王命で冷徹非情と言われる英雄に嫁いだけれど、何だか違うようです

桜月みやこ

文字の大きさ
上 下
7 / 7

07.

しおりを挟む
 ひどく真剣な表情で見つめられて、私の身体が小さく震えた。
 順番がおかしいですね、と言ったら、また眉間に皺が出来てしまうかしら。それとも困ったお顔をなさるかしら――
 そんな事を思いながら、私は痛む下半身を無視してエーヴァウト様に抱き着く。

「はい、エーヴァウト様。旦那様。どうか、末永くよろしくお願いいたします」

 すり、とガウンの合わせ目――エーヴァウト様の肌に頬を擦り付けると、エーヴァウト様がぐぅっと呻いて、そうしてくるりと視界が回った。

「すまない。もう一度、良いか?」

 ぐっとお腹に熱くて硬いものが押し付けられる。
 さっきの痛みを思い出すと少し怖かったけれど、エーヴァウト様の眉間の皺に手を伸ばして微笑む。

「はい、旦那様……でも出来れば、優しくでお願いします」
「っ……努力、しよう」

 羽織っていたガウンを再び脱ぎ捨てたエーヴァウト様がゆっくりと挿って来て、先ほど放たれた精液がぬちゅりと音を立てて押し出されていく。

「ぁ……出て……っ」
「また、注ぐ」

 ぐちゅんと音を立ててエーヴァウト様が全て私の中に収まると、エーヴァウト様ははっと苦しそうに息を落とした。
 そうしてゆっくりと動き始める。
 エーヴァウト様が動く度、精液のせいかぐちゅぐちゅと水音が立つ。
 それが何だかとても恥ずかしくて小さく首を振ると、エーヴァウト様が動きを止めた。

「痛むか?」
「ん……ちが……音、が……」

 恥ずかしい、と訴えると、エーヴァウト様は小さく笑った。
 やっぱり少し口角が上がって、少し目を細めただけどったけれど。

「すぐに慣れる」
「……キスみたいに?」
「もう慣れたのか?」
「いいえ、まだ……」

 全部ゆっくりでお願いします、と顎を持ち上げると、エーヴァウト様は触れるだけのキスで応えてくれて、そうしてまた、ゆっくりと動き始めた。

「っん……っ」

 漏れそうになった声を必死で飲み込んでいると、エーヴァウト様がちょんとキスを落とす。

「声は、我慢するな」
「で、も……あっ、あっ」

 恥ずかしい、と言わせて貰えずに揺さぶられて、飲み込めなかった声が溢れ出して、エーヴァウト様の動きに合わせてぐちゅ、ぐちゅ、と水音も響く。
 少しずつ早くなる動きに水音だけでなく声も大きくなってしまって、やっぱり恥ずかしかったけれど、エーヴァウト様が意地悪く動きを早めてしまうからすぐに恥ずかしいなんて気持ちはどこかに飛ばされてしまった。

「だんな、さま……あ、あぁっ」
「ユリアナ……ユリアナ」

 エーヴァウト様の動きが早くなると、二人の身体がぶつかる音も加わった。
 水音と、私の声と、エーヴァウト様の息遣いと、たまに漏れるお声と、ベッドの軋む音――色んな音が混ざりあって、溶け合って。

「あっ、い……きもち、い……の……っだんなさま……だんなさ……あぁっ」

 痛みなんてもうちっともなくなって、エーヴァウト様が動く度にぐずぐずに蕩けそうになる。

「すまない、ユリアナ……少し、無理をさせるっ」

 ぐっと腰が浮くほどに足を持ち上げられて、そうしてエーヴァウト様の腰が激しく打ち付けられる。

「あぁっ! あっ、あんっ、だんな、さまぁ……っ」

 苦しい、と思った気もする。
 気持ちいい、と思った気もする。
 ゆっくり、優しくとお願いしたはずだけれど、そんな事はすっかりどこかへ行ってしまったらしいエーヴァウト様との激しい交わりに、私は溢れる声をそのままに、ただただ翻弄され続けた。


 もう一度、は一度では済まなかった。
 その晩私は何度も求められて、エーヴァウト様は何度も私の中に精を放った。
 記憶がなくなっているから、多分途中で気を失ってしまったのだろう私が翌朝目を覚ますと、エーヴァウト様からのすまない攻撃が待っていた。
 口にするのはとても恥ずかしかったけれど、気持ち良かったから大丈夫だと伝えると、すまないと言われて何故だかまた抱かれて――
 お昼になってルイサがものすごぉく申し訳なさそうにドアを叩くまで、私は離して貰えなかった。
 その日の午後は部屋でゆっくり――ぐったり過ごして、夜にはまたエーヴァウト様に求められて。

 本当は翌日、つまり婚儀の二日後には王都のタウンハウスを出てエーヴァウト様の居城のあるカイゼル侯爵領へ帰る予定だったそうだけれど、その予定が三日程後ろ倒しになった、と私が知るのは、カイゼル侯爵領に着いてからだった。


 「冷血非情な救国の英雄」は、褒賞として求められた妻との仲睦まじさが噂になって、後に冠が取れてただの「救国の英雄」になるのだけれど、この時の私はまだそんな事はちっとも知らず、年も近くて、お肉ではなく筋肉のついた、髪もふさふさで、溺れそうなくらいの愛情をこれでもかと与えてくれる旦那様と幸せな日々を送るのだった。


~HAPPY END~
しおりを挟む
お読みいただきましてありがとうございます!

** マシュマロを送ってみる**

※こちらはTwitterでの返信となります。 ** 返信一覧はこちら **

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

唯一の味方だった婚約者に裏切られ失意の底で顔も知らぬ相手に身を任せた結果溺愛されました

ララ
恋愛
侯爵家の嫡女として生まれた私は恵まれていた。優しい両親や信頼できる使用人、領民たちに囲まれて。 けれどその幸せは唐突に終わる。 両親が死んでから何もかもが変わってしまった。 叔父を名乗る家族に騙され、奪われた。 今では使用人以下の生活を強いられている。そんな中で唯一の味方だった婚約者にまで裏切られる。 どうして?ーーどうしてこんなことに‥‥?? もう嫌ーー

腹黒宰相との白い結婚

恋愛
大嫌いな腹黒宰相ロイドと結婚する羽目になったランメリアは、条件をつきつけた――これは白い結婚であること。代わりに側妻を娶るも愛人を作るも好きにすればいい。そう決めたはずだったのだが、なぜか、周囲が全力で溝を埋めてくる。

私と彼の恋愛攻防戦

真麻一花
恋愛
大好きな彼に告白し続けて一ヶ月。 「好きです」「だが断る」相変わらず彼は素っ気ない。 でもめげない。嫌われてはいないと思っていたから。 だから鬱陶しいと邪険にされても気にせずアタックし続けた。 彼がほんとに私の事が嫌いだったと知るまでは……。嫌われていないなんて言うのは私の思い込みでしかなかった。

何もできない妻が愛する隻眼騎士のためにできること

大森 樹
恋愛
辺境伯の娘であるナディアは、幼い頃ドラゴンに襲われているところを騎士エドムンドに助けられた。 それから十年が経過し、成長したナディアは国王陛下からあるお願いをされる。その願いとは『エドムンドとの結婚』だった。 幼い頃から憧れていたエドムンドとの結婚は、ナディアにとって願ってもいないことだったが、その結婚は妻というよりは『世話係』のようなものだった。 誰よりも強い騎士団長だったエドムンドは、ある事件で左目を失ってから騎士をやめ、酒を浴びるほど飲み、自堕落な生活を送っているため今はもう英雄とは思えない姿になっていた。 貴族令嬢らしいことは何もできない仮の妻が、愛する隻眼騎士のためにできることはあるのか? 前向き一途な辺境伯令嬢×俺様で不器用な最強騎士の物語です。

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

白い結婚が貴女のためだと言う旦那様にそれは嫌だとお伝えしたところ

かほなみり
恋愛
年下の妻に遠慮する夫に、長年の思いを伝える妻。思いを伝えて会話を交わし、夫婦になっていく二人の、ある一夜のお話です。

コワモテ軍人な旦那様は彼女にゾッコンなのです~新婚若奥様はいきなり大ピンチ~

二階堂まや
恋愛
政治家の令嬢イリーナは社交界の《白薔薇》と称される程の美貌を持ち、不自由無く華やかな生活を送っていた。 彼女は王立陸軍大尉ディートハルトに一目惚れするものの、国内で政治家と軍人は長年対立していた。加えて軍人は質実剛健を良しとしており、彼女の趣味嗜好とはまるで正反対であった。 そのためイリーナは華やかな生活を手放すことを決め、ディートハルトと無事に夫婦として結ばれる。 幸せな結婚生活を謳歌していたものの、ある日彼女は兄と弟から夜会に参加して欲しいと頼まれる。 そして夜会終了後、ディートハルトに華美な装いをしているところを見られてしまって……?

【R18】愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる

奏音 美都
恋愛
シャルール公国のプリンセス、アンジェリーナの公務の際に出会い、恋に落ちたソノワール公爵であったルノー。 両親を船の沈没事故で失い、突如女王として戴冠することになった間も、彼女を支え続けた。 それから幾つもの困難を乗り越え、ルノーはアンジェリーナと婚姻を結び、単なる女王の夫、王配ではなく、自らも執政に取り組む国王として戴冠した。 夫婦となって初めて迎えるアンジェリーナの誕生日。ルノーは彼女を喜ばせようと、画策する。

処理中です...