全年齢ゲームのはずなのに、セッ…しないと出られないって何で!?

桜月みやこ

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02.

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「俺らだけ飛ばされたか……?」

 サーラを守るように腕の中に閉じ込めたままギードも周辺を警戒するが、魔獣や魔物が現われる気配はない。
 と、ピロンっとシステム音が響いた。
 クエストが発生した時の音だ。

 サーラが音のした、空間の上方に目を向けると、そこにはクエスト発生を示すウィンドウが浮かんでいた。
 

  ♥━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━♥
  ┃  ♡クエスト♡  脱出しよう!     ┃
  ┃                     ┃
  ┃  ♡達成条件♡  ラブラブセックス   ┃
  ♥━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━♥


「…………は?」

 サーラはぽかんとウィンドウを見つめる。
 読み間違いかと目を擦ってみても、そこに浮かんでいる文字は変わらない。
 しかもクエスト発生と同時に、空間内に何やらやたらと大きなベッドが出現した。

「……ら……らぶらぶ…………せっ……???」

 なんて? と呟いてみても、やっぱり文字はそのままだ。
 しかも通常はしごくシンプルなウィンドウフレームや指令文部分にハートがくっついている。

「いやいやいや? 何で? このゲーム全年齢だよね?」

 るり本人は成人済みではあるし、一応初体験なるものも済んでいる。
 最近ではそういう目的の成人向けゲームが出ているのも知っている――それが結構人気らしい、という事も。
 けれどるりはゲーム内でそんな事をしたいなんて思った事はない。

「……もしかしてこれは夢? 私ゲームやってる夢見てる??」

 ログインしようとして、そこで寝落ちたとかかしら。最近ちょっと仕事が立て込んでて疲れてたし!
 なんて思って自分サーラの頬をぺちぺちと叩いてみるけれど、目が覚める気配はない。
 
「へーぇ。ラブラブセックス、ねぇ」

 背後からそんな声が聞こえて、サーラはびくりと身体を震わせる。
 ギギギ、と錆び付いたロボットのようにぎこちなく振り返ってみると、サーラのすぐ後ろでギードもまたウィンドウを見つめていた。

「え、と。あの……これ、ちょっとおかしい、から……バグ、とかかも……? 私、一回、緊急ログアウト……」

 してみよっかなぁ、と言おうとしたサーラは、けれど緩んでいたギードの腕に力が籠ったことでひぇっと悲鳴を上げる。

「別にヤれば良いだけだろ? 俺とあるじで、ラブラブセックス」
「なっ!? 何言ってるの!!? そんなの出来るわけ……ひゃあぁっ!?」

 ギードの手で無遠慮にスカートを捲り上げられて、サーラは悲鳴を上げると咄嗟にシールド魔法を放った。
 ばちんっと音がしてギードの手が弾かれた隙に距離を取る。

「何すんのよ!」

 スカートを押さえて真っ赤になっているサーラに、ギードは弾かれた手をぶらぶらと揺らして痛みを飛ばしながら、ちらりとウィンドウに視線を向ける。

「何って、セックスすんだろ?」
「し、しない!!」
「何でだよ。クエストだぞ? やんねーと出られねぇじゃねぇか」
「いや、だからそのクエストがおかしいじゃない! 何でセ……セッ……なんて……!」
「そんなん俺が知るかよ」

 腕を掴もうとしてくるギードから、サーラは慌ててまた距離を取る。
 じりじりと後退りながら何でどうしてと頭の中で繰り返してみるけれど、ウィンドウは一文字も変わる事なく浮かんだままだし、ベッドもどーんと存在しているし、るりの目が覚める事もない。

「おら、さっさとヤんぞ」
「だから待ってってば! こんなの絶対おかしいから!」
「おかしかろうが何だろうが、ヤんなきゃ一生こん中だぞ?」
「いや、でもだから、絶対こんなクエスト変……っ!」

 じりじりと後ずさっていたサーラの背中が壁にぶつかって、そうしてサーラはギードに捕まった。

「んんっ……!」

 ガッツリと唇を塞がれて、抵抗虚しく壁に身体を押さえ付けられてにゅるりとギードの舌が入り込んで来る。
 逃げようとした舌を、人間よりも兎族よりも長いらしい舌で絡め捕られる。
 くちゅ、と音がした途端に、またピロリンっと陽気なシステム音が響いた。

「っん……くる、し……っ」

 空気を求めて喘いだサーラに気付いて、ギードが僅かに顔を離す。
 その時見えたクエストウィンドウに「サブクエスト」の文字と、達成済みサブクエスト欄に「キスをしよう」「ディープキスをしよう」が表示されているのを見つけて、サーラはんぐっと呻いた。

 どうやら完全にこの脱出クエストは始まってしまっていて、だからつまりサーラとギードで「ラブラブセックス」なるものをしないとこのおかしな空間から出られない。らしい。
 やっぱり緊急ログアウト……と自身のコマンドウィンドウを出したいけれど、身体も手首もがっしりと押さえ付けられる。

「ギード、あの……」
「とっととヤっちまおうぜ、主サマ?」

 にやりと笑ってそう言ったギードはサーラを抱き上げると、じたばた暴れるサーラなんて意にも介さずずんずんとベッドまで歩いて行って、そうしてぽんっとベッドに落とした。

「きゃあっ!」

 ギードはサーラが体勢を立て直す前に素早く馬乗りになると、サーラの顔の両脇に手をつく。
 ギードの体重を受けてぐんっと沈んだベッドの上、全身で囲い込まれてしまっているサーラはもう完全にまな板の上の鯉状態だ。兎だけれど。
 ぷるぷると長い耳を震わせて冷や汗を流し始めたサーラに、ギードはくっと喉を鳴らすとぺろりと唇を舐める。

「安心しろよ。取って食うわけじゃねぇ――ちゃあんと、気持ち良くしてやる」
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