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02.

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「っ!! おい、マーシャ……っ!!」

 待て、と無駄な静止を口にした時には後方の仮眠室の扉がおいでませとばかりに口を開け、
 やめろ! と叫んだ時には仮眠用の簡易ベッドに落とされていた。
 ポケットの中で、今こそ出番であるはずだった借り物が僅かに転がった。

「最初は張り型と感覚共有出来ないかと頑張っていたのですが、どうにも上手く行かなくて」

 はぁ、と悲しそうに溜め息を落としたマーシャの魔法で簡易ベッドに押さえつけられながら、ブラウンは身じろぎ一つ出来ずにマーシャの話を聞かされる。

「でも私気が付いたんです。張り型は無機物だから、共有しにくいのではないかって。そう気付いた私は、森へ向かいました」
「…………おい、マーシャ」

 森と聞いて、ブラウンはざわりと肌が粟立つような嫌な予感に襲われた。
 
 逃げたい。
 騎士たる者、敵に背を向けるのは恥である。
 が、逃げ出したい。今すぐに、この場から、全力で。
 ――いや、だがマーシャに背を……臀を向けるのは、一番やってはいけない事なのでは。

 そんな事を考えて遠い目をしているブラウンに構わず、マーシャは話し続ける。
 
「森を散策していた私は、森の奥深く、沼の近くの少々ジメッとした場所で最高の素材と出会ったんです。……ね、ブラウン様。それが何か知りたくないですか? 知りたいですよね? そしてご自分の身体で試してみたいですよね?」
「全然全く知りたくないし試したくもな――」

 試したくもない。帰れ。とブラウンが言い切る前に、マーシャは手にしていた箱をじゃーん! と自ら効果音を付けて開けてしまった。

「――――っ!!!」

 ブラウンは声にならない悲鳴を上げた。
 普通であれば指一本動かせないであろう魔法で拘束された身体が、しかしブラウンの鍛えに鍛え抜かれた筋肉がとんでもない瞬発力を発揮した事でびくりと跳ねた。

「まぁ、そんなに喜んで下さるなんて」

 うふふ、と嬉しそうに笑ったマーシャは、箱の中からソレを取り出す。
 ぬちゃ、と立った粘着質な水音はそう大きな音ではなかったけれど、ブラウンの耳には殊更大きく聞こえた。

「ま、待て、マーシャ……」

 己の頬が引き攣るのを感じながら、ブラウンは何とかこの場から逃れようと動かない身体に必死で力を込める。

「大丈夫ですよ、ブラウン様。確かにこの子はバルディーアではありますが、まだ幼体ですから」
「やはりバルディーアか……」

 ブラウンの呻くような呟きに、マーシャはもう一度大丈夫ですと繰り返してにっこりと微笑む。

「幼体ですから生殖機能は未発達。既に粘液の形成を行えるようにはなっていますが、効果はなく人体に影響はありません――それに、」

 マーシャは微笑みながらソレを握る手に力を込めて、僅かに親指を上下させた。
 ぬちゅりとまた粘着質な音が立って、そしてそれが合図だったかのようにマーシャに握られているソレがむくりと形を変える。

「知能は低い、との事ですが、試してみたら調教可能だったので大丈夫ですよ。とぉっても良い子です」
「――っっっ! それのどこが、大丈夫だっ!」

 離せっ! と叫んだ時には――いや、マーシャが団長室に足を踏み入れた時からだろう。
 とっくのとうに『時既に遅し』。

「ふふ、ブラウン様。今日もたぁっくさん、啼いて下さいね♡」
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