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第二部
07. 夢みたい
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でもやっぱりこんな年で恥ずかしいと渋るカーニナに対して、カーニナがドレスを着られなかった事をそこまで未練に思っているなら是非とも一緒にやらせて頂きたいと、ブライドがやる気を見せた。
まだもごもごと否を唱えようとしているカーニナを他所に三人がじゃあその方向で、などと話をまとめたところで、店の奥から何やら賑かな声が響いてきた。
「あら、時間切れかしら」
カーニナが顔を上げて苦笑を零したところで店のバックヤードに繋がるのであろう扉が開いた。
何かしらと視線を向けたセヴィはすぐにわぁっと声を上げる。
まだ覚束無い足取りの小さな子供が、ヨチヨチと歩いて来たのだ。
「母様のところに行くってきかなくて……ごめんなさい」
そう言いながら、ヨチヨチ歩きの子と同じくらいの小さな子を抱いた男の子を先頭に子供たちがやって来る。
異種族同士の婚姻の場合、子供は全て父親と同じ種で産まれてくる。
ブライドとカーニナの子供たちも、多少の濃淡はあるものの、七人全員がブライドと同じ銀灰色の髪色で、そうして狼の耳と尻尾をもっている。
よくよく見れば顔立ちはカーニナに似ている子も居て、セヴィはまたわぁと声を上げた。
ブライドとカーニナの子供たちを紹介して貰ったものの、まだまだやんちゃな子供たちが隊長に剣技みせて!と強請り始めたり、さっきヨチヨチと歩いてきた一番下の双子の兄妹が泣き始めてしまったりで、御披露目を行う日やらドレスのデザインやら、細かい事はまた日を改めて、という事になった。
「慌ただしくなってしまってごめんなさい」
「ううん、こうして会えただけでも嬉しいのに、姉さんと一緒に御披露目まで出来るなんて夢みたい。それに姉さんの子供たちもとっても可愛いし」
カーニナの腕の中で泣き疲れてうとうとしている子供の姿に目を細めているセヴィに、カーニナが微笑む。
「今度は家の方にも来て頂戴──もちろん、クード様がお許し下さるなら、だけどね」
「うん、行きたい!」
きゃっきゃとはしゃぐ、屋敷では見ることの出来なかったセヴィの様子に目元を緩ませていたクードは、ふと気付いたようにブライドに顔を向ける。
「ドレスは早めに決めた方が良いのだろう?」
「そうですね。既製品にしても直しが必要になるでしょうし、フルオーダーとなりますと更に時間もかかりますので……」
「ならばまずはそちらを決めないことには、だな。すまないが──」
「えぇ。きっと妻が張り切って見立てますので、お任せ下さい」
「いくらかかっても構わない。セヴィの望むようにしてやってくれ」
「畏まりました」
控えめに頭を下げたブライドに頼むと伝えると、クードはセヴィの方へ足を向ける。
「セヴィ、そろそろ」
「ん、はい……」
「またすぐに会える。ドレスを決めなければならないだろう?」
名残惜しそうにしているセヴィの頭を撫でてそう言ったクードに、セヴィはそうですねと微笑んで、カーニナと子供たち、そして最後にブライドに礼を言うと、店を後にした。
「少し買い物でもするか?」
店を出て、来た時と同じように抱き上げられながらのクードのその言葉に、セヴィはうーんと少し難しい顔をしてみせる。
「……下ろして貰えるなら」
このままでは恥ずかしいから嫌ですと訴えたセヴィに、クードは暫く考えると一つ息を落としてセヴィを下ろした。
「その代わり、絶対に手を離すなよ」
手を差し出してきたクードに、セヴィははい!と微笑むと、クードの手を取らずにその腕に抱きつく。
しっかりと腕を絡めてクードにピッタリと寄り添うと、セヴィは嬉しそうにクードを見上げた。
「クードさまとこんな風に町を歩けるなんて嬉しいです。私今までデートってした事がなくて……だから、今日をすごくすごく楽しみにしてたんです」
頬を染めて本当に嬉しそうに笑うセヴィに、クードはぐぅと呻くと顔を覆って天を見上げた。
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
ブライドさんの言い訳タイム
「私はこんな仕事ですから披露目の事を完全に忘れていたわけではないんですよ。子供の事もありましたし、それでタイミングを逸したと言いますか……」
ちなみに以前別のお話でえらい目にあったので、このお話では名付けを省きまくっているため、子供たちの名前は誰一人決めてません(ˊᵕˋ;)
何せクードさんの家名すら考えていないので……(;´-∀-`)ゞ
(さすがに端折りすぎたなと反省している今日この頃……)
最初は使用人sの名前も出さないつもりだったんです
さすがに「クードの秘書」「年嵩のメイド」「メイド」では厳しすぎたし思いのほか出番が多かったので付けましたが……w
まだもごもごと否を唱えようとしているカーニナを他所に三人がじゃあその方向で、などと話をまとめたところで、店の奥から何やら賑かな声が響いてきた。
「あら、時間切れかしら」
カーニナが顔を上げて苦笑を零したところで店のバックヤードに繋がるのであろう扉が開いた。
何かしらと視線を向けたセヴィはすぐにわぁっと声を上げる。
まだ覚束無い足取りの小さな子供が、ヨチヨチと歩いて来たのだ。
「母様のところに行くってきかなくて……ごめんなさい」
そう言いながら、ヨチヨチ歩きの子と同じくらいの小さな子を抱いた男の子を先頭に子供たちがやって来る。
異種族同士の婚姻の場合、子供は全て父親と同じ種で産まれてくる。
ブライドとカーニナの子供たちも、多少の濃淡はあるものの、七人全員がブライドと同じ銀灰色の髪色で、そうして狼の耳と尻尾をもっている。
よくよく見れば顔立ちはカーニナに似ている子も居て、セヴィはまたわぁと声を上げた。
ブライドとカーニナの子供たちを紹介して貰ったものの、まだまだやんちゃな子供たちが隊長に剣技みせて!と強請り始めたり、さっきヨチヨチと歩いてきた一番下の双子の兄妹が泣き始めてしまったりで、御披露目を行う日やらドレスのデザインやら、細かい事はまた日を改めて、という事になった。
「慌ただしくなってしまってごめんなさい」
「ううん、こうして会えただけでも嬉しいのに、姉さんと一緒に御披露目まで出来るなんて夢みたい。それに姉さんの子供たちもとっても可愛いし」
カーニナの腕の中で泣き疲れてうとうとしている子供の姿に目を細めているセヴィに、カーニナが微笑む。
「今度は家の方にも来て頂戴──もちろん、クード様がお許し下さるなら、だけどね」
「うん、行きたい!」
きゃっきゃとはしゃぐ、屋敷では見ることの出来なかったセヴィの様子に目元を緩ませていたクードは、ふと気付いたようにブライドに顔を向ける。
「ドレスは早めに決めた方が良いのだろう?」
「そうですね。既製品にしても直しが必要になるでしょうし、フルオーダーとなりますと更に時間もかかりますので……」
「ならばまずはそちらを決めないことには、だな。すまないが──」
「えぇ。きっと妻が張り切って見立てますので、お任せ下さい」
「いくらかかっても構わない。セヴィの望むようにしてやってくれ」
「畏まりました」
控えめに頭を下げたブライドに頼むと伝えると、クードはセヴィの方へ足を向ける。
「セヴィ、そろそろ」
「ん、はい……」
「またすぐに会える。ドレスを決めなければならないだろう?」
名残惜しそうにしているセヴィの頭を撫でてそう言ったクードに、セヴィはそうですねと微笑んで、カーニナと子供たち、そして最後にブライドに礼を言うと、店を後にした。
「少し買い物でもするか?」
店を出て、来た時と同じように抱き上げられながらのクードのその言葉に、セヴィはうーんと少し難しい顔をしてみせる。
「……下ろして貰えるなら」
このままでは恥ずかしいから嫌ですと訴えたセヴィに、クードは暫く考えると一つ息を落としてセヴィを下ろした。
「その代わり、絶対に手を離すなよ」
手を差し出してきたクードに、セヴィははい!と微笑むと、クードの手を取らずにその腕に抱きつく。
しっかりと腕を絡めてクードにピッタリと寄り添うと、セヴィは嬉しそうにクードを見上げた。
「クードさまとこんな風に町を歩けるなんて嬉しいです。私今までデートってした事がなくて……だから、今日をすごくすごく楽しみにしてたんです」
頬を染めて本当に嬉しそうに笑うセヴィに、クードはぐぅと呻くと顔を覆って天を見上げた。
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
ブライドさんの言い訳タイム
「私はこんな仕事ですから披露目の事を完全に忘れていたわけではないんですよ。子供の事もありましたし、それでタイミングを逸したと言いますか……」
ちなみに以前別のお話でえらい目にあったので、このお話では名付けを省きまくっているため、子供たちの名前は誰一人決めてません(ˊᵕˋ;)
何せクードさんの家名すら考えていないので……(;´-∀-`)ゞ
(さすがに端折りすぎたなと反省している今日この頃……)
最初は使用人sの名前も出さないつもりだったんです
さすがに「クードの秘書」「年嵩のメイド」「メイド」では厳しすぎたし思いのほか出番が多かったので付けましたが……w
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