子供の頃結婚の約束をした男の子は魔王でした。

01 甘い記憶

「わたし、ヴィーのお嫁さんになるわ」

決めたわ、とまだ幼い少女はその小さな拳を握る。
その宣言に、隣でせっせと花冠を編んでいた、少女よりもいくらか大きい少年が驚いたように顔を上げる。

「ぼくの…？」
「うん、ヴィーの」
「本当に…？ティーアは、ぼくのお嫁さんになってくれるの…？」
「本当よ！　…それとも、ヴィーはわたしじゃ、いや…？」
「まさか！」

悲しそうに眉を下げた少女に、少年が慌てたように首を振ると、
少女はほっとしたように微笑んだ。

「じゃあ、約束。大きくなったら、私をヴィーのお嫁さんにしてね」

「…うん、絶対、ティーアをお嫁さんにする」

そう言って、編み上がった花冠を少女の頭にのせて、
少年はその柔らかな頬に唇を寄せた。

少女はぱちりと瞬いて、そして嬉しそうに少年に抱きつく。

その勢いを受け止めきれずに、少年は胸に飛び込んできた少女を抱きしめたまま草の中に倒れ込む。

そのまま2人でクスクスと笑って、今度は少女が少年の頬にちょんっとキスを返した―



それは子供の頃の、甘くて優しい、記憶