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本編
24. 野獣は侍女の思惑にはまる。2
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ひゃいっ!という慌てたような返事に吹き出しながら、フェリクスは部屋に入って──そしてぴたりと足を止めた。
天蓋付きのベッドカーテンは、こちら側から見える部分だけ開けられていたから、それはベッドに目を向けた瞬間にフェリクスの視覚に飛び込んできた。
薄暗い部屋の、ベッドの上。
こちらに半分背を向けた状態で座っているリィナの身体のラインが、夜着に透けて見えている。
髪を片側で結っているせいか露わになっている細いうなじ、通常であれば見えるはずのない、夜着の裾から見えているリィナの生足──それらが、絶妙に計算されたかのように小さな光源に照らされて、妙な艶やかさを放っている。
フェリクスはごくりと唾を飲み込んで、ベッドの上のリィナの肢体に釘付けになった。
「フェリクス様……?」
部屋に入ったところで固まってしまったフェリクスに、リィナが不安そうに呼び掛ける。
「あ……いや……」
フェリクスははっと意識を戻してリィナに近づくと、ベッドの上に片膝をつく。
ぎしりと沈んだベッドの揺らぎに、リィナが小さく息を飲んだのが分かった。
「随分やらしーもん、着てるな」
フェリクスがリィナの首筋を指で撫でると、リィナの肩がぴくりと跳ねる。
「こ……これは、皆が……あの、巷で流行っている夜着なのだそうで……」
「また『巷で流行ってる』か……」
果たしてその文句は真実なのだろうかと、巷の女性の流行など知らないフェリクスは疑いを覚える。
しかし今回のコレは、例えそれが侍女達の嘘であろうと責める気にはなれない。
むしろよくやった!と褒め称えたいくらいだ。
ゆるりと腕を引いてリィナの身体を自分の方に向けさせたところで、フェリクスはまた動きを止めた。
上半身を捩じるような恰好のリィナの腹部が、フリルの隙間から覗いている。
レースで縁取られたフリルを指で捲れば、ふわりと夜着の前がはだけた。
「はっ、すげー作り」
思わず笑ったフェリクスに、リィナが慌てて前を掻き合わせる。
「わっ……私は、普通のネグリジェでと……言ったのですが……」
暗くて顔色までは確認できないが、恐らく真っ赤になっているのだろう弱々しくなっていくリィナの声に、フェリクスはくくっと喉を鳴らす。
「俺はこっちの方が良いけどな」
リィナの顎を掴んで、口付ける。
「すげーそそられる」
夜着の裾から、リィナの太腿を撫で上げて少し乱暴に口付ければ、小さく息を漏らしたリィナの睫毛が震えた。
❊❊❊❊❊ ✽ ❊❊❊❊❊
何度も唇を重ねて舌を絡めて、そうして乱れた息すらも飲み込む様にまた唇を重ねられて、
リィナはゆっくりとベッドに押し倒された。
自身が纏っていたガウンを脱ごうとしたフェリクスがふと動きを止める。
「そうだ、リィナ。これ飲んどけ」
「……え?」
ぼんやりとフェリクスを見上げたリィナに、フェリクスはガウンのポケットから取り出した2つの小瓶を軽く振って見せる。
しゃらしゃらと、たくさんの粒がぶつかり合う小さな音がした。
「それは……?」
「避妊薬」
フェリクスは小瓶の蓋を開けて瓶を傾けると、その中から転がり出て来た丸薬を一粒、リィナの口に放り込む。
「……っ!にがい、ですっ」
思わず目をぎゅっと瞑ったリィナにそこまでか?とフェリクスはもう1つの小瓶を開けて同じような丸薬を取り出して、今度は自身の口に放り込む。
カリっとフェリクスが丸薬を噛み砕いた音が響いた。
「──あぁ、確かにこれは……」
べっと嫌そうに舌を出したフェリクスは、サイドテーブルの水差しを手に取って一緒に置かれていたコップに水を注ぐと、すぐさまその水を自分の口に含む。
ズルい、と言おうとしたリィナの口が塞がれて、まだ幾分冷たい水が流し込まれた。
「んっ」
こくんと喉を鳴らしたリィナの頬を撫でる。
「まだ飲むか?」
「……ん、もう一口、だけ」
フェリクスはもう一度水を口に含んで、リィナに口移す。
「──ありがとうございます、もう大丈夫です」
リィナがほっと息をつきながらそう言うと、フェリクスはコップに水を注ぎ足して、今度は自身で一気に飲み干した。
「あの、避妊……って」
コップをサイドテーブルに戻してガウンを脱いだフェリクスがリィナに覆いかぶさる。
「今夜はここに射精してやる」
ゆっくりと下腹部を撫でられて、リィナの身体がぴくんっと揺れた。
「──昨日、欲しがってただろ?」
何種類もの生薬を調合して、男女それぞれ向けに作られているこの薬は、かなり高い避妊率を誇っているらしい。
通常どちらか一方が服用すれば良いらしいが、念の為2人とも服用したのだからほぼ大丈夫だろうと思われる。
ただ昨日は膣内に射精してはいないものの、あれだけ身体を重ねたから、既にリィナが孕んでしまっている可能性もある。
もしそうなった時には、フェリクスはデルフィーヌ侯爵と侯爵夫人に謝り倒してどんな罰でも受け入れる覚悟を決めている──リィナと引き離される以外であれば、だが。
「良いか?」
こんなタイミングでこちらの意思を確認するなんてズルい、と思いながら、リィナは自分の下腹部に置かれているフェリクスの手に自分の手を重ねる。
そして一度きゅっとその指を握りしめてから、ゆっくりとフェリクスに向かって手を伸ばした。
「はい──ください。フェリクス様の全部」
天蓋付きのベッドカーテンは、こちら側から見える部分だけ開けられていたから、それはベッドに目を向けた瞬間にフェリクスの視覚に飛び込んできた。
薄暗い部屋の、ベッドの上。
こちらに半分背を向けた状態で座っているリィナの身体のラインが、夜着に透けて見えている。
髪を片側で結っているせいか露わになっている細いうなじ、通常であれば見えるはずのない、夜着の裾から見えているリィナの生足──それらが、絶妙に計算されたかのように小さな光源に照らされて、妙な艶やかさを放っている。
フェリクスはごくりと唾を飲み込んで、ベッドの上のリィナの肢体に釘付けになった。
「フェリクス様……?」
部屋に入ったところで固まってしまったフェリクスに、リィナが不安そうに呼び掛ける。
「あ……いや……」
フェリクスははっと意識を戻してリィナに近づくと、ベッドの上に片膝をつく。
ぎしりと沈んだベッドの揺らぎに、リィナが小さく息を飲んだのが分かった。
「随分やらしーもん、着てるな」
フェリクスがリィナの首筋を指で撫でると、リィナの肩がぴくりと跳ねる。
「こ……これは、皆が……あの、巷で流行っている夜着なのだそうで……」
「また『巷で流行ってる』か……」
果たしてその文句は真実なのだろうかと、巷の女性の流行など知らないフェリクスは疑いを覚える。
しかし今回のコレは、例えそれが侍女達の嘘であろうと責める気にはなれない。
むしろよくやった!と褒め称えたいくらいだ。
ゆるりと腕を引いてリィナの身体を自分の方に向けさせたところで、フェリクスはまた動きを止めた。
上半身を捩じるような恰好のリィナの腹部が、フリルの隙間から覗いている。
レースで縁取られたフリルを指で捲れば、ふわりと夜着の前がはだけた。
「はっ、すげー作り」
思わず笑ったフェリクスに、リィナが慌てて前を掻き合わせる。
「わっ……私は、普通のネグリジェでと……言ったのですが……」
暗くて顔色までは確認できないが、恐らく真っ赤になっているのだろう弱々しくなっていくリィナの声に、フェリクスはくくっと喉を鳴らす。
「俺はこっちの方が良いけどな」
リィナの顎を掴んで、口付ける。
「すげーそそられる」
夜着の裾から、リィナの太腿を撫で上げて少し乱暴に口付ければ、小さく息を漏らしたリィナの睫毛が震えた。
❊❊❊❊❊ ✽ ❊❊❊❊❊
何度も唇を重ねて舌を絡めて、そうして乱れた息すらも飲み込む様にまた唇を重ねられて、
リィナはゆっくりとベッドに押し倒された。
自身が纏っていたガウンを脱ごうとしたフェリクスがふと動きを止める。
「そうだ、リィナ。これ飲んどけ」
「……え?」
ぼんやりとフェリクスを見上げたリィナに、フェリクスはガウンのポケットから取り出した2つの小瓶を軽く振って見せる。
しゃらしゃらと、たくさんの粒がぶつかり合う小さな音がした。
「それは……?」
「避妊薬」
フェリクスは小瓶の蓋を開けて瓶を傾けると、その中から転がり出て来た丸薬を一粒、リィナの口に放り込む。
「……っ!にがい、ですっ」
思わず目をぎゅっと瞑ったリィナにそこまでか?とフェリクスはもう1つの小瓶を開けて同じような丸薬を取り出して、今度は自身の口に放り込む。
カリっとフェリクスが丸薬を噛み砕いた音が響いた。
「──あぁ、確かにこれは……」
べっと嫌そうに舌を出したフェリクスは、サイドテーブルの水差しを手に取って一緒に置かれていたコップに水を注ぐと、すぐさまその水を自分の口に含む。
ズルい、と言おうとしたリィナの口が塞がれて、まだ幾分冷たい水が流し込まれた。
「んっ」
こくんと喉を鳴らしたリィナの頬を撫でる。
「まだ飲むか?」
「……ん、もう一口、だけ」
フェリクスはもう一度水を口に含んで、リィナに口移す。
「──ありがとうございます、もう大丈夫です」
リィナがほっと息をつきながらそう言うと、フェリクスはコップに水を注ぎ足して、今度は自身で一気に飲み干した。
「あの、避妊……って」
コップをサイドテーブルに戻してガウンを脱いだフェリクスがリィナに覆いかぶさる。
「今夜はここに射精してやる」
ゆっくりと下腹部を撫でられて、リィナの身体がぴくんっと揺れた。
「──昨日、欲しがってただろ?」
何種類もの生薬を調合して、男女それぞれ向けに作られているこの薬は、かなり高い避妊率を誇っているらしい。
通常どちらか一方が服用すれば良いらしいが、念の為2人とも服用したのだからほぼ大丈夫だろうと思われる。
ただ昨日は膣内に射精してはいないものの、あれだけ身体を重ねたから、既にリィナが孕んでしまっている可能性もある。
もしそうなった時には、フェリクスはデルフィーヌ侯爵と侯爵夫人に謝り倒してどんな罰でも受け入れる覚悟を決めている──リィナと引き離される以外であれば、だが。
「良いか?」
こんなタイミングでこちらの意思を確認するなんてズルい、と思いながら、リィナは自分の下腹部に置かれているフェリクスの手に自分の手を重ねる。
そして一度きゅっとその指を握りしめてから、ゆっくりとフェリクスに向かって手を伸ばした。
「はい──ください。フェリクス様の全部」
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