目が覚めたら大好きなヒーローとの初夜だそうなので、抱かれてみます

桜月みやこ

文字の大きさ
上 下
3 / 11

03. 推しキターーーーー!

しおりを挟む




着せ替え人形というのはとても大変なんだと改めて思い知った。

「きゃあ!これも素敵ですわ」

「店長、やはりお色は華やかにされた方が」

「髪飾りも華やかなものにしなくては」


私と年齢が変わらない女性達が囲み楽しそうだった。

「それにしてもなんて艶やかな髪なのでしょう」

「本当に絹のようですわ」

「そう…ですか?最近は手入れを怠っていたので」


私の髪を結ってくれる髪結師である女性が目を見開く。
まるで獲物を見つけたような表情で少し怖くなったのだ。

「これで手入れを怠った?」

「ちなみにだけど、三年前の写真よ」

「お嬢様!」

隣でお嬢様が写真を取り出す。
常に持ち歩いていたなんて初めて知ったわ。


「まぁ、なんて美しい御髪。それにお肌も…」

「もちろん加工だってしてないし、こっちはメイクしてないわ」

「止めてくださいお嬢様!そんなノーメイクの写真…っていうか、いつの間に」


そういえば伯爵家ではやたらとカメラマンが出入りしていた気がする。
旦那様が日々、お嬢様の成長を映像に残したいとか言っていらしたのを思い出す。


「まぁ、なんて美しい御髪なのかしら」

「どうしたらこんな綺麗な髪を…」


よく見ると髪結師の髪は綺麗に染めているけど艶がない。
平民に限らず下級貴族の間では髪を美しく見せる為に染めたり巻いたりするけど、その所為で髪が痛む。


キューティクルとはいいがたい髪質だ。


「フンッ!この私の自慢の髪も先生に手入れをしていただいたのよ」


くるりと回りながら髪を翻すお嬢様。
まるでモデルのショーを見ているようだった。



「一体どんな香油をお使いに?」

「香油…」

そうだった。
一昔前は香油を使っていた。
現在は石鹸を使い洗髪した後に髪の毛を美しく見せる為に薬草を使って艶を出していた。


ただし艶が綺麗にでるわけではない。


「私が使っているのは香油ではなく果物を使ったシャンプーで汚れを落としています。その後にリンス―を使っていまして…」

通常とは少しヘアケアの仕方が違う。
ここ最近はヘアケアを怠っているけど。


「やはり高位貴族の方は違いますわね」

「え?」

「私は数多のご令嬢、ご夫人を見てまいりましたが。立ち振る舞いや所作で育ちが解りますわ。何よりティンファニー伯爵家の家庭教師となれば相応の身分の方かと」

「いえ…」


嘘でしょ?
ティンファニー伯爵家って、そこまですごかったの?

何代も続く貴族とは聞いていた。
実際親族が皇室に入ったと聞いていたけど。

旦那様自身は関係ないと言っていらしたし。


「伯爵様も潔癖症な所がありますし…使用人は古くから仕えているもの以外は拒絶されてますわ」

「仕方ありませんわよ。ティンファニー伯爵家と繋がりを持ちたい方は多いですから」


「これ!無礼でしょう」

若い髪結師や化粧師がきゃあきゃあと話していたがオーナーが咎める中私は眩暈がした。


知らなかったからだ。


だって気さくで優しい方で。
失礼だけど優しい兄のように慕っていたもの。


行儀見習いだった時に出会い、良くしてくださったから。

そんな風に思わなかった。



しおりを挟む
お読みいただきましてありがとうございます!

** マシュマロを送ってみる**

※こちらはTwitterでの返信となります。 ** 返信一覧はこちら **

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける

朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。 お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン 絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。 「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」 「えっ!? ええぇぇえええ!!!」 この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

騎士団長のアレは誰が手に入れるのか!?

うさぎくま
恋愛
黄金のようだと言われるほどに濁りがない金色の瞳。肩より少し短いくらいの、いい塩梅で切り揃えられた柔らかく靡く金色の髪。甘やかな声で、誰もが振り返る美男子であり、屈強な肉体美、魔力、剣技、男の象徴も立派、全てが完璧な騎士団長ギルバルドが、遅い初恋に落ち、男心を振り回される物語。 濃厚で甘やかな『性』やり取りを楽しんで頂けたら幸いです!

偶然同じ集合住宅の同じ階に住んでいるだけなのに、有名な美形魔法使いに付き纏いする熱烈なファンだと完全に勘違いされていた私のあやまり。

待鳥園子
恋愛
同じ集合住宅で同じ階に住んでいた美形魔法使い。たまに帰り道が一緒になるだけなんだけど、絶対あの人私を熱烈な迷惑ファンだと勘違いしてる! 誤解を解きたくても、嫌がられて避けられている気もするし……と思っていたら、彼の部屋に連れ込まれて良くわからない事態になった話。

処理中です...