかった。好きな推理小説を読んでいると、先生が来て、HRが始まった。
僕はこれから、平凡な日常を再開するつもりだった。ところが、そうはならなかったのである。それは崩壊のファンファーレだったのだけれど、僕はそれには気づけない。
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