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77章

魔法生命体達と浮島防衛戦 7

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 連動外装を起動させて向かってくる天使達を殴って蹴って対応するタイプC。
実力的には大した事は無いが数が多くて難儀していた。

「タイプBやタイプDよりも向かってくる天使が多い気がしますね。私が後方支援だからでしょうか。」

 戦闘特化型の二人と違ってタイプCは支援型だ。
それでも一応戦闘も可能なので対処は出来ている。

「しかし聖痕持ちでは無い下っ端天使ばかり来ますね。これなら実戦で武器を試せる良い機会ですか。」

 タイプCが取り出したのは変幻自在の武具玉だ。
ジルから貰った勇者達が使っていた装備である。

「対多数は連動外装の装備にした方が効率良く倒せるでしょうね。大きさも自由自在なのは助かります。」

 タイプCは武具玉の形を変えて、自分の身長をも軽く上回る巨大剣にした。
それを連動外装の両手で持って、群がる天使達を両断して蹴散らしていく。

「俺様の駒を好き勝手に減らしてくれてるな。」

 巨大剣を振るって周りの天使達の数が減ってくると一人の天使が話し掛けてきた。

「話す天使族、上級か聖痕持ちですか?」

「こっちだ。」

 天使は手の甲にある聖痕を見せてくる。

「私では無く残りの二人に向かってほしいのですけどね。」

「あんな化け物達は願い下げだ。ゲイエル、レーエル、トラエルの三人が殺されるとは思わなかったぜ。報告する俺様の身にもなりやがれ。」

 天使は不機嫌そうに言う。
聖痕持ちであるナンバーズがこれだけやられるとは思っていなかった。
本国にいる他の天使達に相当文句を言われる事になるだろう。

「マスターに敵対すると言う行為がそもそも愚かなのです。これは当然の結果と言えます。」

「ライエルに乗せられたばっかりにな。まだ魔族潰しの方が良かったぜ。」

 魔族との戦争に参加せずにジルとその仲間の魔族を狩りにやってきた。
ライエルの口車に乗せられたばかりに大損害である。

「それなら撤退してはどうです?私の仲間達は知りませんが私は追い掛けませんよ?」

「追い掛けないのでは無く追い掛けられないんだろ?お前が一番戦闘能力が低そうだからな。」

 タイプBやタイプDの様な圧倒的な戦闘力がある訳では無い。
それをこの天使に見破られていた。

「一応後方支援が仕事ですからね。ですが全く戦えない訳ではありません。」

「ほう、それなら俺様とやりあってみるか?」

 そう天使が呟いて聖痕が輝くとタイプCの周りを他の天使達が取り囲んだ。

「一対一ではないのですか?」

「俺様の聖痕は統率だ。動かす駒がいるだけ俺も強くなるんでな。行け。」

 命令に従って天使達がタイプCに攻撃を仕掛ける。
連動外装や巨大剣で迎撃するが簡単には倒せない。
先程と違って避けられたり受け止められたりと明らかに個々の能力が上がっていた。

「どうだ俺様の力は?防ぐだけでも大変だろう?」

「その様ですね。」

 そう話しながらもこっそり連動外装の手を聖痕持ちの背後から襲い掛からせる。
聖痕の発動さえ阻止出来れば下っ端の天使達に遅れを取る事も無くなる。

「おっと、危ねえ。俺様の統率下にある天使共の相手をしながら攻撃を仕込んでくるとはやるな。」

 残念ながら直前で気付かれて片手で受け止められてしまった。
握り潰そうとするが聖痕持ちの天使の力も凄まじい。

「面倒な武器は潰しておくに限る。」

「連動外装を握り潰そうと?それは無駄な事…。」

 タイプCの台詞の途中で掴まれている連動外装からバキンと言う嫌な音が聞こえた。

「何か言ったか?」

 天使の手から連動外装の破片が溢れる。

「…連動外装を素手で。これは聖痕の力ですか?」

「察しがいいな。俺様の統率の聖痕は周囲にいる同族の能力値を底上げする。それと同時に聖痕を持つ俺様にも恩恵を齎すのだ。統率下にいる数に比例して俺様の力も上がるってな。」

 そう言って連動外装の手の崩れた部分に両手を入れて、それぞれ逆方向に力を加えて真っ二つに引き裂いた。
元魔王時代のジルが作った魔法武具であり、相当な強度を持つのだが、今は見るも無惨な姿になってしまった。

「味方だけで無く自己強化までする聖痕ですか。」

 話し通りであれば既に聖痕持ちの天使は手が付けられない状態になっており、統率下にいる天使達を排除して弱体化させなければこの天使には勝てないだろう。
連動外装を素手で破壊する様な者に対抗する手段がタイプCには無い。

「これが序列6位の俺様、リコエルの実力だ。」

「…何故そんな大物の相手が私なんですか。」

 話しに聞いていたライエルと言う天使よりも格上の相手と聞いてタイプCが溜め息を吐く。
だが相手が強いからと言って引く訳にはいかない。
直ぐ後ろには浮島の結界がある。

 連動外装を素手で破壊する様な天使なのでジルの断絶結界でも危ないかもしれない。
せめてタイプBかタイプDが援護に来るまでは耐えるつもりだ。
そこからリコエル達による猛攻撃が続いた。

「強化天使でも倒せないか。中々硬いなその装甲。」

 タイプCは攻める事を止めてリコエルや統率下の天使達の攻撃を防いで耐えるのに徹していた。
強化された天使達には攻撃を当てる事さえ難しくなったので、武具玉も盾に変えて自分の身を守る為に使っている。

「マスターから授かった大切な武器ですから。なので破壊した事は絶対に許しません。」

 時間経過で連動外装は修復されるのだが壊されたと言う事実は変わらない。
タイプCは静かに怒っていた。

「どう許さない?言っておくがあの二人なら強化した上級天使を数名送って時間稼ぎさせているから、まだまだやってくる事は無いぞ。」

 タイプBやタイプDに参戦されるとタイプCと共闘して強化天使を一気に減らされる可能性があるので、時間稼ぎの天使を送り込んで分断している。
この間にタイプCを攻め落とすつもりだ。

「そうですか、では他の新たな戦力に頼って貴方を殺してもらうとしましょうか。貴方の相手は私には荷が重い様ですから。」

 とある方向を見つめながらタイプCはそう呟いた。
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