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本編
46. 乙女は不安に襲われる。
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「だから、変な意味なんてねーって言ってるだろうが」
「フェリクス様になくても、リディは絶対ぜったい!フェリクス様の事を好きになってしまいましたわっ!リディは美人になりそうですし、フェリクス様の好みに近そうで……っ」
「13歳相手に美人も好みもねーっつってんだよ!いい加減切れるぞ!?」
「────っ!!」
フェリクスに怒鳴られて、リィナはびくんっと肩を跳ねさせると、ぎゅっと口を噤んだ。
そんなリィナにフェリクスはぐしゃりと前髪を掻き上げると、思わず怒鳴ってしまった自分自身に小さく舌打ちをする。
「ったく……」
フェリクスは少し乱暴にリィナの身体を抱き上げると、その頭を自分の肩口に引き寄せる。
「さっきのは、抱き上げただけだろう。俺がこうやって抱き締めんのは、お前だけだ」
「…………はい」
ぐすっと鼻を啜る音が聞こえてきて、フェリクスはぐしゃぐしゃとリィナの髪を掻き混ぜる。
「怒鳴って悪かったよ」
「……いえ」
「俺は今日、お前の実家に何をしに来たんだ?」
「……結婚の、許可、を」
「誰と誰の?」
「フェリクス様と、私、の」
「今俺が抱き締めてるのは?」
「──私、です」
「俺は、お前を──リィナを妻に迎える為にここにいるんだ。何でそんな自信ねーのか知らねーけど、もっと自信を持て」
リィナの頬を包んで顔を上げさせる。
「俺はリィナを愛してる。妻にと望むのはリィナだけだ──こんな事何度も言わせんな、馬鹿」
こつんと額を合わせると、リィナがすみません、と小さく頷く。
「私はまだ全然子供で……離れてしまうって思うと、すごく不安で。可愛い方や美人さんが現れたら、私なんてすぐ忘れられてしまうのではないかしらって。自信なんて、やっぱり全然持てなくて……」
「何だ。俺の言葉、まだ信じられないのか?」
「──信じたい、です」
「ったく。リィナの中で俺はどんだけ人気者設定なんだよ」
またこのやり取りすんのか?と呆れたように苦笑を零して、フェリクスはリィナの頬を摘まむ。
「リィナが思ってる程俺は人気者でもねーし、好かれてもいねーよ。俺が良いなんていう物好きはお前だけだ。さっさと俺の言葉を信用して、とっとと自信持って、そんで胸張って俺の嫁になれ──な?」
「────はい、がんばります」
リィナがぎゅうっとフェリクスに抱き着いて、フェリクスもその身体を抱き締め返す。
「気を付けて、帰って下さいね」
「あぁ、剣もあるし、馬なら3時間もかかんねぇ。心配するな」
「無事に着いたら、連絡下さい」
「ばぁか。夜中に走らされるやつが可哀想だろうがよ。万が一何かあったらリシャールが知らせるだろうし、何の連絡もなければ無事だって事だ」
フェリクスの返事に、リィナはむぅっと唇を尖らせる。
「心配で、きっと朝まで眠れませんわ──明日起きられなかったら、フェリクス様のせいですからね」
「そしたらどうせ昼間寝るんだろ」
おかしそうに笑われて、リィナはもうっとフェリクスの肩を叩く。
「本当に心配してるんですからねっ」
「──分かってるよ、悪かった」
フェリクスは小さく頬を膨らませたリィナの頬を撫でて顔を寄せて──そこではたと我に返る。
見送りは、もう外が暗くなり始めているからと断った。
本来はそれでも見送りに出てくるものだが、一家はリィナの様子に気を利かせたらしい。
今デルフィーヌ侯爵家の門前にいるのはフェリクスとリィナと、フェリクスの愛馬だけだ。
けれど感じる。
複数の視線を、びしばしと。
恐らくは、件の窓から覗かれているのだろう。
違うところからも感じるのは、使用人達かもしれない。
その事に気付いたフェリクスが、くっつきそうになっているリィナの唇に指をあててストップをかけると、リィナからは不満そうな視線が返ってくる。
「すんげー見られてんだけど」
「……気にしません」
「しろっての」
「だって……何日かお会い出来ないのでしょう?それに、婚約者同士が挨拶でキスをするのは、何もおかしい事ではないと思いますわ」
拗ねたように言うリィナに、フェリクスは仕方ねーなと苦笑して、そしてくるりと身体の向きを変えると、完全に窓に背を向ける。
「これなら見えねーよな?」
言われて、リィナは小さく笑う。
「そうですね。フェリクス様の陰になって、あちらから私は見えなくなっていると思います」
何をしているのかはバレバレでしょうけど──とリィナが笑って、フェリクスの首に腕を回す。
「まぁ、見えなきゃセーフだな」
フェリクスはリィナの腕に誘われるように、ゆっくりとリィナの唇を塞いだ──。
「フェリクス様になくても、リディは絶対ぜったい!フェリクス様の事を好きになってしまいましたわっ!リディは美人になりそうですし、フェリクス様の好みに近そうで……っ」
「13歳相手に美人も好みもねーっつってんだよ!いい加減切れるぞ!?」
「────っ!!」
フェリクスに怒鳴られて、リィナはびくんっと肩を跳ねさせると、ぎゅっと口を噤んだ。
そんなリィナにフェリクスはぐしゃりと前髪を掻き上げると、思わず怒鳴ってしまった自分自身に小さく舌打ちをする。
「ったく……」
フェリクスは少し乱暴にリィナの身体を抱き上げると、その頭を自分の肩口に引き寄せる。
「さっきのは、抱き上げただけだろう。俺がこうやって抱き締めんのは、お前だけだ」
「…………はい」
ぐすっと鼻を啜る音が聞こえてきて、フェリクスはぐしゃぐしゃとリィナの髪を掻き混ぜる。
「怒鳴って悪かったよ」
「……いえ」
「俺は今日、お前の実家に何をしに来たんだ?」
「……結婚の、許可、を」
「誰と誰の?」
「フェリクス様と、私、の」
「今俺が抱き締めてるのは?」
「──私、です」
「俺は、お前を──リィナを妻に迎える為にここにいるんだ。何でそんな自信ねーのか知らねーけど、もっと自信を持て」
リィナの頬を包んで顔を上げさせる。
「俺はリィナを愛してる。妻にと望むのはリィナだけだ──こんな事何度も言わせんな、馬鹿」
こつんと額を合わせると、リィナがすみません、と小さく頷く。
「私はまだ全然子供で……離れてしまうって思うと、すごく不安で。可愛い方や美人さんが現れたら、私なんてすぐ忘れられてしまうのではないかしらって。自信なんて、やっぱり全然持てなくて……」
「何だ。俺の言葉、まだ信じられないのか?」
「──信じたい、です」
「ったく。リィナの中で俺はどんだけ人気者設定なんだよ」
またこのやり取りすんのか?と呆れたように苦笑を零して、フェリクスはリィナの頬を摘まむ。
「リィナが思ってる程俺は人気者でもねーし、好かれてもいねーよ。俺が良いなんていう物好きはお前だけだ。さっさと俺の言葉を信用して、とっとと自信持って、そんで胸張って俺の嫁になれ──な?」
「────はい、がんばります」
リィナがぎゅうっとフェリクスに抱き着いて、フェリクスもその身体を抱き締め返す。
「気を付けて、帰って下さいね」
「あぁ、剣もあるし、馬なら3時間もかかんねぇ。心配するな」
「無事に着いたら、連絡下さい」
「ばぁか。夜中に走らされるやつが可哀想だろうがよ。万が一何かあったらリシャールが知らせるだろうし、何の連絡もなければ無事だって事だ」
フェリクスの返事に、リィナはむぅっと唇を尖らせる。
「心配で、きっと朝まで眠れませんわ──明日起きられなかったら、フェリクス様のせいですからね」
「そしたらどうせ昼間寝るんだろ」
おかしそうに笑われて、リィナはもうっとフェリクスの肩を叩く。
「本当に心配してるんですからねっ」
「──分かってるよ、悪かった」
フェリクスは小さく頬を膨らませたリィナの頬を撫でて顔を寄せて──そこではたと我に返る。
見送りは、もう外が暗くなり始めているからと断った。
本来はそれでも見送りに出てくるものだが、一家はリィナの様子に気を利かせたらしい。
今デルフィーヌ侯爵家の門前にいるのはフェリクスとリィナと、フェリクスの愛馬だけだ。
けれど感じる。
複数の視線を、びしばしと。
恐らくは、件の窓から覗かれているのだろう。
違うところからも感じるのは、使用人達かもしれない。
その事に気付いたフェリクスが、くっつきそうになっているリィナの唇に指をあててストップをかけると、リィナからは不満そうな視線が返ってくる。
「すんげー見られてんだけど」
「……気にしません」
「しろっての」
「だって……何日かお会い出来ないのでしょう?それに、婚約者同士が挨拶でキスをするのは、何もおかしい事ではないと思いますわ」
拗ねたように言うリィナに、フェリクスは仕方ねーなと苦笑して、そしてくるりと身体の向きを変えると、完全に窓に背を向ける。
「これなら見えねーよな?」
言われて、リィナは小さく笑う。
「そうですね。フェリクス様の陰になって、あちらから私は見えなくなっていると思います」
何をしているのかはバレバレでしょうけど──とリィナが笑って、フェリクスの首に腕を回す。
「まぁ、見えなきゃセーフだな」
フェリクスはリィナの腕に誘われるように、ゆっくりとリィナの唇を塞いだ──。
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