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02. ここはどこ!? 私は誰!?
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❊❊❊ ✽ ❊❊❊
ぱちんっと目の前で光が弾けたような気がして、私はぱちぱちと瞬いた。
「――――へ?」
ぱちり、と瞬いてみても、見えているモノは変わらなかった。
ぱちぱちぱち、と高速瞬きをしてみても、やっぱり見えているモノは変わらなかった。
今私に見えているモノ。
それはたった一つ。
めちゃくちゃ強面の、だけど端正な顔立ちの、男の人。
のドアップ。
――以上。
「へぇぇ???」
間抜けな声を上げる私を、強面サンの鋭すぎる眼光が一直線に貫いてくる。
「急におかしな声を出して、どうした?」
「い、いや……だって……だ、誰? どういう状況……??」
どうやら強面サンに押さえつけられているらしい、という事は分かった。
だってめちゃくちゃ顔が近いし重いしちっとも身体が動かない。
「誰、とは心外だ」
強面サンは私の顎をくいっと指で持ち上げた。
――あ、ああああ顎クイ!!? まさかこれは顎クイというやつでは御座いませんか!!?
おかーさーーーーん! いま私! 強面イケメンに床ドン顎クイされてるーーーー!!!?
混乱しながらも脳内でそう絶叫した私は、次の瞬間目が点になった。
「まさか僅かな時間で夫の顔を忘れたとでも言うつもりか?」
「――――はぁ?」
天羽生えみり・二十一歳・独身。
どうやら知らぬ間に既婚者になっていたようです。
「……なワケあるかいっ!」
思わず強面サンの胸にぺしっとツッコミをいれてしまう。
んんんっ!? 強面サンすごい筋肉ですね! ナイスマッチョ!
ほわぁ、そりゃこんなのに押し倒されてたら重いはずだわぁ、と思って、どうやら結構かなり混乱しているらしい私はそこでやっと気づいた。
「えぇっと……とりあえず、一度離れて貰えませんか」
私的にはしごく当然の要求を口にしたつもりだったけれど、強面サンの眉が不機嫌そうに寄せられる。
「これから、という時に、離れろと?」
「こ、これから……?」
って何がこれからなんですか、とは聞いてはいけない気がして、私は全力で強面サンの胸を押してみる。
「と、とにかく、一体何がどうなってるのか、状況の整理をですね……!」
ちっともびくともしない胸をぐいぐい頑張って押していたら、強面サンがはぁ、と溜め息を落とした。
そしてゆっくりと身体を起こす。
身体が軽くなった事にほっとした途端、がしっと腕を掴まれてぐいーっと引っ張り起こされた。
強面サンしか見えなかった視界が広がったから、慌てて周りを見回してみる。
「お前が俺との婚姻を望んでいない事は分かっているが、逃げられるなどと思わない事だ」
お前はもう俺のものだ。
という強面サンのセリフが右から左へと流れていく。
漫画とかでは見かけるけど、実際には中々言えるセリフでも言われるセリフでもないだろうから、後からもう少しちゃんと聞いておけば良かったと思ったりもしたけど、顎が抜けそうな程ぽかんっとしてしまってた私はそれどころじゃなかった。
だって私がいるのは漫画とか映画で見るような、屋根みたいなのが付いたベッドの上で。
そのベッドがあるのは漫画とか映画で見るようなお城の一室、みたいな広~い部屋の中で。
「どこ……ここ……」
呆然と呟いた私に、強面サンがまた一つ溜め息を落とした。
「気が触れた事にでもすれば、逃げられるとでも思っているのか?」
「い、いやいやいや! 気が触れたわけじゃなくて……! 本当に何がどうなってるのかちっとも……!」
ここはどこ!? 私は誰!?
私はえみり! 天羽生えみり二十一歳! しがない独身OL! 彼氏なし!!
オッケー! 自分の事は覚えてる!!!
呆然と部屋を見回していた私は、窓を見つけてばっとベッドから下りた。
うわわっ!? カーペットがふっかふかぁ!!!
「おい」
強面サンが追いかけてくる気配を背中に感じながら、ふわふわと柔らかな毛並のカーペットを踏みつけて駆け寄った窓に手を付く。
外は真っ暗で、よく見えない。
よく見えないけど、だからこそ分かった。
――ここは、私が暮らしている街じゃ、ない。
だって、灯りがない。
家の灯りやお店の看板や街灯。そんな灯りがちっともない。
庭? にいくつかゆらゆらと揺れるモノは見える。
電気じゃない――あの揺れ方は、炎?
「なんで……」
呆然と窓の外を見つめていた私は、ふと違和感を覚えた。
そして視線を窓の外から、窓硝子に移す。
「……だれ、これ……」
自分が映っているはずの窓には、見たこともない美少女がぽかんとした顔でこっちを見ていた。
ぱちんっと目の前で光が弾けたような気がして、私はぱちぱちと瞬いた。
「――――へ?」
ぱちり、と瞬いてみても、見えているモノは変わらなかった。
ぱちぱちぱち、と高速瞬きをしてみても、やっぱり見えているモノは変わらなかった。
今私に見えているモノ。
それはたった一つ。
めちゃくちゃ強面の、だけど端正な顔立ちの、男の人。
のドアップ。
――以上。
「へぇぇ???」
間抜けな声を上げる私を、強面サンの鋭すぎる眼光が一直線に貫いてくる。
「急におかしな声を出して、どうした?」
「い、いや……だって……だ、誰? どういう状況……??」
どうやら強面サンに押さえつけられているらしい、という事は分かった。
だってめちゃくちゃ顔が近いし重いしちっとも身体が動かない。
「誰、とは心外だ」
強面サンは私の顎をくいっと指で持ち上げた。
――あ、ああああ顎クイ!!? まさかこれは顎クイというやつでは御座いませんか!!?
おかーさーーーーん! いま私! 強面イケメンに床ドン顎クイされてるーーーー!!!?
混乱しながらも脳内でそう絶叫した私は、次の瞬間目が点になった。
「まさか僅かな時間で夫の顔を忘れたとでも言うつもりか?」
「――――はぁ?」
天羽生えみり・二十一歳・独身。
どうやら知らぬ間に既婚者になっていたようです。
「……なワケあるかいっ!」
思わず強面サンの胸にぺしっとツッコミをいれてしまう。
んんんっ!? 強面サンすごい筋肉ですね! ナイスマッチョ!
ほわぁ、そりゃこんなのに押し倒されてたら重いはずだわぁ、と思って、どうやら結構かなり混乱しているらしい私はそこでやっと気づいた。
「えぇっと……とりあえず、一度離れて貰えませんか」
私的にはしごく当然の要求を口にしたつもりだったけれど、強面サンの眉が不機嫌そうに寄せられる。
「これから、という時に、離れろと?」
「こ、これから……?」
って何がこれからなんですか、とは聞いてはいけない気がして、私は全力で強面サンの胸を押してみる。
「と、とにかく、一体何がどうなってるのか、状況の整理をですね……!」
ちっともびくともしない胸をぐいぐい頑張って押していたら、強面サンがはぁ、と溜め息を落とした。
そしてゆっくりと身体を起こす。
身体が軽くなった事にほっとした途端、がしっと腕を掴まれてぐいーっと引っ張り起こされた。
強面サンしか見えなかった視界が広がったから、慌てて周りを見回してみる。
「お前が俺との婚姻を望んでいない事は分かっているが、逃げられるなどと思わない事だ」
お前はもう俺のものだ。
という強面サンのセリフが右から左へと流れていく。
漫画とかでは見かけるけど、実際には中々言えるセリフでも言われるセリフでもないだろうから、後からもう少しちゃんと聞いておけば良かったと思ったりもしたけど、顎が抜けそうな程ぽかんっとしてしまってた私はそれどころじゃなかった。
だって私がいるのは漫画とか映画で見るような、屋根みたいなのが付いたベッドの上で。
そのベッドがあるのは漫画とか映画で見るようなお城の一室、みたいな広~い部屋の中で。
「どこ……ここ……」
呆然と呟いた私に、強面サンがまた一つ溜め息を落とした。
「気が触れた事にでもすれば、逃げられるとでも思っているのか?」
「い、いやいやいや! 気が触れたわけじゃなくて……! 本当に何がどうなってるのかちっとも……!」
ここはどこ!? 私は誰!?
私はえみり! 天羽生えみり二十一歳! しがない独身OL! 彼氏なし!!
オッケー! 自分の事は覚えてる!!!
呆然と部屋を見回していた私は、窓を見つけてばっとベッドから下りた。
うわわっ!? カーペットがふっかふかぁ!!!
「おい」
強面サンが追いかけてくる気配を背中に感じながら、ふわふわと柔らかな毛並のカーペットを踏みつけて駆け寄った窓に手を付く。
外は真っ暗で、よく見えない。
よく見えないけど、だからこそ分かった。
――ここは、私が暮らしている街じゃ、ない。
だって、灯りがない。
家の灯りやお店の看板や街灯。そんな灯りがちっともない。
庭? にいくつかゆらゆらと揺れるモノは見える。
電気じゃない――あの揺れ方は、炎?
「なんで……」
呆然と窓の外を見つめていた私は、ふと違和感を覚えた。
そして視線を窓の外から、窓硝子に移す。
「……だれ、これ……」
自分が映っているはずの窓には、見たこともない美少女がぽかんとした顔でこっちを見ていた。
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