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82章
元魔王様とテルイゾラの地下空間 9
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ジルは取り出した入行許可証をミーナに渡す。
「このゴールドカードは?」
「知人から預かってきた物だ。何かの役に立つかもしれないと言われてな。」
そう言う体にして渡した入行許可証はレイアが邪神教の女性と戦った時に落とした物だ。
これなら取り引きの証明にもなると考えた。
「あまり許可証の貸し出しは宜しくないのですが今回は目を瞑りましょう。それでは少しお借りしますね。」
魅了魔法に掛かっているからか、他者の入行許可証でもそこまでミーナは気にしていない。
上手く事が運びそうで助かった。
ミーナは何かの機会を取り出して受け取った入行許可証を入れる。
「それは何だ?」
「許可証のナンバーから取り引きした情報を読み取る魔法道具ですね。テルイゾラで商いをしている者に一定数配られています。」
特定の者だけが持つ事を許されている入行許可証専用の魔法道具らしい。
これを使えば過去の取り引き記録が分かる様だ。
「こ、これは!?」
機会に表示された記録を見てミーナが驚いている。
「どうした?」
「とんでもない取り引き額ではありませんか!?購入数こそ少ないですが卸している数が膨大です!」
邪神教の女性は相当テルイゾラのオークションを利用していたらしい。
さすがはゴールドカードである。
「つまりどうなるんだ?」
「この取り引き量であれば地下への招待も確実に話しがいっている筈です。その方からの紹介であれば私の権限でお通ししましょう。」
魅了魔法のおかげでゴールドカードの所有者と知り合いだと疑われる事無く話しが進んでいく。
ミーナ自らが権限を使ってくれる様だ。
「それは助かる。早速頼んでもいいか?」
「少しだけお時間をもらえますか?娼館に行って今日は任せると伝えてきますので。」
「分かった、ここで待っていよう。」
「はい、それでは一度失礼します。」
ミーナが一礼して酒場から出ていく。
それを見送ってからテスラが立ち上がる。
「ジル様、何かしらの要因で途中で魅了魔法が解除されないとも限りません。念の為後を追って見てきますね。」
「お供します。」
「悪いな、テスラ、ミネルヴァ。」
せっかく話しが上手く進んでいるのに魅了魔法が解けて面倒な事になっても困る。
保険として付いてくれるのは助かる。
「ジル様、上手くいきそうですね。」
「そうだな、だがやっと地下に入れるだけだ。まだ何も始まってはいない。フォルトゥナも地下には詳しくなさそうだからな。」
テルイゾラで治安維持を暫くしていたらしいが地下へ入った経験がフォルトゥナには無い。
ミーナが黒幕側か分からないので長期間拘束して案内してもらう訳にもいかず、自分達で探し回るしかない。
「ですが一度地下に入ってしまえば魔法が使用出来ます。そうなればジル様の独壇場でしょう。」
フォルトゥナは特に地下へ入ってからの事は心配していない。
ジルには空間把握の魔法があるので、それを使えば地下全体を調べる事も可能なのだ。
「まあ、空間把握が使えれば怪しい場所を直ぐに見つけられるだろうしな。」
「人質を救出したら即帰還しますか?」
「状況によるな。テルイゾラの裏の組織を壊滅させるのは面倒だから迷っているが人質は全員救出するつもりだ。フォルトゥナも気になるだろうからな。」
さすがにフォルトゥナの人質だけを助けて帰るなんて薄情な事は出来無い。
助けるならついでに全員連れ出すつもりだ。
「ありがとうございます。一緒に治安維持組織に入れられた同じ立場の人達も人質の皆さんを心配していましたから。」
やはり他の人質も気になっていた様だ。
全員救出出来ればテルイゾラの事で悩む心配も無くなるだろう。
「人質を全員連れ出せば後は自然に裏の組織とやらは崩壊しそうですね。国外の実力者達を従え過ぎている様ですから。」
「そうだな、我らが手を下すまでも無いだろう。」
人質と言う枷が無くなれば実力者達は好きに暴れられる。
その結果テルイゾラと言う島が世界から消える事になるかもしれないが、それはその時になってみないと分からない。
「これなら明日までには帰れそうだな。」
「普通はこれ程の事を一日で終わらせるなんて不可能なのでしょうけどね。」
何週間、何ヶ月掛かっても不思議では無い。
ジル達の行動力あってこそ出来る事だ。
「ルルネットに早く帰ってこいと急かされているからな。帰る時間が一日伸びるだけで何を言われるか分からん。」
可愛い弟子の頼みくらいたまには聞いてやろうと思いながらテスラ達が帰ってくるのを酒場で待った。
「このゴールドカードは?」
「知人から預かってきた物だ。何かの役に立つかもしれないと言われてな。」
そう言う体にして渡した入行許可証はレイアが邪神教の女性と戦った時に落とした物だ。
これなら取り引きの証明にもなると考えた。
「あまり許可証の貸し出しは宜しくないのですが今回は目を瞑りましょう。それでは少しお借りしますね。」
魅了魔法に掛かっているからか、他者の入行許可証でもそこまでミーナは気にしていない。
上手く事が運びそうで助かった。
ミーナは何かの機会を取り出して受け取った入行許可証を入れる。
「それは何だ?」
「許可証のナンバーから取り引きした情報を読み取る魔法道具ですね。テルイゾラで商いをしている者に一定数配られています。」
特定の者だけが持つ事を許されている入行許可証専用の魔法道具らしい。
これを使えば過去の取り引き記録が分かる様だ。
「こ、これは!?」
機会に表示された記録を見てミーナが驚いている。
「どうした?」
「とんでもない取り引き額ではありませんか!?購入数こそ少ないですが卸している数が膨大です!」
邪神教の女性は相当テルイゾラのオークションを利用していたらしい。
さすがはゴールドカードである。
「つまりどうなるんだ?」
「この取り引き量であれば地下への招待も確実に話しがいっている筈です。その方からの紹介であれば私の権限でお通ししましょう。」
魅了魔法のおかげでゴールドカードの所有者と知り合いだと疑われる事無く話しが進んでいく。
ミーナ自らが権限を使ってくれる様だ。
「それは助かる。早速頼んでもいいか?」
「少しだけお時間をもらえますか?娼館に行って今日は任せると伝えてきますので。」
「分かった、ここで待っていよう。」
「はい、それでは一度失礼します。」
ミーナが一礼して酒場から出ていく。
それを見送ってからテスラが立ち上がる。
「ジル様、何かしらの要因で途中で魅了魔法が解除されないとも限りません。念の為後を追って見てきますね。」
「お供します。」
「悪いな、テスラ、ミネルヴァ。」
せっかく話しが上手く進んでいるのに魅了魔法が解けて面倒な事になっても困る。
保険として付いてくれるのは助かる。
「ジル様、上手くいきそうですね。」
「そうだな、だがやっと地下に入れるだけだ。まだ何も始まってはいない。フォルトゥナも地下には詳しくなさそうだからな。」
テルイゾラで治安維持を暫くしていたらしいが地下へ入った経験がフォルトゥナには無い。
ミーナが黒幕側か分からないので長期間拘束して案内してもらう訳にもいかず、自分達で探し回るしかない。
「ですが一度地下に入ってしまえば魔法が使用出来ます。そうなればジル様の独壇場でしょう。」
フォルトゥナは特に地下へ入ってからの事は心配していない。
ジルには空間把握の魔法があるので、それを使えば地下全体を調べる事も可能なのだ。
「まあ、空間把握が使えれば怪しい場所を直ぐに見つけられるだろうしな。」
「人質を救出したら即帰還しますか?」
「状況によるな。テルイゾラの裏の組織を壊滅させるのは面倒だから迷っているが人質は全員救出するつもりだ。フォルトゥナも気になるだろうからな。」
さすがにフォルトゥナの人質だけを助けて帰るなんて薄情な事は出来無い。
助けるならついでに全員連れ出すつもりだ。
「ありがとうございます。一緒に治安維持組織に入れられた同じ立場の人達も人質の皆さんを心配していましたから。」
やはり他の人質も気になっていた様だ。
全員救出出来ればテルイゾラの事で悩む心配も無くなるだろう。
「人質を全員連れ出せば後は自然に裏の組織とやらは崩壊しそうですね。国外の実力者達を従え過ぎている様ですから。」
「そうだな、我らが手を下すまでも無いだろう。」
人質と言う枷が無くなれば実力者達は好きに暴れられる。
その結果テルイゾラと言う島が世界から消える事になるかもしれないが、それはその時になってみないと分からない。
「これなら明日までには帰れそうだな。」
「普通はこれ程の事を一日で終わらせるなんて不可能なのでしょうけどね。」
何週間、何ヶ月掛かっても不思議では無い。
ジル達の行動力あってこそ出来る事だ。
「ルルネットに早く帰ってこいと急かされているからな。帰る時間が一日伸びるだけで何を言われるか分からん。」
可愛い弟子の頼みくらいたまには聞いてやろうと思いながらテスラ達が帰ってくるのを酒場で待った。
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