【毎日更新】元魔王様の2度目の人生

ゆーとちん

文字の大きさ
上 下
710 / 772
82章

元魔王様とテルイゾラの地下空間 9

しおりを挟む
 ジルは取り出した入行許可証をミーナに渡す。

「このゴールドカードは?」

「知人から預かってきた物だ。何かの役に立つかもしれないと言われてな。」

 そう言う体にして渡した入行許可証はレイアが邪神教の女性と戦った時に落とした物だ。
これなら取り引きの証明にもなると考えた。

「あまり許可証の貸し出しは宜しくないのですが今回は目を瞑りましょう。それでは少しお借りしますね。」

 魅了魔法に掛かっているからか、他者の入行許可証でもそこまでミーナは気にしていない。
上手く事が運びそうで助かった。
ミーナは何かの機会を取り出して受け取った入行許可証を入れる。

「それは何だ?」

「許可証のナンバーから取り引きした情報を読み取る魔法道具ですね。テルイゾラで商いをしている者に一定数配られています。」

 特定の者だけが持つ事を許されている入行許可証専用の魔法道具らしい。
これを使えば過去の取り引き記録が分かる様だ。

「こ、これは!?」

 機会に表示された記録を見てミーナが驚いている。

「どうした?」

「とんでもない取り引き額ではありませんか!?購入数こそ少ないですが卸している数が膨大です!」

 邪神教の女性は相当テルイゾラのオークションを利用していたらしい。
さすがはゴールドカードである。

「つまりどうなるんだ?」

「この取り引き量であれば地下への招待も確実に話しがいっている筈です。その方からの紹介であれば私の権限でお通ししましょう。」

 魅了魔法のおかげでゴールドカードの所有者と知り合いだと疑われる事無く話しが進んでいく。
ミーナ自らが権限を使ってくれる様だ。

「それは助かる。早速頼んでもいいか?」

「少しだけお時間をもらえますか?娼館に行って今日は任せると伝えてきますので。」

「分かった、ここで待っていよう。」

「はい、それでは一度失礼します。」

 ミーナが一礼して酒場から出ていく。
それを見送ってからテスラが立ち上がる。

「ジル様、何かしらの要因で途中で魅了魔法が解除されないとも限りません。念の為後を追って見てきますね。」

「お供します。」

「悪いな、テスラ、ミネルヴァ。」

 せっかく話しが上手く進んでいるのに魅了魔法が解けて面倒な事になっても困る。
保険として付いてくれるのは助かる。

「ジル様、上手くいきそうですね。」

「そうだな、だがやっと地下に入れるだけだ。まだ何も始まってはいない。フォルトゥナも地下には詳しくなさそうだからな。」

 テルイゾラで治安維持を暫くしていたらしいが地下へ入った経験がフォルトゥナには無い。
ミーナが黒幕側か分からないので長期間拘束して案内してもらう訳にもいかず、自分達で探し回るしかない。

「ですが一度地下に入ってしまえば魔法が使用出来ます。そうなればジル様の独壇場でしょう。」

 フォルトゥナは特に地下へ入ってからの事は心配していない。
ジルには空間把握の魔法があるので、それを使えば地下全体を調べる事も可能なのだ。

「まあ、空間把握が使えれば怪しい場所を直ぐに見つけられるだろうしな。」

「人質を救出したら即帰還しますか?」

「状況によるな。テルイゾラの裏の組織を壊滅させるのは面倒だから迷っているが人質は全員救出するつもりだ。フォルトゥナも気になるだろうからな。」

 さすがにフォルトゥナの人質だけを助けて帰るなんて薄情な事は出来無い。
助けるならついでに全員連れ出すつもりだ。

「ありがとうございます。一緒に治安維持組織に入れられた同じ立場の人達も人質の皆さんを心配していましたから。」

 やはり他の人質も気になっていた様だ。
全員救出出来ればテルイゾラの事で悩む心配も無くなるだろう。

「人質を全員連れ出せば後は自然に裏の組織とやらは崩壊しそうですね。国外の実力者達を従え過ぎている様ですから。」

「そうだな、我らが手を下すまでも無いだろう。」

 人質と言う枷が無くなれば実力者達は好きに暴れられる。
その結果テルイゾラと言う島が世界から消える事になるかもしれないが、それはその時になってみないと分からない。

「これなら明日までには帰れそうだな。」

「普通はこれ程の事を一日で終わらせるなんて不可能なのでしょうけどね。」

 何週間、何ヶ月掛かっても不思議では無い。
ジル達の行動力あってこそ出来る事だ。

「ルルネットに早く帰ってこいと急かされているからな。帰る時間が一日伸びるだけで何を言われるか分からん。」

 可愛い弟子の頼みくらいたまには聞いてやろうと思いながらテスラ達が帰ってくるのを酒場で待った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...