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本編
28. 乙女は野獣を怒らせる。3 *
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「好きだの何だの言ってた割に、結局あんたはちっとも俺を信用してなかったわけだな」
「────え?」
背後から落とされた言葉の意味をリィナが理解するよりも前に、フェリクスは後ろから再びリィナの膣内に自身を穿った。
そのままガツガツと腰を打ち付けられて、リィナの口から絶え間なく漏れる声が抱き締めている枕に吸い込まれていく。
「あんたは俺の事が好きだけど、俺はあんたの事を迷惑がってて、あんたを追い出してまた店に行って?あんたはずっと俺の事を知ってたけど、俺にとっては昨日がハジメマシテだから、俺はあんたにテキトーに愛を囁いて?それで?俺はあんたと結婚して、あんたの望む様に愛を囁き続けて、あんたが悦ぶように抱けば良いのか?」
ガツンと抉る様に突き上げられて、枕に押し付けていたリィナの顔が跳ね上がってその口から悲鳴が漏れる。
「良いぜ、それでも。あんたがそのつもりなら、俺もそれなりの扱いをさせてもらう」
リィナは必死で首を振る。
「ちがっ……そ、な……そんな、つもり……っ」
「違う?どこが?」
「ふぇりくすさまの、きもち……っ、愛すって、うれしかっ……んんっ」
「嬉しかったのと信用してるのとは、違うだろ?」
「だ、て……」
「俺は言ったはずだ。あんたを愛して、あんただけを見ると。だけどあんたは──何一つ、信じちゃいなかったんだろう?」
フェリクスの言葉に、リィナは愕然とした。
そんなつもりは、なかった。
そんなつもりで、言ったんじゃなかった。
ただ、フェリクスがいつの間にか父に手紙を送ってリィナを帰らせようとしていた事を知って哀しくて、
リィナは離れたくなくてもっと一緒にいたいのに、フェリクスがあんまりにも淡々としていてリィナと離れるのをちっとも渋る気配がなくて、
だから少し不安になって、その不安を分かって欲しくて拗ねてみせて、
そうして全部伝え終わったら、馬鹿かって、笑い飛ばしてほしかっただけだったのに。
「結婚については……今更無しには出来ないだろうからな。元はあんたが乗り込んできたんだ。あんたの父親に挨拶に行くとも伝えちまったし、諦めろ」
「───え?」
「それともあんたが自分で父親に頭でも下げるってなら、許されるか?」
「あい、さつ……?」
リィナが落とした呟きに、フェリクスはあぁ、と前髪を掻き上げると、リィナの腟内から乱暴に自身を引き抜いた。
突然の動きにリィナの身体がびくりと跳ねて、そしてシーツの上にくずおれる。
全身、上手く力が入らなくて、けれどきちんとフェリクスの顔を見て話さなくてはいけない気がして、リィナは腕に力を込めて、痛む身体を必死に起こす。
「明日あんたと一緒に行くって、書いちまったんだよ」
「いっしょ、に……?うちに、ですか?」
「他にどこがある」
「だって、迎えの馬車が来るから、それで帰れって……だから、私1人で帰されるんだって……」
「同乗はしねー……というより、伯爵が侯爵家の馬車に同乗なんて出来ねーからな。俺は護衛がてら馬で付いてくつもりだ」
リィナの瞳から、ぼろぼろと涙が零れ落ちる。
「そ、れ……きいてな………」
「言ってねーからな」
「こわ、くて……私、ばっかり好きみたいで……だから、」
恐る恐るフェリクスに向けて手を伸ばせば、フェリクスは少し迷う素振りを見せた後に、僅かに身体を寄せる。
リィナは遠慮がちにフェリクスの肩に手を置いた。
「フェリクス様に、馬鹿言うなって、おこってほしかっ……」
仕方ねーなって笑って、ちゃんとフェリクスの気持ちがリィナにあるんだと、感じさせて欲しかった。
想定していたのは子供を諭すような、そんな優しいもので、
こんなに本気で怒らせてしまうなんて、思ってもみなかった。
だってフェリクスは、昨日リィナが強引にこの屋敷に押し掛けて来てからずっと、とても優しかったから。
「ガキか──。ってそうか、まだ18──か」
フェリクスはガシガシと自身の髪を乱暴に掻き混ぜると、はーーっと大きな溜息を落とした。
「どう思ってんだか知らねーけどよ……俺だって迷うし悩むし不安にだってなるし、傷つく事だって、ある」
「──は、い」
リィナはどこかで、フェリクスはどこまでも自分を甘やかしてくれるものだと思ってしまっていた。
フェリクスがリィナに心を向けていなかったのではない。
リィナが今まで想像してきたフェリクスに当てはめようとして、そしてその想像よりもずっとずっと優しかった事に舞い上がって、本当のフェリクスを、その心の内を、想いを、真に理解しようとしていなかったのだ。
今目の前にいるのは、今までの実際に話す事も出来ずに噂話と姿しか知らずに、ただ憧れて絵姿を眺めて想像していただけの"フェリクス様"ではなくて、生身の一人の男性なのだ。
そんな当たり前の事に、リィナはやっと気が付いた。
「ごめんな、さ……ごめん、なさい……」
泣きじゃくるリィナに、フェリクスはもう一度溜息を落として、リィナの髪を一筋掬い取る。
「──ガキ」
「きらいに、ならないで……すてないで、くださ……」
ふるりと首を振って、フェリクスの肩に置いた手を、きゅっと握り込む。
「逆だろ?俺から逃げるなら、本当にこれが最後のチャンスかもしれねーぞ」
「逃げる、なんて、ど…して……?」
「分かんねーのか?俺は、これからもこうやってあんたを酷い目にあわせるかもしれないんだぞ?」
「……今、のは…私が悪かった、ので……」
恐かったし、痛かったし、苦しかった。
でもそれは、フェリクスも一緒だったのかもしれない。
「私が間違えたら……怒って、下さい。酷くしても、構いません……私、フェリクス様と、ちゃんと分かり合いたい、です……」
「リィナ──」
フェリクスがリィナの背に腕を回して──少し躊躇ってから、その小さな身体を抱き寄せる。
リィナもフェリクスの肩から首へと腕を滑らせて、そして小さくふふっと笑った。
「リィナ?」
「名前──呼んでくれました」
嬉しそうなリィナの声に、フェリクスはリィナの背中を抱く腕に力を込める。
「逃げなくて、良いんだな──?」
「逃げません。逃がさないで下さい──私はもう全部、フェリクス様のもの、です」
ゆっくりと、まだ少し躊躇うように落ちてきた唇を受け止めて、リィナはフェリクスの頭に手を添える。
応えるように口付けを深めて、そうして角度を変えて、何度もキスを交わす。
「はっ…あっ…ぁ……んんっ」
リィナの手が、フェリクスの背中を叩く。
フェリクスは今度はちゃんと唇を離して、はふっと息を継いだリィナの額に唇を落とすと、仕方ねーなと小さく笑う。
「下手くそ」
「──もっと、ゆっくり教えて下さい」
鼻をつつかれて、リィナが拗ねたようにそう言うと、フェリクスは小さく笑みを落としてからゆっくりと唇を重ねてくる。
重ねるだけの長い口付けに、リィナは鼻から空気を吸い込んでみる。
フェリクスが僅かに唇を離すと、リィナの口から吐息が漏れる。
角度を変えて、またゆっくりと口付けられて、リィナが空気を吸い込む。
そんな風にゆっくり ゆっくりタイミングを覚えさせられて、少しずつ深められていく口付けに、それでもリィナがついて行けなくなった頃、フェリクスの片手がリィナの胸に触れた。
「あっ……」
揉まれて、ぷっくりと膨らんだ先端をくるりと撫でられて、途端にリィナの息が乱れる。
「不安でも不満でも望みでも我儘でも──何でも良い。リィナが思った事は全部言え、溜め込むな。俺達はそうして1つずつ、分かり合って行くんだ──順番、めちゃくちゃだけどな」
苦笑したフェリクスに、リィナもこくりと頷いた。
「フェリクス様も……言って下さいね。私、きっと、これからもたくさん、間違えてしまうから──」
「じゃあ、早速俺から1つ」
真剣なフェリクスの声音に、リィナが不安そうに瞳を揺らす。
フェリクスはそんなリィナを安心させるように触れるだけのキスを落として、こつんと額を合わせた。
「抱いて──良いか?」
「……え?」
「身体が辛い……とか、俺に触れられるのが嫌だとか、なら……止める」
眉間に皺を刻んで真剣な表情でそんな事を言うフェリクスに、リィナはきょとりとその瞳を見返した。
触れられるのが嫌なら、先ほどの口付けの練習はしていないし、今リィナの胸をやわやわと揉んでいるその手はとっくに掃っているだろう。
身体は……足の間と、お腹の中は、正直なところ少し痛いけれど──。
リィナはフェリクスの首に回している腕にぎゅうっと力を込めて、首筋に顔を埋めた。
「抱いて、下さい──フェルさま」
「────え?」
背後から落とされた言葉の意味をリィナが理解するよりも前に、フェリクスは後ろから再びリィナの膣内に自身を穿った。
そのままガツガツと腰を打ち付けられて、リィナの口から絶え間なく漏れる声が抱き締めている枕に吸い込まれていく。
「あんたは俺の事が好きだけど、俺はあんたの事を迷惑がってて、あんたを追い出してまた店に行って?あんたはずっと俺の事を知ってたけど、俺にとっては昨日がハジメマシテだから、俺はあんたにテキトーに愛を囁いて?それで?俺はあんたと結婚して、あんたの望む様に愛を囁き続けて、あんたが悦ぶように抱けば良いのか?」
ガツンと抉る様に突き上げられて、枕に押し付けていたリィナの顔が跳ね上がってその口から悲鳴が漏れる。
「良いぜ、それでも。あんたがそのつもりなら、俺もそれなりの扱いをさせてもらう」
リィナは必死で首を振る。
「ちがっ……そ、な……そんな、つもり……っ」
「違う?どこが?」
「ふぇりくすさまの、きもち……っ、愛すって、うれしかっ……んんっ」
「嬉しかったのと信用してるのとは、違うだろ?」
「だ、て……」
「俺は言ったはずだ。あんたを愛して、あんただけを見ると。だけどあんたは──何一つ、信じちゃいなかったんだろう?」
フェリクスの言葉に、リィナは愕然とした。
そんなつもりは、なかった。
そんなつもりで、言ったんじゃなかった。
ただ、フェリクスがいつの間にか父に手紙を送ってリィナを帰らせようとしていた事を知って哀しくて、
リィナは離れたくなくてもっと一緒にいたいのに、フェリクスがあんまりにも淡々としていてリィナと離れるのをちっとも渋る気配がなくて、
だから少し不安になって、その不安を分かって欲しくて拗ねてみせて、
そうして全部伝え終わったら、馬鹿かって、笑い飛ばしてほしかっただけだったのに。
「結婚については……今更無しには出来ないだろうからな。元はあんたが乗り込んできたんだ。あんたの父親に挨拶に行くとも伝えちまったし、諦めろ」
「───え?」
「それともあんたが自分で父親に頭でも下げるってなら、許されるか?」
「あい、さつ……?」
リィナが落とした呟きに、フェリクスはあぁ、と前髪を掻き上げると、リィナの腟内から乱暴に自身を引き抜いた。
突然の動きにリィナの身体がびくりと跳ねて、そしてシーツの上にくずおれる。
全身、上手く力が入らなくて、けれどきちんとフェリクスの顔を見て話さなくてはいけない気がして、リィナは腕に力を込めて、痛む身体を必死に起こす。
「明日あんたと一緒に行くって、書いちまったんだよ」
「いっしょ、に……?うちに、ですか?」
「他にどこがある」
「だって、迎えの馬車が来るから、それで帰れって……だから、私1人で帰されるんだって……」
「同乗はしねー……というより、伯爵が侯爵家の馬車に同乗なんて出来ねーからな。俺は護衛がてら馬で付いてくつもりだ」
リィナの瞳から、ぼろぼろと涙が零れ落ちる。
「そ、れ……きいてな………」
「言ってねーからな」
「こわ、くて……私、ばっかり好きみたいで……だから、」
恐る恐るフェリクスに向けて手を伸ばせば、フェリクスは少し迷う素振りを見せた後に、僅かに身体を寄せる。
リィナは遠慮がちにフェリクスの肩に手を置いた。
「フェリクス様に、馬鹿言うなって、おこってほしかっ……」
仕方ねーなって笑って、ちゃんとフェリクスの気持ちがリィナにあるんだと、感じさせて欲しかった。
想定していたのは子供を諭すような、そんな優しいもので、
こんなに本気で怒らせてしまうなんて、思ってもみなかった。
だってフェリクスは、昨日リィナが強引にこの屋敷に押し掛けて来てからずっと、とても優しかったから。
「ガキか──。ってそうか、まだ18──か」
フェリクスはガシガシと自身の髪を乱暴に掻き混ぜると、はーーっと大きな溜息を落とした。
「どう思ってんだか知らねーけどよ……俺だって迷うし悩むし不安にだってなるし、傷つく事だって、ある」
「──は、い」
リィナはどこかで、フェリクスはどこまでも自分を甘やかしてくれるものだと思ってしまっていた。
フェリクスがリィナに心を向けていなかったのではない。
リィナが今まで想像してきたフェリクスに当てはめようとして、そしてその想像よりもずっとずっと優しかった事に舞い上がって、本当のフェリクスを、その心の内を、想いを、真に理解しようとしていなかったのだ。
今目の前にいるのは、今までの実際に話す事も出来ずに噂話と姿しか知らずに、ただ憧れて絵姿を眺めて想像していただけの"フェリクス様"ではなくて、生身の一人の男性なのだ。
そんな当たり前の事に、リィナはやっと気が付いた。
「ごめんな、さ……ごめん、なさい……」
泣きじゃくるリィナに、フェリクスはもう一度溜息を落として、リィナの髪を一筋掬い取る。
「──ガキ」
「きらいに、ならないで……すてないで、くださ……」
ふるりと首を振って、フェリクスの肩に置いた手を、きゅっと握り込む。
「逆だろ?俺から逃げるなら、本当にこれが最後のチャンスかもしれねーぞ」
「逃げる、なんて、ど…して……?」
「分かんねーのか?俺は、これからもこうやってあんたを酷い目にあわせるかもしれないんだぞ?」
「……今、のは…私が悪かった、ので……」
恐かったし、痛かったし、苦しかった。
でもそれは、フェリクスも一緒だったのかもしれない。
「私が間違えたら……怒って、下さい。酷くしても、構いません……私、フェリクス様と、ちゃんと分かり合いたい、です……」
「リィナ──」
フェリクスがリィナの背に腕を回して──少し躊躇ってから、その小さな身体を抱き寄せる。
リィナもフェリクスの肩から首へと腕を滑らせて、そして小さくふふっと笑った。
「リィナ?」
「名前──呼んでくれました」
嬉しそうなリィナの声に、フェリクスはリィナの背中を抱く腕に力を込める。
「逃げなくて、良いんだな──?」
「逃げません。逃がさないで下さい──私はもう全部、フェリクス様のもの、です」
ゆっくりと、まだ少し躊躇うように落ちてきた唇を受け止めて、リィナはフェリクスの頭に手を添える。
応えるように口付けを深めて、そうして角度を変えて、何度もキスを交わす。
「はっ…あっ…ぁ……んんっ」
リィナの手が、フェリクスの背中を叩く。
フェリクスは今度はちゃんと唇を離して、はふっと息を継いだリィナの額に唇を落とすと、仕方ねーなと小さく笑う。
「下手くそ」
「──もっと、ゆっくり教えて下さい」
鼻をつつかれて、リィナが拗ねたようにそう言うと、フェリクスは小さく笑みを落としてからゆっくりと唇を重ねてくる。
重ねるだけの長い口付けに、リィナは鼻から空気を吸い込んでみる。
フェリクスが僅かに唇を離すと、リィナの口から吐息が漏れる。
角度を変えて、またゆっくりと口付けられて、リィナが空気を吸い込む。
そんな風にゆっくり ゆっくりタイミングを覚えさせられて、少しずつ深められていく口付けに、それでもリィナがついて行けなくなった頃、フェリクスの片手がリィナの胸に触れた。
「あっ……」
揉まれて、ぷっくりと膨らんだ先端をくるりと撫でられて、途端にリィナの息が乱れる。
「不安でも不満でも望みでも我儘でも──何でも良い。リィナが思った事は全部言え、溜め込むな。俺達はそうして1つずつ、分かり合って行くんだ──順番、めちゃくちゃだけどな」
苦笑したフェリクスに、リィナもこくりと頷いた。
「フェリクス様も……言って下さいね。私、きっと、これからもたくさん、間違えてしまうから──」
「じゃあ、早速俺から1つ」
真剣なフェリクスの声音に、リィナが不安そうに瞳を揺らす。
フェリクスはそんなリィナを安心させるように触れるだけのキスを落として、こつんと額を合わせた。
「抱いて──良いか?」
「……え?」
「身体が辛い……とか、俺に触れられるのが嫌だとか、なら……止める」
眉間に皺を刻んで真剣な表情でそんな事を言うフェリクスに、リィナはきょとりとその瞳を見返した。
触れられるのが嫌なら、先ほどの口付けの練習はしていないし、今リィナの胸をやわやわと揉んでいるその手はとっくに掃っているだろう。
身体は……足の間と、お腹の中は、正直なところ少し痛いけれど──。
リィナはフェリクスの首に回している腕にぎゅうっと力を込めて、首筋に顔を埋めた。
「抱いて、下さい──フェルさま」
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