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本編

77. 野獣(おとこ)のロマンと乙女のアコガレ。2 **

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「ぁっ……!」

横を向いたまんま揺さぶられて、リィナはきゅうっとシーツを握りしめて顔を伏せた。

「ふぇる、さま……っこれ、だめ……」
「あたるトコが変わるから、イイんだろ?」

ぐりっと抉る様に突き上げられて、リィナの口から高い声が零れる。

「んっ、いっ……だめっ、いっちゃ……!」

やぁっと可愛い声をあげたリィナの中が、きゅうっと締まったかと思った途端に弾ける。

「あ……ふっ……」

ひくん、と痙攣するように震えたリィナの、いつの間にか崩れて落ちてしまっていたサイドの髪を払ってやって、フェリクスはうねっているリィナの膣内で動きを止める。

「そんなに良かったか?」
「……ん」

小さく小さく頷いたリィナのこめかみに唇を落とせば、リィナが頭を上げてキスを強請る。
それに応えてやってから、フェリクスはリィナの腟内から自身を引き抜くと、身体を起こしてリィナの片足を持ち上げた。

「やっ……!」

大きく足を開かされてリィナが慌てたように手をばたつかせたけれど、フェリクスはその手を掴んで指を絡めてベッドに押し付けると、そのままリィナの膣内に自身を埋める。

「あっ、やっ、まだいったばっかり……っ!」

待ってと訴えたリィナに、けれどフェリクスはゆるゆると動き始めてしまう。
ゆっくりではあるものの、ギリギリまで引いてから一番奥まで挿入されるその動きは、フェリクスの形が自分の中に刻み込まれているようで、リィナはきゅっと目を瞑ってフェリクスの動きを、形を、飲み込んだ。


「あぁっあんっ…!いっ………んっ!!」
「──何だ、またイッたのか?」

少しずつ速くなる動きと、時折意地悪くぐるりと腰を回したり突き上げられたりされて、リィナは既に何度目かの絶頂を迎えていた。
今また身体を震わせたリィナの頬を撫でて、フェリクスはリィナの足を抱え上げたまま身体を屈めると、リィナの頬に唇を落とす。
その動きにもひくついたリィナの膣内がきゅうきゅうとフェリクスを締め付けてきて、フェリクスは小さく口端を上げた。

「いきすぎだろ」
「ら、て……きもちい……」

呂律の回らなくなっているリィナが、フェリクスに向かって腕を伸ばす。
フェリクスはそこで漸く「そういえば……」とリィナの腕を取って、もう片方の腕をリィナの背に回すと、ぐっとその身体を抱き起す。
繋がったままだったそこがぐりっと刺激されて、リィナの口から小さな声が零れたものの、もう力の入らない身体は僅かに身じろいだだけで、くたりとフェリクスに全てを預けてその胸に顔を埋める。

「前でぎゅっと、だったか?」

髪を撫でられながらそう言われたリィナがのろのろと顔を上げて、そして小さく首を振る。

「きしさまと、です」
「……そんなに制服これが良いもんか?」
「きしさまなフェルさま……ステキです……いつもステキですけど……もっともっと、ステキ」

ふわふわとした口調でそんな事を言われて、うっとりと見上げられて、フェリクスはやっぱよく分かんねーなと内心で首を傾げながら、リィナの顎を持ち上げる。

「その騎士様は、上にのっかってる花嫁サンを突き上げて啼かせたくて仕方ねーんだが……良いか?」

ちゅっと軽く唇を重ねると、リィナはゆるりと首を傾げて……だめです、とフェリクスの胸に額をくっつける。

「まだぎゅって、していただいていません」

フェリクスの背に腕を回してマントをきゅっと握ったリィナに、フェリクスはどうせすぐに縋り付く事になるくせにと思いながらも、リィナの身体を緩く抱き寄せる。

「もっと……ぎゅって、してください……」

請われて、覚えたばかりの力加減で抱きしめれば、リィナは嬉しそうにフェリクスの胸に頬を擦りつける。

「しあわせ、です」

ふにゃっとした声音に、きっとその表情もふにゃふにゃになっているんだろうなと思いながら、フェリクスは少しだけリィナを抱き締める腕に力を込めて──そしてもう良いだろうとリィナの顎を持ち上げて、口付けた。


「あぁっあっ!あっやんっ、あ……!」

小刻みな動きに合わせて耳元で零れる甘い啼き声と、小さな手が縋り付くように自身の制服を握りしめている感覚を愉しんでいたフェリクスは、またきゅうきゅうと締まり出したリィナの中の動きに、そろそろ限界かとその腰を掴んで大きく突き上げる。
嬌声を上げて跳ねあがった腰を押さえつけて、フェリクスは容赦なくリィナを突き上げた。

「あぁぁぁっ!いっちゃ……や、も、いくのや、で……ふぇるさ、ま……っ!」

もう何度目になるのか分からないくらいに達しているリィナの蕩け切った膣内が、それでもまだきゅうっとフェリクスを締めつけて、弾ける。
フェリクスはその締め付けに小さく呻くと、自身の熱をリィナの最奥に吐き出した──。


ふにゃんと力の抜けたリィナを抱き留めて、フェリクスはリィナの頬が己の左胸に来るように位置を直してから抱き締める。

「……やっぱ何もつけなくて正解だったな」

ぼそりと呟いて、リィナの上気した頬をそっと撫でる。

騎士の制服の左胸には、通常徽章や功績章を付ける。
フェリクスも仮に戦後そのまま騎士になっていたら、今頃その左胸には阿呆みたいに徽章やら功績章やらがくっ付いていただろう。
今回も何だかんだとつけられそうになったのを断固突っぱねて階級章だけに留めたのだが──

まさか制服を着たまま、なんて事はその時は全く考えていなかったが、今の最中に、たった1つの階級章だけでもリィナの頬があたらないか、傷をつけてしまいやしないかとかなり注意をしていたのだ。
あれこれ付けられていては、とてもではないが制服で、なんて無理だったろう。

そんなワケで、正直最後はあまり行為に集中し切れなかったフェリクスは若干欲求不満だが、まぁ夜があるかと、リィナの額に口付けを落として、そっとその身体を横たえた。



「───────……ですよ?」
「だから…………」
「お嬢様は……………嫌がったりは…………………」

ボソボソと抑えられた声量で交わされているらしい会話に、リィナはふと目を開けた。
私?と声のした方に顔を向けると、フェリクスとアンネが話している姿が目に入る。

「フェリクスさま……アンネ?」

思いの外小さな──というより掠れた声しか出なくて、リィナは小さくこほっと咳を落とす。
それに気付いたフェリクスとアンネが同時にリィナを見て、そしてフェリクスがリィナの元にやって来る。

「まだ寝てても良いぞ」

くしゃりと髪を撫でられて、リィナはぼんやりと首を傾げて──あぁ意識を失ってしまったんだわと、思い至る。

「お嬢様、少しお水をお飲み下さい」

フェリクスの横からアンネがコップを差し出して来たので、ありがとうと身体を起こそうとしたリィナの目の前でフェリクスがそのコップを持ち上げて、水を口に含む。
あ、と思った時には覆い被さるように唇が重なって、リィナの喉を水が滑り落ちていった。

こくん、と水を飲み込むと、すぅっと身体の中に染みて行くような感じがしてリィナはほっと息をつく。
口の端から少し零れてしまった水滴をフェリクスの指で拭われて、そのまま唇を撫でられたと思ったらフェリクスがゆっくりとリィナに口付ける。
何だかくすぐったくて、リィナは掛け布を引き上げようとして──はたと手を止めた。

「すみません、私、フェリクス様のベッドで……」

半身を起こして、そこでリィナはあら?と掛け布の中の自分の身体を見下ろす。
着ていたはずの純白のドレスも、コルセットもパニエも全部なくなっていて、柔らかなネグリジェに変わっている。

あらら???と首を傾げているリィナに、アンネが頭を下げる。

「すみません、お嬢様。私、お嬢様がお休みの間にフェリクス様と、初めて……してしまいました……」
「……え?」
「お嬢様がお休みの間に、だなんて、いけない事だとは思いつつも……すみません、お嬢様……」

ふっと視線を逸らしたアンネに、リィナはえ??え???と泣きそうな顔でフェリクスを見る。

「──リィナが寝てる間に、俺とアンネでドレスからネグリジェそれに着替えさせたってだけだぞ」
「で、でも、初めて、とかいけない事、とか……」
「リィナの着替えの時は俺はいつも追い出されてただろ。それにリィナの許可なくあのドレスを脱がせちまって良かったのかって話だ」

お前も変な言い方すんなとアンネの頭を小突いているフェリクスに、リィナはそういう事ですかと頷きつつも、何となく胸の中にもやっとしたものが広がってしまって、そっと俯いた。

「おい、本当にただ着替えさせただけだかんな?」

フェリクスにぐしゃぐしゃと髪を掻き混ぜられて、リィナははい、と小さく微笑む。
フェリクスの事を疑ってはいない。
アンネだってたまに飛び出す本気か冗談か分からない冗談の類だろうと思う。
分かっているのに、何故だかもやもやして……リィナはまたしゅんと肩を落とした。

「……お嬢様、すみません。意地悪がすぎてしまいました」

リィナの様子に、アンネが慌てた様にリィナの横に膝をつく。

「良いのよ、アンネ。私も少し気にしすぎなんだわ」
「いいえ……いいえ、私が悪いんです……」

ぶんぶんと首を振ったアンネが、躊躇うように口を噤んで、そしてリィナの手をきゅっと握ってくる。

「お嬢様がお休みの間に、ベティとクラーラが、これからは『お嬢様』ではなくて『奥様』ってお呼びしないとだめかしらって話していて……そうしたら、今までは『アンネのお嬢様』でしたのに、これからは『フェリクス様のお嬢様』になってしまうのだわって、思ったら……何だか、寂しくて……私はもう要らないのではないかしら、と」
「アンネ?」

驚いたように目を瞬かせているリィナに、アンネが項垂れる。

「すみません、お嬢様──いえ、奥様。寂しいからって意地悪な事……私、やっぱりついてこない方が良かったのかもしれません……早々にお暇を……」

そんな事を言い出したアンネに、リィナは飛び上がった。
がばっと起き上がって──下半身が痛んだ事なんて気にする余裕もなく、掛け布を跳ね除けてアンネの手を取る。

「だめよ!アンネはずっと側にいてくれるのでしょう?約束してくれたじゃない。アンネがいなくなってしまったら私のドレスやアクセサリーは誰が選んでくれるの?私の好きな色やモチーフやデザインや──お花や食べ物だって、全部全部分かってくれているのはアンネなのよ。いなくなったらとっても困るの」

リィナは瞳を潤ませて、ぎゅうっとアンネの手を握る。

「お願い、いとまだなんて、言わないで──これからも側にいて頂戴、アンネ」
「──お嬢様っ!」

がしっと抱き合う2人に、「これは何劇場だ……?」とフェリクスは若干引いたものの、あのなぁとアンネの背中に声をかける。

「俺だってアンネの事は頼りにしてんだ。アンネほど近くでリィナを護れるやつはいねーだろ。勝手にいなくなられちゃ計画が狂って困る──アンネは、リィナと俺から許可を取らないと辞められないと思え」
「フェリクス様………」

アンネがリィナとフェリクスを交互に見て、そして少しだけ泣きそうに顔を歪めてから、すんっと鼻を啜る。

「すみません、少し不安定になってしまいました──マリッジブルーというやつでしょうか」

「……それは花嫁本人がなるものだろ?」




*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
ベティもクラーラもリィナのドレスやアクセサリー選びなんかはしますが、最終決定はアンネがやってます。
リィナの依存度も、やっぱりアンネが一番。

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