目が覚めたら大好きなヒーローとの初夜だそうなので、抱かれてみます

05. 好き、大好き

「ん……っ」

　えみりよりも豊かな胸が、大きな手で包まれる。
　乳房全体をふにふにと優しく揉まれながら、ルドヴィクの指が円を描くように動くと身体が小さく反応する。
　そうやってしばらくくるくると刺激されてるうちに、胸の先端がつんと立って来た事が自分でも分かった。
　その先端をきゅっと抓まれた瞬間、身体がぴくんっと跳ねてしまう。

「あっ」

　同時に漏れた声に、ルドヴィクの目が細められる。
　何だかすごく恥ずかしくてそっとルドヴィクを見てみると、それに気付いたルドヴィクが頬にキスをしてくれた。
　そのまま先端をこりこりと刺激されて、時々きゅっと強く抓まれる。

「あ、んっ」

　零れてしまう声が恥ずかしくて手で口を塞いだのに、その手はすぐに外されてしまった。

「聞かせろ」

　短く言われて、でも、と訴える前にルドヴィクが首筋に舌を這わせる。
　胸の先端を弄られたまんま、首筋を舐められて、吸われて、そしてちりっと痛みが走る。

「っ……！」

　びくっと身体を竦ませた私を宥める様に、ルドヴィクは今痛みが走ったところにキスを落とすと、また唇を滑らせた。
　鎖骨から胸へ。キスをしたり、時々さっきみたいな小さな痛みを走らせたりしながら、ルドヴィクの唇が少しずつ下がってく。
　ふと気が付くと、いつの間にかナイトドレスの胸元のリボンが解かれてた。
　胸元からルドヴィクの手が入り込んで来て、素肌を撫でるようにしてナイトドレスの肩が落とされたかと思ったら、ルドヴィクは露わになった胸の先端をちろりと舐めた。

「あ……っ！？」

　つんと上向いている先端を舌先で転がされながら反対の先端を指先で弄られると、ぞくぞくとした何かが背中を駆け抜けていく。
　初めての感覚に、恐くなって思わず身を捩って逃げようとしてもルドヴィクにやんわりと肩を押さえられてしまう。
　そしてぴちゃぴちゃと音をさせて舐め上げたかと思うと、口に含んで舌先で転がされる。

「やぁ……っあ、ルドヴィク……っ」

　私は逃げる事も出来ずに、ただ翻弄され続けた。
　ルドヴィクは口で、舌で、指先で、時間をかけてたっぷりと両方の胸を味わった。

　ようやく解放された時には、胸の先端はじくじくと熱を持って、足の間からはとろとろと何かが溢れ始めてた。
　多分まだ全然序盤だろうに、既にぐったりとしてしまっている私のおでこに、ルドヴィクがキスをする。
　強請るように顎を持ち上げると、ルドヴィクは小さく笑って唇にもキスをしてくれた。
　唇が離れて、ほぅと息を落としたその時。
　ぬるりと秘所を撫でられて、私は小さく悲鳴を上げてしまった。

「ル、ルドヴィク……っ」

　ルドヴィクの指が動く度に、くちくちと水音が響く。

「あっ……や、ルドヴィク……っ」
「しっかり濡れているな」
「や、やだぁ……っ」

　恥ずかしいと訴えても、ルドヴィクの指は割れ目を撫で続けて、ますます水音が大きくなる。

「入れるぞ」

　つぷんと、ルドヴィクの指が中に入ってきた。
　痛みはないけど異物感はあって、思わずきゅっと目を瞑る。

「痛むか？」
「へ、いき……」

　くちゅくちゅと、ルドヴィクの指が中を擦る。
　何度か指を出し入れされているうちに異物感はなくなって、ただ気持ち良くなってくる。
　しかも痺れるような、どうしようもなく気持ちの良い場所があって、そこを擦られる度に身体が震えてしまう。

「ルド……ルドヴィク……っそこ……っ」
「――ここか？」
「あぁっ！」

　かりっと引っ掻くようにされて、びくっと腰が跳ねる。
　その反応に気を良くしたらしいルドヴィクは、そこばかりを責め始めた。

「やっ……あ、やぁ……っ！」
「気持ち良いのだろう？」
「い、けど……あぁっ！」

　こりこりと擦られていたそこをまた引っ掻くように、今度はさっきよりも強く刺激されて、何だか頭の中が白くなって背中がびくんと反った。
　増やすぞ、という声が聞こえた気がして、そうしてさっきよりも質量が増す。
　そのまままたぐちゅぐちゅと擦られて中を広げられて、気持ち良さもどんどん増していって、そうして喘がされている間にいつの間にか指は三本に増やされてた。

　ルドヴィクの指に散々翻弄されて、すっかり力の入らなくなってた私の髪を撫でてから、ルドヴィクが身体を起こした。
　ぼんやり見上げると、ルドヴィクが自分の服を脱いだところだった。
　
　　――推しの裸体、ありがたやぁ

　自ら先陣を切っていくつもの戦場を駆けて、いくつもの国を落とした『征服王』なんだから、ひょろひょろなはずがない。
　小説の挿絵でも筋肉質なお身体だったけど、それよりもどっしりしている気がする。
　肩も腕もがっっっしりしてるし、胸なんてナイス雄っぱい！　と叫びたいくらいだ。
　本当は手を合わせて拝みたいところだけど、力が入らないので呼吸を乱したままじぃっと見つめているだけになってしまった。
　そんな私のねっとりした視線と、翻弄されたせいだけじゃない息の荒さに気づいたらしいルドヴィクが、にやりと笑う。

「そんな物欲しそうな顔をせずとも、すぐにくれてやる」

　いや、物欲しそうな顔をしてたわけでは……と言いたかったけど、それは言葉には出来ずに、代わりに上がりかけた悲鳴をんぐっと飲み込んだ。
　ぱかりと足を開かされて、そしてルドヴィクの先っぽが押し当てられたからだ。

「挿れるぞ」

　短い宣言の後に、ルドヴィクがぐっと押し入ってくる。

「……いっ！」

　あっ……！　あんなにっ！　あんなに指でされたのにっ！
　すっっっっごく痛いぃぃぃ……！！
　指とは全然太さが違って、入り口も中も悲鳴を上げてる。
　実際に悲鳴を上げないように、ぎゅーっと目を瞑って歯を食いしばる。

「……痛むか？」

　途中で止まってくれたルドヴィクに頷こうとして、だけど慌ててブンブン首を振る。
　だって私が抱いて欲しいって頼んだんだから。痛いだなんて言って困らせるわけにはいかない。
　大丈夫だから続けて、と言うと、ルドヴィクの眉が寄った。

「無理をするな」

　ルドヴィクはそう言うと、抱き締めてくれた。
　そのまましばらく慣らすようにじっとしてから、ゆっくりゆっくり、小さく腰を揺らしながら少しずつ奥へと進んでくれる。
　そうして時間をかけてやっとルドヴィクが全部中に収まると、私たちはほっと息をついた。

「大丈夫か？」
「うん」

　おでこにかかった前髪を払いながら瞳を覗き込まれて、私はすぐに頷いた。
　まだ鈍い痛みはあるけど、大好きなルドヴィクに抱かれてるんだと思うと、胸に広がるのは喜びだけだ。

「ルドヴィク……ありがとう、大好き」
「っ！」

　自然と溢れて来た想いを口にしたら、ルドヴィクが小さく唸った。
　そして中でぐぅっと質量が増す。

「！？　ルド……っ」
「――今のは、お前が悪い」
「わ、私、なにも……んぅっ！」

　ずっと腰を引かれて、ぎゅっと目を閉じる。

「動くぞ」

　やっぱり短い宣言の後に、ルドヴィクはゆっくり動き始めた。
　最初はただルドヴィクを受け入れるのに必死で、だけど擦られる度、奥を突かれる度、少しずつ中が変わっていく。

「あっ、や、……ぁあっ、んぅ！！」

　痛みばっかりじゃなくなって、どんどん気持ち良さが増して、ゆっくりしてくれていたルドヴィクの動きも段々速くなって。
　何だか振り落とされてしまいそうな気がして、私は必死でルドヴィクに縋り付く。

「もう、痛みはなさそうだな？」
「んっ……うん、だい、じょーぶ……ルドヴィク……きもち、いっ……きもちいいよぅ……っ」

　こくこくと頷くと、抱き締めてくれていたルドヴィクの身体が離れて、腰を掴まれる。

「キツかったら、言え」

　え？　 と思った時にはガツンって突き上げられて、目の前で星が散った気がした。

「――あぁっ！　ルド、ヴィク……！　あっ、あんっ、あぁっ」

　ガツガツと腰を打ち付けられて、揺さぶられる。
　きもちいい、うれしい、すき、だいすき――
　溢れる想いを言葉に出来てたかは分からないけど、だけど縋るように伸ばした手を握り返されて、そしてまた強く抱き締められる。

「ルド……」
「愛してる、エミーリア」
「――――あ」

　耳元で落とされたその名前に、蕩けていた意識が途端に冷えた。

　　――そうだ。
　　私は今「エミーリア」で、
　　ルドヴィクは結局「エミーリア」を、抱いてるんだ

　そう思ったら、心がすぅっと冷たくなったような感じがした。

「――エミーリア？」

　大丈夫か？　と覗き込まれて、私は慌てて微笑む。

「ルドヴィク、好き」

　落ちそうになった手に力を込めて、ルドヴィクの背に回す。
　その広くて分厚い胸板に顔を押し付けて、ぎゅっと目を閉じて零れそうになった涙を堪える。

「好き、大好き。もっと……もっと、して？」


　激しくなる動きに、苦しいくらいの快楽に、私はただ夢中になった。
　縋り付くように抱きついて、感じて、喘いで、
　そして多分、絶頂というものを味わった。

　ルドヴィクの熱が勢いよく放たれて、お腹の中がいっぱいになっていくのを感じながら、
　私の意識は闇に引きずり込まれるように薄れていった。



　――ごめんなさい


　その謝罪がエミーリアに向けてだったのか、ルドヴィクに向けてだったのかは、
　自分でも分からなかった。