60 / 81
第二部
10. パーティー?
しおりを挟む
「まぁまぁ!お戻りが遅いと思ったらお買い物なさっていたんですね」
夕焼けの綺麗な時間も過ぎて日が落ちる頃になってようやく帰ってきたクードとセヴィを、ニコニコと嬉しそうに微笑みながら出迎えてくれたカーサにクードは手にしていた荷物のうち甘い香りのしている箱を渡す。
「セヴィが皆で食べて欲しいと」
「まぁまぁまぁ!ありがとうございます、セヴィ様」
ニコニコ度がぐっと上がったカーサに、セヴィは複雑そうに笑う。
「私は選んだだけで、買ったのはクードさまよ」
手芸店を出たあの後、今日はここまでかと屋敷の方へ向かって大通りを歩いていたところで何やら列の出来ている店を見つけた。
店構えと漂ってくる香りから菓子店である事は間違いなかったし、夕方の忙しい時間帯にも関わらず並んでいるという事はそれだけ美味しいに違いない!と並んでみたのだ。
その時前に並んでいた人の良さそうな栗鼠の女の子がここは最近出来たお店で、何でも美味しいのだけれど薔薇を模したマドレーヌが一番人気なんだと教えてくれた。
店内でもあれやこれやと、実はお店の人なのでは?というくらい細かく教えてくれた栗鼠の女の子──名前はイオラだと別れ際に教えて貰った──のオススメに従って、屋敷の皆へと、自分用にも少しだけ、お土産を買ったのだ。
別れ際、本当にありがとうとお礼を言ったセヴィに、イオラが「じゃあ隊長さん、握手してください!」と臆しもせずに笑顔でクードに手を差し出した時にはセヴィもクードも驚いたものだけれど、「だっていきなり言っても断られるでしょう?隊長さんの番さんをろーらく?すれば握手くらいして貰えるかと思って!」とからりと笑ったイオラに、クードも仕方ないなと苦笑を零して握手に応じた。
またね!と自分の分のマドレーヌと胡桃入りのクッキーを抱えて走って行ってしまったイオラに手を振り返しながら、セヴィは何だか年の近い女の子同士のきゃわきゃわとした雰囲気は久しぶりだと頬を緩めたのだった。
「また会えるでしょうか」
イオラの事を思い出して楽しそうに笑っているセヴィに、クードはそうだなとセヴィの髪をくしゃりと撫でる。
「あれだけあの店に詳しかったという事は近くに住んでいるんだろう。きっとまた会える」
くしゃくしゃと優しく撫でてくれているクードに、セヴィははい、と笑顔を見せた。
間もなくお夕食ですよとカーサに言われて、二人は一旦セヴィの部屋へ向かうとテーブルの上に裁縫箱を置いてすぐに食堂へと向かった。
「………あら?」
食堂に入ったセヴィはぱちりと瞬いて、隣のクードを見上げる。
クードも驚いたような顔をしているから、きっとこれは使用人の皆さんの仕業ねと、セヴィは後ろに控えてくれているシェーラとメディを振り返る。
「今日はパーティーでもやるの?」
クードとセヴィが驚いてしまったのも仕方がない事だった。
食堂全体が華やかに飾り付けられていたのだ。
壁にはレースガーランドや花が飾られて、テーブルには普段よりも豪華なテーブルクロスが掛けられた上にキャンドルが置かれ、椅子までレースサッシで飾られている。
首を傾げていたクードとセヴィはさぁさぁ座って下さいとシェーラとメディに席へ着かされてしまう。
「勝手ながら、本日はクード様とセヴィ様のお祝いをと思いまして」
いつの間にか控えていたレナードがそんな事を言ったものだから、二人はお祝い?とまた首を傾げる。
「はい。蜜月期間を終えてこうしてセヴィ様が外出出来るようにまでなった──真にクード様の番となられた、と我々一同嬉しく思っております。そして本日は、セヴィ様がお姉様とお会いする事が出来た日でもございますね」
沢山お話出来ましたか?と柔らかく問われて、セヴィはこくこくと頷く。
「はい、たくさん……姉さんが居なくなってしまってからの事、全部ってわけではないけど、たくさんたくさん、話せました」
姉との時間を思い出したのかほわりと微笑んだセヴィに、レナードもようございましたと頬を緩める。
けれどすぐにセヴィがぷくりと頬を膨らませたものだから、レナードは首を傾げた。
「皆さんは、今日私と姉さんが会うって知っていたのね……」
「それは……申し訳ございません。クード様がセヴィ様を驚かせたい、と言うものですから」
「大丈夫です、セヴィ様!私も知りませんでしたから!」
はいはい!と手を上げたシェーラに、セヴィはあら?と首を傾げる。
「そうなの?じゃあレナードさんだけが知っていたの?」
「いいえ。シェーラは口を滑らせそうだからと、カーサがシェーラにも内緒にしていたようですよ」
「あぁ……」
「え、セヴィ様!?何でそこで”すごい納得”みたいな顔なさるんですか!?」
「だって、納得しちゃったから……」
ひどいですーーっと叫んでいるシェーラが静かになさいとレナードに叱られて、だってぇ!と食い付いている様にセヴィはくすくすと笑い声をあげた。
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
セヴィに町でのお友達を作ってあげたくて、名前まで付けて登場してもらった栗鼠のイオラちゃんですが、
意気込み虚しくなる予感………_| ̄|○
夕焼けの綺麗な時間も過ぎて日が落ちる頃になってようやく帰ってきたクードとセヴィを、ニコニコと嬉しそうに微笑みながら出迎えてくれたカーサにクードは手にしていた荷物のうち甘い香りのしている箱を渡す。
「セヴィが皆で食べて欲しいと」
「まぁまぁまぁ!ありがとうございます、セヴィ様」
ニコニコ度がぐっと上がったカーサに、セヴィは複雑そうに笑う。
「私は選んだだけで、買ったのはクードさまよ」
手芸店を出たあの後、今日はここまでかと屋敷の方へ向かって大通りを歩いていたところで何やら列の出来ている店を見つけた。
店構えと漂ってくる香りから菓子店である事は間違いなかったし、夕方の忙しい時間帯にも関わらず並んでいるという事はそれだけ美味しいに違いない!と並んでみたのだ。
その時前に並んでいた人の良さそうな栗鼠の女の子がここは最近出来たお店で、何でも美味しいのだけれど薔薇を模したマドレーヌが一番人気なんだと教えてくれた。
店内でもあれやこれやと、実はお店の人なのでは?というくらい細かく教えてくれた栗鼠の女の子──名前はイオラだと別れ際に教えて貰った──のオススメに従って、屋敷の皆へと、自分用にも少しだけ、お土産を買ったのだ。
別れ際、本当にありがとうとお礼を言ったセヴィに、イオラが「じゃあ隊長さん、握手してください!」と臆しもせずに笑顔でクードに手を差し出した時にはセヴィもクードも驚いたものだけれど、「だっていきなり言っても断られるでしょう?隊長さんの番さんをろーらく?すれば握手くらいして貰えるかと思って!」とからりと笑ったイオラに、クードも仕方ないなと苦笑を零して握手に応じた。
またね!と自分の分のマドレーヌと胡桃入りのクッキーを抱えて走って行ってしまったイオラに手を振り返しながら、セヴィは何だか年の近い女の子同士のきゃわきゃわとした雰囲気は久しぶりだと頬を緩めたのだった。
「また会えるでしょうか」
イオラの事を思い出して楽しそうに笑っているセヴィに、クードはそうだなとセヴィの髪をくしゃりと撫でる。
「あれだけあの店に詳しかったという事は近くに住んでいるんだろう。きっとまた会える」
くしゃくしゃと優しく撫でてくれているクードに、セヴィははい、と笑顔を見せた。
間もなくお夕食ですよとカーサに言われて、二人は一旦セヴィの部屋へ向かうとテーブルの上に裁縫箱を置いてすぐに食堂へと向かった。
「………あら?」
食堂に入ったセヴィはぱちりと瞬いて、隣のクードを見上げる。
クードも驚いたような顔をしているから、きっとこれは使用人の皆さんの仕業ねと、セヴィは後ろに控えてくれているシェーラとメディを振り返る。
「今日はパーティーでもやるの?」
クードとセヴィが驚いてしまったのも仕方がない事だった。
食堂全体が華やかに飾り付けられていたのだ。
壁にはレースガーランドや花が飾られて、テーブルには普段よりも豪華なテーブルクロスが掛けられた上にキャンドルが置かれ、椅子までレースサッシで飾られている。
首を傾げていたクードとセヴィはさぁさぁ座って下さいとシェーラとメディに席へ着かされてしまう。
「勝手ながら、本日はクード様とセヴィ様のお祝いをと思いまして」
いつの間にか控えていたレナードがそんな事を言ったものだから、二人はお祝い?とまた首を傾げる。
「はい。蜜月期間を終えてこうしてセヴィ様が外出出来るようにまでなった──真にクード様の番となられた、と我々一同嬉しく思っております。そして本日は、セヴィ様がお姉様とお会いする事が出来た日でもございますね」
沢山お話出来ましたか?と柔らかく問われて、セヴィはこくこくと頷く。
「はい、たくさん……姉さんが居なくなってしまってからの事、全部ってわけではないけど、たくさんたくさん、話せました」
姉との時間を思い出したのかほわりと微笑んだセヴィに、レナードもようございましたと頬を緩める。
けれどすぐにセヴィがぷくりと頬を膨らませたものだから、レナードは首を傾げた。
「皆さんは、今日私と姉さんが会うって知っていたのね……」
「それは……申し訳ございません。クード様がセヴィ様を驚かせたい、と言うものですから」
「大丈夫です、セヴィ様!私も知りませんでしたから!」
はいはい!と手を上げたシェーラに、セヴィはあら?と首を傾げる。
「そうなの?じゃあレナードさんだけが知っていたの?」
「いいえ。シェーラは口を滑らせそうだからと、カーサがシェーラにも内緒にしていたようですよ」
「あぁ……」
「え、セヴィ様!?何でそこで”すごい納得”みたいな顔なさるんですか!?」
「だって、納得しちゃったから……」
ひどいですーーっと叫んでいるシェーラが静かになさいとレナードに叱られて、だってぇ!と食い付いている様にセヴィはくすくすと笑い声をあげた。
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
セヴィに町でのお友達を作ってあげたくて、名前まで付けて登場してもらった栗鼠のイオラちゃんですが、
意気込み虚しくなる予感………_| ̄|○
0
お気に入りに追加
1,012
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
【R18】助けてもらった虎獣人にマーキングされちゃう話
象の居る
恋愛
異世界転移したとたん、魔獣に狙われたユキを助けてくれたムキムキ虎獣人のアラン。襲われた恐怖でアランに縋り、家においてもらったあともズルズル関係している。このまま一緒にいたいけどアランはどう思ってる? セフレなのか悩みつつも関係が壊れるのが怖くて聞けない。飽きられたときのために一人暮らしの住宅事情を調べてたらアランの様子がおかしくなって……。
ベッドの上ではちょっと意地悪なのに肝心なとこはヘタレな虎獣人と、普段はハッキリ言うのに怖がりな人間がお互いの気持ちを確かめ合って結ばれる話です。
ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、
快楽漬けの日々を過ごすことになる!
そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる