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本編

02.

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結論から言うと、すんごかった。

今までのアイツとのあれは何だったんだろうかというくらい、すんごかった。
前後も上下も分からなくなるくらい激しく揺さぶられて声が掠れるほどあんあん啼いてしまったし、初めてイってしまった。
それも一度や二度じゃすまなかったし、ジスランも私のナカにも外にもどっぴゅんどっぴゅん出しまくってた。
どんだけすごいの、モドキ効果!?と思わずにはいられない。

とにかくいつの間にやらすっかり全裸でまぐわいにまぐわいまくって、ようやく落ち着いた頃には外はすっかりと暗くなっていた。
だるいどころの話ではないし、聖なる日だけに精……ゴッホン! うん、まぁ色々とドロドロすぎてアレだし、もう今晩は町に帰ることは諦めてここで夜を明かそう……と思って気付く。

小屋の片隅にある小さな暖炉に火が灯っていて、小屋の中が温かくなっていたのだ。

いつの間に?私意識飛ばしちゃってたかな?と思っていたら、「さっき点けておいた」とこめかみにちゅっとかされて抱き寄せられる。
やーん!何か今のすっごいラブラブな恋人っぽーい!なんて思いながら、ジスランの胸に頬を摺り寄せてみる。
そうするとジスランの私を抱く腕にぐっと力が籠った。
えへへ、何かキュンキュンしてくすぐったいな、何かしらコレ。

「ジスラン……ありがとう」

何だか妙に照れくさくて、ジスランの胸毛をいじいじしながらお礼を言うと、ジスランがまたぎゅっと抱き締めてくれる。

「礼を言うのは俺だ──助かった。そして、すまなかった……その、随分と無理をさせた……」

折角の良いお声がしゅーんとしたように曇ってしまったから、私はアハハと明るく笑う。

「なんかすっごい世界見ちゃった気がするけど、気持ち良かったしたくさん声出したせいか何か気分すっきりしてるし、ジスランは謝らないで。私こそ、利用しちゃってごめんなさい」
「謝るな、ノエルは何も悪くない」

その後も暫くすまないごめんなさいありがとうを言い合って、そして終わりがないねとクスクスと笑い合う。
何だかすごく幸せな気分だし身体も疲れ切っているからもうこのまま眠ってしまいたいところだけど、でもやっぱり肌にべっとりと付着しているあれやこれやを軽くでも良いから拭き取りたい……
まさか家以外で夜を過ごす事になるなんて想定しているはずもなかったから、持っているのはハンカチ一枚だけれど、それで何とかするしかない。
よし、と気合いを入れて起き上がろうとした私は、だけどすぐにジスランに抱き込まれてしまった。

「どこへ行く?」
「いえ、あの……身体、拭きたいなぁって……」
「あぁ」

納得したように頷いたジスランが、小さく何かを唱えた。
途端にドロドロだった身体がすっきりサッパリとする。

「え……えぇ!?」
「そんなに驚く事でもないだろう。ただの洗浄魔法だ」
「ただのって……!魔法まで使えるなんてやっぱり騎士様ってすごいのね!……あ、じゃあもしかして暖炉の火も?」
「あぁ。だが俺の使える魔法なんてそう大したものでは……」
「大したものだよ!こんな田舎だと魔法なんてあんまりお目にかかれないの。すごいなぁ、カッコイイなぁ」

他にはどんな魔法が……と言おうとしたら、何故だかむぎゅっと抱き締められてまた押し倒された。

「え?あの、ちょっと、ジスランさん……?」
「ジスランだ」
「いや、そうじゃなくて……」
「そんな目で見られて、耐えられる男などいない」
「そ、そんな目……?あ、あんっ!」

折角綺麗にしてくれたのに何やってるの? なんて思ってる間にずっぷんと入って来てナニされて、よく分からないままもう一発濃ゆ~いのを頂いてしまった……。
えぇっと、ご馳走様です?



翌朝目が覚めるとまだジスランの腕の中だった。
目が覚めたら一人かもなぁなんて思ってたからビックリしてたら、顔に出てたのかジスランの眉間に皺が寄る。

「町まで送って行くくらいはする」
「え?いや、それはちょっと……目立ちそうだし大丈夫デス」
「しかし……」
「それよりも、ジスランはアルイクスを探しに来たの?それなら探すの手伝うよ」
「──すまないが、頼む」

眉間の皺は取れなかったけど、本来の目的を思い出したらしいジスランはそれ以上食い下がっては来なかった。
希少種であるアルイクスはそう簡単には見つからないだろうから早めに出て探そうと提案したものの、昨日いたされ過ぎた私の足腰は生まれたての小鹿みたいに頼りなくなってしまっていた。
折角解れかけていたジスランの眉間の皺がまた戻ってきたと思ったら「俺は回復魔法はダメなんだ、すまない」と抱き上げられてしまった。
わーぉ!お姫様抱っこ!!いやいや、おんぶで良いんですけど!? なんて抵抗虚しくそのままお姫様抱っこで小屋を出る。

そして来た道を戻ってジスランを見つけた辺りまで来ると、どこからともなくブルルンっと鳴き声が聞こえてきた。
ジスランは迷うことなくその声の方に足を向ける。と木立の中に一頭の白馬がいた。

「ネージュ、一人で待たせてすまなかった」

ジスランが白馬の鼻頭を撫でると、白馬は甘えるようにジスランに鼻を擦りつけている。

「え!?ご、ごめんなさい、ずっとここにいたの?寂しくなかったかしら」

この辺りは危険な生物なんかはほとんどいないけど、一晩中ここにいたのではさぞかし寒くて寂しかっただろう。
昨日気付いていたら小屋まで一緒に連れて行ったのに、とその身体に触れてみると、白馬はぶふんっと鼻を鳴らした。

「気にするな、と言っているようだ」

何故か嬉しそうに目を細めているジスランにそう?と返して、もう一度ごめんねと白馬の身体を撫でると白馬はまたぶふんっと鳴いた。


その後やっぱり少し時間はかかってしまったけれど、無事に森の奥で本物のアルイクスを見つけた。
丁寧に摘んで、持っていたハンカチに包んでジスランに渡す。

「本当に助かった。大切な方の為に、どうしても必要だったんだ」

目を細めてハンカチの中のアルイクスを見つめるジスランはほっとしたような嬉しそうな顔でふんわりと微笑んだ。
何でだかちくんと胸の奥が痛んだ気がしたけれど、それには気付かないフリをしてジスランを見上げる。

「だったら早く帰らないとダメじゃない。王都までって何日もかかるんでしょう?」

騎士様が大切と言うからにはエラい人なのだろうか。
それとも、ジスラン本人にとっての大切な人か──

どっちにしろこんなとこでいつまでも私なんかの相手をしている必要はない。
寂しさを振り切るようにほらほらとジスランの背中を押しながら、そうだ、と付け加える。

「アルイクスの花弁は女の人にあげると良いわ。肌がもちもちのツヤツヤになるから、お茶に浮かべて飲むのがオススメ」
「そうなのか。ならば、これはノエルに」

え?と思ったのと同時にジスランは躊躇いもなくぷちんぷちんと花弁をちぎって、自分のハンカチを取り出すとそこに花弁を乗せて私に渡してくる。
持ってたならアルイクスをそっちに包んであげれば良かったなぁと思いながらも、思い出にハンカチ一枚くらい貰ってもバチは当たらないかなって、ハンカチごと花弁を受け取る。

「……どうせガサガサよ」
「いや、そういうわけでは……」

頬を抑えて拗ねたようにしてみせると、ジスランは慌てたようにちっともガサガサなんかじゃないとか、ノエルは可愛いぞとか、もう用はないはずの私をよいしょしてくれる。
騎士様は人間も出来ているらしい。

「うそよ、大切にいただくわ」

ありがとうって、多分上手に笑えたと思う。


ネージュに二人乗りさせて貰って森の入口まで戻って来たら「やっぱり家まで送る」なんて言い出したものだから、私はネージュの背からえいやっと下りると、ジスランを乗せたままのネージュによろしくねと声を掛けて鼻を撫でる。
するとネージュは任せろとばかりに鳴いてさっさか歩き始めた。
おい待て!と慌てて手綱を引いているジスランに構わずパカポコと遠ざかっていくネージュに賢い子だわなんて感心しながらブンブンと手を振りながらまたねって言おうとして──またなんてないか、と思い直してただ手を振って見送った。

なぜだか何度も振り返りながら帰って行くジスランの姿が見えなくなるまで、私はそこから動けずにいた。



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魔法って、いいですよね……とっても便利で…… (そっと視線を逸らしながら)
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