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77章

魔法生命体達と浮島防衛戦 3

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 ゲイエルは背中に背負っていた槍を手に持って戦闘態勢をとる。

「馬鹿な人族だぜ。槍使いの俺にここまで接近してくるとはな。」

 まだタイプDとは距離があるが、既にここはゲイエルの間合いだ。

「色々と間違っていますけど問題はありません!私も夢現も神器級なんですから!」

「何を言ってるか分からんがさっさと終わらせてやるよ。お望み通りの聖痕の力でな!」

 ゲイエルの聖痕が輝くとゲイエルの身体全体が淡く光り、その直後にその場から消える。

「一閃突き!」

 タイプDの身体に風穴を空けたゲイエルがその背後に浮いていた。
正に一瞬の出来事であった。
超高速による槍の一撃でタイプDを貫いたのである。

「ふんっ、反応すら出来無いのは当然だ。俺の聖痕は疾風。目にも止まらない速さって奴だからな。」

 身体を貫かれてしまったタイプDに説明する様に呟く。
と言ってももう聞こえているかは分からない。

「さて、他にも同じ様な奴らが遠目に見えていた筈だ。俺がサクッと殺してしまうか。」

「タイプBとタイプCの事ですか?それなら私を倒してからにして下さいよ!」

「は?」

 聞こえる筈の無い声にゲイエルが間の抜けた声を漏らす。
そして背後を振り返ると、そこには無傷のタイプDが浮いていた。
貫いた筈の風穴は欠片も存在していない。

「お前、確かに俺の槍で貫いた筈…。」

「それは本当ですか?貴方の妄想では?」

 事実タイプDは全くの無傷だ。
身体をペタペタと触って無事な事を示す。

「有り得ない!俺の速度を初見で見切ったとでも言うのか!」

 ゲイエルは聖痕の力に自信がある。
同じナンバーズ達でもゲイエルの疾風の聖痕が発動すれば反応出来る者は限られてくる。
そんな速度を最初から見切れた者は少ない。

「目にも止まらない速さでしたっけ?あれくらいでそう言うのであれば、私の身の回りは目にも止まらない速さで溢れている事になってしまいますね!」

 タイプDが可笑しそうに笑って言う。
浮島の住人達は実力者ばかりなのでゲイエルレベルの速度の持ち主はそれなりにいるのだ。

「ふざけるなよ!今度こそ貫き殺す!」

 ゲイエルは再び槍を構えて聖痕を発動させる。
更に全身を魔装させて身体能力も上げる。

「テイルウインド!」

 ゲイエルは初級風魔法を使用する。
自分に対する追い風を起こして速度を高める魔法だ。
効果はそこまで高くは無いが聖痕と魔装によって大幅に高められたゲイエルの速度を更に高めてくれるとなれば使わない手は無い。

「色々と速度強化を頑張りますね!」

「笑ってられるのも今の内だ!一閃突貫!」

 先程よりも更に速く、まるで瞬間移動したかの様にゲイエルの槍の軌跡だけを残してタイプDを通過する。

「手応えありだ!今度こそ!」

 これはゲイエルが出せる速度で最速だ。
この攻撃を使って敵に避けられた事も無い。

「さっきよりすっごく速いですね!」

「なっ!?」

 振り向いてゲイエルは驚愕の表情となる。
今度こそ確実に貫いたと思っていたタイプDがまたもや平然とその場に浮いていたのだ。

「ば、馬鹿な!?不死身だとでも言うのか!?」

「不死身ですか?それはマスター…では無くて元魔王様の様な方を言うんです!あの方と私程度ではドラゴンとワイバーンですよ!」

 タイプBやタイプCなら謙遜して自分の事をゴブリン辺りと例えたかもしれない。
だがタイプDは謙遜しない。
自身の魔法は世界一と本気で思っている様な子なのだ。

「ゲイエルさんの攻撃は終わりましたか?それなら今度は私の番ですね!」

 嬉しそうに魔杖を構えてタイプDが言う。

「くっ!?お前らそこの女の逃げ場を無くす様に囲め!」

「大量の天使ですか!面白いです!」

 得体の知れないタイプDを全方位からいつでも攻撃出来る様に配置させる。
しかしタイプDは気にする事無く、この現状を楽しんでいる。

「確か初級、中級、上級、聖痕持ちと階級が分かれてるんでしたっけ?まあ、全部倒せば相手の強さなんて関係無いですよね!」

 タイプBやタイプCはマスターであるジルの浮島を攻めてきた天使達を殲滅すると言う目的で戦っているがタイプDは少し違う。
ただ久しぶりに全力の魔法を使いたい。
どこまでいってもタイプDはそう言う性格だ。

「突撃しろ!捨て身で殺せ!」

 ゲイエルの指示に従って周りの天使達が一斉にタイプDに突っ込む。

「同じ種族なのに酷い命令をしますね!ですが敵に情けは無用です!私の楽しみも減ってしまいますからね!」

 全力の魔法を放つのは決定事項だ。
手加減ではタイプD自身が楽しめない。

「ゲイエルさんも風魔法を使ってましたし、私も風魔法でいきましょうか!極級風魔法、ディバイントルネード!」

 地面から幾つもの大竜巻が発生する。
タイプD達がいる場所よりも更に上空へと伸びるとんでもなく大きさだ。
大竜巻周辺にいた天使達はその身を引き寄せられて次々に命を刈り取られていく。

「はあーん!久しぶりの極級魔法を放つ感覚、身体に染み渡ります~!」

 タイプDが恍惚とした表情で呟く。
久しぶりの極級魔法に快感を得ている様子だが、天使達にとっては災厄以外の何物でもない。

「さてさてゲイエルさん、貴方の部下達は私の魔法で揉みくちゃにされて使い物になりません!つまり聖痕持ちの貴方だけしか私の相手は務まらないのです!」

 ゲイエルにはわざと当たらない様に魔法の効果範囲から外してある。
有象無象の天使達と一緒に葬るなんて勿体無い事はしない。
聖痕持ちの強者との戦闘はもっと楽しみたいのだ。

「ちっ、化け物めが!」

 部下である天使達があっという間に殲滅されてしまった。
この化け物と戦えるのは自分しかいない。

「そんな相手に喧嘩を売ったのは貴方方なのですけどね!私としては思う存分魔法が使えるので感謝しているくらいなんですよ!」

「ライエルのクソ野郎が!とんだ貧乏くじだぜ!魔族との戦争の方がマシだったじゃないか!」

 得体の知れないタイプDを前に悪態を吐きつつ槍を構えるゲイエルだった。
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