632 / 736
74章
元魔王様とダンジョンマスター美咲 2
しおりを挟む
翌日、朝からジルは浮島に作られた温泉に浸かっていた。
「はぁ~、旅の疲労が癒える。」
身体を伸ばして溜まった疲労を湯に溶かす。
昨日は浮島の住人達に美咲と天ちゃんの紹介回りをした。
そしてジル達の帰還や新たな住人の歓迎を祝ってちょっとしたパーティーも開かれたので夜遅くまで騒いだ。
「レイアとテスラはまだ戻っていなかったな。天使を連れてきてしまったし、鉢合わせていきなり戦闘にでもなっても困るから事前に説明しておきたかったのだが。」
パンデモニウム島でレギオンハートに渡された邪神教の拠点の情報を元に二人は拠点潰しをしているが、まだ終わっていない様だ。
「まあ、誰かしらが説明するだろう。美咲も側にいるらしいしな。」
天ちゃんの事は美咲に任せる事にした。
常識人の美咲であれば天ちゃんの手綱を上手く握ってくれるだろう。
それに戦闘能力の無い美咲にとっては最高のボディーガードにもなるので、この組み合わせは崩したくない。
そんな事を考えながら久しぶりの浮島の温泉を堪能した。
前に温泉石を手に入れた町で買ってきた温泉のお供を出して楽しんでいたらかなり長湯してしまった。
通路に出ると丁度女湯の方からも美咲が出てきた。
「あ、ジルさん。」
「美咲も温泉に入っていたのか?」
「はい、シキさんに勧められたので。元の世界の温泉を知っている私に感想を求められまして。」
温泉石を使ったこの温泉宿はシキが設計を考えて完成させた。
なので現地人である美咲の感想を聞きたかったのだろう。
「それでどうだった?」
「さいっこうに気持ち良かったです!身体の調子がとてもいいですよ!」
そう言って美咲がぴょんぴょん飛び跳ねる。
浴衣で下着を着けていないのか胸元が暴れているが本人は気付いていない様だ。
「それは良かったな。美咲も浮島の住人になったのだから好きな時に利用するといい。」
「はい、嬉しいです!」
いつでもこの温泉宿を利用出来ると聞いて美咲は喜んでいる。
ジルに買われて良かったと改めて思った。
「今日は何をする予定なんだ?」
「昨日は案内してもらいつつ浮島を見て回ったんですけど、今日はやはりダンジョンですね。私にダンジョンマスターの素質があるからでしょうか、気になって気になって仕方無いんです。」
そう言って美咲がとある方向を見る。
一見すると壁を見ているだけにしか見えないが、その方向には浮島のダンジョンがある。
ダンジョンマスターになれる美咲はダンジョンを感じ取れるのかもしれない。
「ほう、そう言うものなのか。だが改めて確認しておく。ダンジョンマスターは危険なものだ。自らの命を危険に晒す事になるが本当にいいのか?今ならばまだ引き返せるぞ?」
ジルは特に強制するつもりは無い。
もし美咲がここで心変わりしても気長に探していくつもりだ。
「ここまでやってきてそんな事しませんよ。私はジルさんが保有するこの秘密の浮島のダンジョンマスターになるんです。少しでもお役に立って恩返しをさせて下さい。」
美咲の決心は揺るがない。
もう自分の中ではダンジョンマスターになると決めているのだ。
「分かった。浮島の者達にもお前の安全を優先するように我から言っておく。」
この決断をしてくれた美咲は絶対に守ると誓う。
ダンジョンコアの破壊なんて誰にもさせない。
「ありがとうございます。それでは天ちゃんを迎えにいってからダンジョンに行ってきますね。」
「我も見学していいか?」
誰かがダンジョンマスターになる瞬間なんてジルも立ち会った事は無いので気になる。
「え?それは勿論構いませんけど、ジルさんはお疲れではないんですか?」
「睡眠は取ったし温泉にも入ったからな。ダンジョン作りの見学でもしながらのんびり過ごすとしよう。」
「そうですか、ではダンジョン前で待ち合わせにしましょう。私は天ちゃんを起こしてきますね。」
「分かった。」
ジル達と違って天ちゃんはまだ眠っている様だ。
睡眠の聖痕持ちだからか、天ちゃんはよく寝ている。
「そう言えばミラに渡された手紙をまだ見ていなかったな。」
ジルは無限倉庫から昨日渡された手紙を取り出して開封する。
「差出人はユメノか。」
内容を見ると名前が書いてあって直ぐに誰から届いたのかが分かった。
王都のギルドで受付嬢をしているユメノである。
「成る程、提供者に付いては秘匿するからミスリル鉱石を買い取らせてほしいと。」
名前が書かれていなかったのは、王都のギルドからの手紙と言う事でセダンのギルド員達が騒がない様に配慮したのだろう。
引き抜きだろうと疑われて問い詰められても面倒なので助かる。
「相変わらずミスリル鉱石の需要が凄まじい様だな。ダナンもオークションでどんどん値段が上がると言っていたし。」
高純度と言うだけで普通のミスリルよりも市場価値がかなり高いのに需要はかなり多い。
オークションだけの供給では全く足りていない。
「まあ急ぎでないならダンジョン作りを見てからでもいいか。オークションと違って大量に売り払えそうだな。」
ジルは無限倉庫に仕舞われている山の様なミスリル鉱石を思いながら、得られるであろう莫大な金銭に思わず笑みが溢れた。
「はぁ~、旅の疲労が癒える。」
身体を伸ばして溜まった疲労を湯に溶かす。
昨日は浮島の住人達に美咲と天ちゃんの紹介回りをした。
そしてジル達の帰還や新たな住人の歓迎を祝ってちょっとしたパーティーも開かれたので夜遅くまで騒いだ。
「レイアとテスラはまだ戻っていなかったな。天使を連れてきてしまったし、鉢合わせていきなり戦闘にでもなっても困るから事前に説明しておきたかったのだが。」
パンデモニウム島でレギオンハートに渡された邪神教の拠点の情報を元に二人は拠点潰しをしているが、まだ終わっていない様だ。
「まあ、誰かしらが説明するだろう。美咲も側にいるらしいしな。」
天ちゃんの事は美咲に任せる事にした。
常識人の美咲であれば天ちゃんの手綱を上手く握ってくれるだろう。
それに戦闘能力の無い美咲にとっては最高のボディーガードにもなるので、この組み合わせは崩したくない。
そんな事を考えながら久しぶりの浮島の温泉を堪能した。
前に温泉石を手に入れた町で買ってきた温泉のお供を出して楽しんでいたらかなり長湯してしまった。
通路に出ると丁度女湯の方からも美咲が出てきた。
「あ、ジルさん。」
「美咲も温泉に入っていたのか?」
「はい、シキさんに勧められたので。元の世界の温泉を知っている私に感想を求められまして。」
温泉石を使ったこの温泉宿はシキが設計を考えて完成させた。
なので現地人である美咲の感想を聞きたかったのだろう。
「それでどうだった?」
「さいっこうに気持ち良かったです!身体の調子がとてもいいですよ!」
そう言って美咲がぴょんぴょん飛び跳ねる。
浴衣で下着を着けていないのか胸元が暴れているが本人は気付いていない様だ。
「それは良かったな。美咲も浮島の住人になったのだから好きな時に利用するといい。」
「はい、嬉しいです!」
いつでもこの温泉宿を利用出来ると聞いて美咲は喜んでいる。
ジルに買われて良かったと改めて思った。
「今日は何をする予定なんだ?」
「昨日は案内してもらいつつ浮島を見て回ったんですけど、今日はやはりダンジョンですね。私にダンジョンマスターの素質があるからでしょうか、気になって気になって仕方無いんです。」
そう言って美咲がとある方向を見る。
一見すると壁を見ているだけにしか見えないが、その方向には浮島のダンジョンがある。
ダンジョンマスターになれる美咲はダンジョンを感じ取れるのかもしれない。
「ほう、そう言うものなのか。だが改めて確認しておく。ダンジョンマスターは危険なものだ。自らの命を危険に晒す事になるが本当にいいのか?今ならばまだ引き返せるぞ?」
ジルは特に強制するつもりは無い。
もし美咲がここで心変わりしても気長に探していくつもりだ。
「ここまでやってきてそんな事しませんよ。私はジルさんが保有するこの秘密の浮島のダンジョンマスターになるんです。少しでもお役に立って恩返しをさせて下さい。」
美咲の決心は揺るがない。
もう自分の中ではダンジョンマスターになると決めているのだ。
「分かった。浮島の者達にもお前の安全を優先するように我から言っておく。」
この決断をしてくれた美咲は絶対に守ると誓う。
ダンジョンコアの破壊なんて誰にもさせない。
「ありがとうございます。それでは天ちゃんを迎えにいってからダンジョンに行ってきますね。」
「我も見学していいか?」
誰かがダンジョンマスターになる瞬間なんてジルも立ち会った事は無いので気になる。
「え?それは勿論構いませんけど、ジルさんはお疲れではないんですか?」
「睡眠は取ったし温泉にも入ったからな。ダンジョン作りの見学でもしながらのんびり過ごすとしよう。」
「そうですか、ではダンジョン前で待ち合わせにしましょう。私は天ちゃんを起こしてきますね。」
「分かった。」
ジル達と違って天ちゃんはまだ眠っている様だ。
睡眠の聖痕持ちだからか、天ちゃんはよく寝ている。
「そう言えばミラに渡された手紙をまだ見ていなかったな。」
ジルは無限倉庫から昨日渡された手紙を取り出して開封する。
「差出人はユメノか。」
内容を見ると名前が書いてあって直ぐに誰から届いたのかが分かった。
王都のギルドで受付嬢をしているユメノである。
「成る程、提供者に付いては秘匿するからミスリル鉱石を買い取らせてほしいと。」
名前が書かれていなかったのは、王都のギルドからの手紙と言う事でセダンのギルド員達が騒がない様に配慮したのだろう。
引き抜きだろうと疑われて問い詰められても面倒なので助かる。
「相変わらずミスリル鉱石の需要が凄まじい様だな。ダナンもオークションでどんどん値段が上がると言っていたし。」
高純度と言うだけで普通のミスリルよりも市場価値がかなり高いのに需要はかなり多い。
オークションだけの供給では全く足りていない。
「まあ急ぎでないならダンジョン作りを見てからでもいいか。オークションと違って大量に売り払えそうだな。」
ジルは無限倉庫に仕舞われている山の様なミスリル鉱石を思いながら、得られるであろう莫大な金銭に思わず笑みが溢れた。
13
お気に入りに追加
119
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる