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72章
元魔王様と観光デート 6
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ジルはリュシエルに連れられて街に出た。
最初にやってきたのはギルドだ。
「最初がここか?」
「はい、ジルにとっては馴染み深い場所ですよね。」
「ああ、どの街でも利用する場所だからな。今更見ても面白いところなんて無いぞ?」
依頼の受注、素材の売却、魔物の解体、酒場での食事と色々と利用する事が多いのでギルドは頻繁に訪れている。
「まあまあ、そう言わずに付き合って下さい。私は冒険者では無いのでジルが見慣れているギルドであっても新鮮なのです。」
最近まで屋敷に引きこもっていたリュシエルにとっては物珍しい場所なのだ。
冒険者と一緒でなければ訪れる機会も無いので、ジルの街案内に乗じてやってきた。
「仕方無い、今日はお嬢に付き合ってやるとしよう。」
今日はリュシエルに付き合うと決めているので二人で中に入った。
「ここがギルドなんでね。」
リュシエルが中を見回して楽しそうな声を上げる。
一応貴族の令嬢なので騒ぎにならない様にフードを付けて目立たない様にしてある。
「初めて来たのか?」
「冒険者と会う事はありましたけど、ギルドを訪れた事はありません。」
「ほう、貴族とは言え珍しいな。」
冒険者への指名依頼や高価な素材の取り引きで貴族も利用する事はある。
この歳になって初めて訪れる者は珍しいだろう。
「ジルさん、こんにちは。そちらは?」
ジルはシャルルメルトでも合間を見て納品依頼や魔物の解体依頼を出していた。
なので受付に来るとシャルルメルトの担当の様になっている受付嬢が覚えていて声を掛けてきた。
「初めまして、リュシエルと言います。」
「お忍びと言うやつだな。」
あまり騒がない様に受付嬢に言っておく。
「まあ、リュシエル様がギルドを訪れるなんて。何か特別な用事などでしょうか?」
貴族がやってきたと言うので何か大きな取り引きでもしたいのかと受付嬢は思った。
「いえいえ、もう直ぐシャルルメルトを発つジルに街案内をしているのですが、ギルドに来た事の無い私の為に最初寄らせてもらっているのです。」
「そうでしたか。リュシエル様にとっては新鮮かもしれませんが特に面白い物は無いと思いますよ。それでも宜しければどうぞごゆっくりなさって下さい。」
「はい、そうさせてもらいます。」
受付嬢に見送られてジル達は様々なランクの依頼書が貼ってあるボードへと移動する。
「これが依頼書ですか。」
「シャルルメルトは魔物が少ないから他のギルドに比べると随分と少ない方だな。」
魔の森が近いセダンであればここの依頼書の数倍以上はある。
それでも最近は結晶石の採掘依頼をギルドでも行っているので依頼書はそれなりにある。
「これで少ないのですか?他のギルドは盛り上がっているのですね。」
「だがシャルルメルトも最初に来た時より増えてきた方だぞ。大結晶石やベリッシ湖に関する依頼は最初の頃は無かったからな。」
最近発見された大結晶石や問題が解決されたベリッシ湖の依頼も早速張り出されている。
ギルドには情報が集まるので行動も早い。
「それではジル達に感謝しなければいけませんね。それらが増えてギルドが盛り上がったのにはジル達も関わっているのですから。」
「我らもやりたい様にやっているだけだけどな。」
成り行きでシャルルメルトが盛り上がったのならば良い。
これからはダンジョンも加わって更に活気付くだろう。
「あちらは酒場ですか?」
「ギルドの中には基本的に設置されているな。冒険者の打ち上げや簡易的な食事をするのに便利だ。」
「成る程。」
そちらを見てリュシエルが目を輝かせている様に見える。
「まさか食べたいのか?」
「そう見えるのであればそうなのでしょう。」
「別に構わないが一応公爵令嬢だろ?」
屋敷で出されている様な料理と比べると見た目も味付けも豪快だ。
上品な貴族令嬢が食べる事は想定されていない。
「一応ではありません。私は歴とした公爵令嬢です。」
「その公爵令嬢が酒場で食事したいなんて言うとはな。はっきり言うが屋敷で出される料理の方が豪華で美味いぞ?」
酒場の料理も普通に美味しいが、やはり貴族の食べ物と比べると多少劣る。
それでも直ぐに食べれて安いと言う利点もある。
「私はそう言った食事しか食べた事がありません。なのでとても興味を唆られるのです。」
屋敷での食事しか経験した事の無いリュシエルからすると一種の憧れがあるらしい。
「ふむ、ならば食べるか。」
「いいのですか?」
「丁度昼時だからな。我も何か食べたいと思っていたところだ。」
「では座りましょう!」
ウキウキで空いている席に向かうリュシエル。
ジルにとっては慣れ親しんだ場所での食事となった。
「これがメニューですか。自分で食べたい物を注文すると言うのがとても新鮮です。」
普段は料理長が栄養を考えて出してくれるので自分で注文する事は無い。
「シャルルメルトは食材が新鮮で酒場の料理であっても中々美味かったぞ。」
「それは領主の娘として嬉しいですね。ジルのお勧めはありますか?」
「串焼きかステーキだな。」
シャルルメルトの酒場のメニューは全制覇している。
その中でも特別美味しかったのはこの二つだ。
「どちらも重そうですね。では私は串焼きにします。」
「我は両方注文するとしよう。」
早速二人分の料理を注文すると数分で料理が到着する。
「これが領民の方が食べる食事なんですね。」
「言っておくが串焼きにナイフやフォークなんて無いからな。串を掴んでそのまま齧り付くんだ。」
「少し勇気がいりますね。」
これもリュシエルからすると初体験だが郷に入っては郷に従え、ジルの真似をして串を掴んで小さな口でぱくりと齧り付く。
「ん!塩のみの味付けですがとても美味しいですね!」
「酒場の店主が聞いたら喜びそうだな。」
二人は酒場の料理を暫く堪能してからギルドを後にした。
最初にやってきたのはギルドだ。
「最初がここか?」
「はい、ジルにとっては馴染み深い場所ですよね。」
「ああ、どの街でも利用する場所だからな。今更見ても面白いところなんて無いぞ?」
依頼の受注、素材の売却、魔物の解体、酒場での食事と色々と利用する事が多いのでギルドは頻繁に訪れている。
「まあまあ、そう言わずに付き合って下さい。私は冒険者では無いのでジルが見慣れているギルドであっても新鮮なのです。」
最近まで屋敷に引きこもっていたリュシエルにとっては物珍しい場所なのだ。
冒険者と一緒でなければ訪れる機会も無いので、ジルの街案内に乗じてやってきた。
「仕方無い、今日はお嬢に付き合ってやるとしよう。」
今日はリュシエルに付き合うと決めているので二人で中に入った。
「ここがギルドなんでね。」
リュシエルが中を見回して楽しそうな声を上げる。
一応貴族の令嬢なので騒ぎにならない様にフードを付けて目立たない様にしてある。
「初めて来たのか?」
「冒険者と会う事はありましたけど、ギルドを訪れた事はありません。」
「ほう、貴族とは言え珍しいな。」
冒険者への指名依頼や高価な素材の取り引きで貴族も利用する事はある。
この歳になって初めて訪れる者は珍しいだろう。
「ジルさん、こんにちは。そちらは?」
ジルはシャルルメルトでも合間を見て納品依頼や魔物の解体依頼を出していた。
なので受付に来るとシャルルメルトの担当の様になっている受付嬢が覚えていて声を掛けてきた。
「初めまして、リュシエルと言います。」
「お忍びと言うやつだな。」
あまり騒がない様に受付嬢に言っておく。
「まあ、リュシエル様がギルドを訪れるなんて。何か特別な用事などでしょうか?」
貴族がやってきたと言うので何か大きな取り引きでもしたいのかと受付嬢は思った。
「いえいえ、もう直ぐシャルルメルトを発つジルに街案内をしているのですが、ギルドに来た事の無い私の為に最初寄らせてもらっているのです。」
「そうでしたか。リュシエル様にとっては新鮮かもしれませんが特に面白い物は無いと思いますよ。それでも宜しければどうぞごゆっくりなさって下さい。」
「はい、そうさせてもらいます。」
受付嬢に見送られてジル達は様々なランクの依頼書が貼ってあるボードへと移動する。
「これが依頼書ですか。」
「シャルルメルトは魔物が少ないから他のギルドに比べると随分と少ない方だな。」
魔の森が近いセダンであればここの依頼書の数倍以上はある。
それでも最近は結晶石の採掘依頼をギルドでも行っているので依頼書はそれなりにある。
「これで少ないのですか?他のギルドは盛り上がっているのですね。」
「だがシャルルメルトも最初に来た時より増えてきた方だぞ。大結晶石やベリッシ湖に関する依頼は最初の頃は無かったからな。」
最近発見された大結晶石や問題が解決されたベリッシ湖の依頼も早速張り出されている。
ギルドには情報が集まるので行動も早い。
「それではジル達に感謝しなければいけませんね。それらが増えてギルドが盛り上がったのにはジル達も関わっているのですから。」
「我らもやりたい様にやっているだけだけどな。」
成り行きでシャルルメルトが盛り上がったのならば良い。
これからはダンジョンも加わって更に活気付くだろう。
「あちらは酒場ですか?」
「ギルドの中には基本的に設置されているな。冒険者の打ち上げや簡易的な食事をするのに便利だ。」
「成る程。」
そちらを見てリュシエルが目を輝かせている様に見える。
「まさか食べたいのか?」
「そう見えるのであればそうなのでしょう。」
「別に構わないが一応公爵令嬢だろ?」
屋敷で出されている様な料理と比べると見た目も味付けも豪快だ。
上品な貴族令嬢が食べる事は想定されていない。
「一応ではありません。私は歴とした公爵令嬢です。」
「その公爵令嬢が酒場で食事したいなんて言うとはな。はっきり言うが屋敷で出される料理の方が豪華で美味いぞ?」
酒場の料理も普通に美味しいが、やはり貴族の食べ物と比べると多少劣る。
それでも直ぐに食べれて安いと言う利点もある。
「私はそう言った食事しか食べた事がありません。なのでとても興味を唆られるのです。」
屋敷での食事しか経験した事の無いリュシエルからすると一種の憧れがあるらしい。
「ふむ、ならば食べるか。」
「いいのですか?」
「丁度昼時だからな。我も何か食べたいと思っていたところだ。」
「では座りましょう!」
ウキウキで空いている席に向かうリュシエル。
ジルにとっては慣れ親しんだ場所での食事となった。
「これがメニューですか。自分で食べたい物を注文すると言うのがとても新鮮です。」
普段は料理長が栄養を考えて出してくれるので自分で注文する事は無い。
「シャルルメルトは食材が新鮮で酒場の料理であっても中々美味かったぞ。」
「それは領主の娘として嬉しいですね。ジルのお勧めはありますか?」
「串焼きかステーキだな。」
シャルルメルトの酒場のメニューは全制覇している。
その中でも特別美味しかったのはこの二つだ。
「どちらも重そうですね。では私は串焼きにします。」
「我は両方注文するとしよう。」
早速二人分の料理を注文すると数分で料理が到着する。
「これが領民の方が食べる食事なんですね。」
「言っておくが串焼きにナイフやフォークなんて無いからな。串を掴んでそのまま齧り付くんだ。」
「少し勇気がいりますね。」
これもリュシエルからすると初体験だが郷に入っては郷に従え、ジルの真似をして串を掴んで小さな口でぱくりと齧り付く。
「ん!塩のみの味付けですがとても美味しいですね!」
「酒場の店主が聞いたら喜びそうだな。」
二人は酒場の料理を暫く堪能してからギルドを後にした。
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