575 / 736
67章
元魔王様とリュシエルに迫る魔の手 2
しおりを挟む
数分程待っているとリュシエルが戻ってきたが、その表情は一変していた。
明らかに疲労を感じているのが分かる。
「では休憩をしてから再会としよう。」
「ジル様、それは無いでしょう。」
「我は面倒事に首を突っ込みたく無い。」
ジルの発言にアンレローゼがジト目を向けてくるが明らかに何かあると分かっているので聞けば後戻り出来無い。
可能なら聞かないでおきたい。
「ジル、御免なさい。今日の午後はお休みでもいいでしょうか?」
「…はぁ、何があったのだ?」
リュシエルが無理矢理笑ってそう言ってくれば、さすがに聞かない訳にはいかない。
「聞いてくれるのですか?」
「我の訓練に支障が出る様な内容みたいだからな。」
このままでは訓練に影響が出そうだ。
一応ギルドを通した公爵からの指名依頼なので蔑ろには出来無い。
「隣国の名前は知っていますか?ベイルと言うのですが。」
「ベイルと言うと侵略国家ベイルの事か?」
ジルが魔王だった頃にもベイルと言う国はあった。
他国へ戦争を仕掛け続ける厄介な国として認識されていた。
「昔はそう呼ばれていましたが、今は国力の低下でその様な行いはしていません。」
戦争ばかりしていて自国が衰退していったらしい。
国のトップが戦闘狂だと国民は苦労する。
「そのベイルがどうした?」
「昔とある貴族のパーティーに出席した時です。私の事を好いて下さった方がいまして。」
「それがベイルの者と言う事か?」
「はい、ベイルの子爵家の当主であるブリオル様です。」
「子爵?当主とは言え随分と爵位に差があるんだな。」
シャルルメルト公爵家とブリオル子爵家、爵位が少し離れている者同士の婚約は珍しい。
それにシャルルメルト公爵家は子供がリュシエルしかいないらしく、婿養子に来てもらう必要がある。
本来であれば公爵家に並ぶ家格が求められる。
「ちなみにですがブリオル様は現在四十を過ぎておられます。そして側室を含め十以上も妻を持つ好色として知られています。」
付け加える様にアンレローゼが教えてくれる。
露骨に表情に出ている訳では無いが心良くは思っていなさそうだ。
「お嬢はどう考えているのだ?」
「私としては何度もお断りしています。お父様も国も違えば爵位も違い、歳も親子程も離れていて、更に好色の男になんて嫁がせたくはないと。」
一人娘を心配する親としてはそう思うのも納得だ。
そんな者に嫁がせても幸せにしてくれるかは分からない。
「ではそれで話しは終わりではないか?」
「ですが私を良く思わない方々はそれを受け入れさせたいのですよ。厄介なスキル持ちを隣国に引き渡せるのですから。」
「成る程な。」
万が一の脅威を恐れて危険なスキルを持つリュシエルを他国に追いやりたい。
そう思う者達はこの婚約を成功させたいと思うだろう。
「忌々しい事です。お嬢様をその様に扱う者達が。」
「あの様な好色子爵に嫁いでも良い未来は絶対に訪れません。」
騎士達が不愉快そうな表情を隠そうともせずに言う。
幼い頃から見守ってきたリュシエルにこれ以上不幸せな未来が訪れるのは納得出来無い。
「だが結局はお嬢と公爵家の判断だろう?公爵も否定的なら良かったではないか。」
親が味方なのであれば問題無さそうだ。
成功させたい者達に唆されて勝手に話しを進められる心配も無い。
「それがそうとも言えないのです。今日来た使いの方がブリオル様が色良い返事を待っている。返事次第では実力行使も辞さないと。」
「脅しではないか。隣国の一子爵がそんな事を言って国同士の争いに発展でもしたらどうするのだ?」
「そうはならないのですよ。対象が私なのですからね。」
そう自嘲気味にリュシエルが呟く。
誰も自分の為に力を貸してくれたりはしないと思っている様だ。
「王家に助けを求めればいいのではないか?我としては印象が良い方なのだが。」
実際に会ってみて中々話せる王族だと感じた。
エトワールなんて二度会っただけなのに随分と気安い関係を築けている。
「ただでさえ私のスキルのせいでご迷惑をお掛けしているのです。結婚の相談なんてとても出来ません。」
王家にもスキルの件で何度か迷惑を掛けているらしい。
この程度の事で王家を煩わせたくは無い。
「結局お嬢はどうしたいんだ?」
「私は…。」
「受ける必要なんてありません!私達が必ずお守りします!」
「そうです!国力の低下した今、子爵が保有する戦力なんてたかが知れています!」
騎士達がリュシエルは自分達が守ると宣言する。
好色子爵になんて渡す気は無い。
「「ジル様…。」」
「シキ、お前の言いたい事は分かっているから安心しろ。そしてアンレローゼ、お前は我の部下か何かか?同じ様に頼る視線を向けてくるな。我を巻き込んでおいて。」
シキの気持ちには応えるつもりだが同じ様な視線を向けてくるアンレローゼにはジト目をお返ししておく。
このメイドが巻き込んできたと言っても過言では無いのだ。
「一先ずお嬢がしたい様にしろ。一晩考えてみるといい。」
「そうします。失礼しますね。」
騎士達を引き連れてリュシエルは屋敷へと戻っていった。
明らかに疲労を感じているのが分かる。
「では休憩をしてから再会としよう。」
「ジル様、それは無いでしょう。」
「我は面倒事に首を突っ込みたく無い。」
ジルの発言にアンレローゼがジト目を向けてくるが明らかに何かあると分かっているので聞けば後戻り出来無い。
可能なら聞かないでおきたい。
「ジル、御免なさい。今日の午後はお休みでもいいでしょうか?」
「…はぁ、何があったのだ?」
リュシエルが無理矢理笑ってそう言ってくれば、さすがに聞かない訳にはいかない。
「聞いてくれるのですか?」
「我の訓練に支障が出る様な内容みたいだからな。」
このままでは訓練に影響が出そうだ。
一応ギルドを通した公爵からの指名依頼なので蔑ろには出来無い。
「隣国の名前は知っていますか?ベイルと言うのですが。」
「ベイルと言うと侵略国家ベイルの事か?」
ジルが魔王だった頃にもベイルと言う国はあった。
他国へ戦争を仕掛け続ける厄介な国として認識されていた。
「昔はそう呼ばれていましたが、今は国力の低下でその様な行いはしていません。」
戦争ばかりしていて自国が衰退していったらしい。
国のトップが戦闘狂だと国民は苦労する。
「そのベイルがどうした?」
「昔とある貴族のパーティーに出席した時です。私の事を好いて下さった方がいまして。」
「それがベイルの者と言う事か?」
「はい、ベイルの子爵家の当主であるブリオル様です。」
「子爵?当主とは言え随分と爵位に差があるんだな。」
シャルルメルト公爵家とブリオル子爵家、爵位が少し離れている者同士の婚約は珍しい。
それにシャルルメルト公爵家は子供がリュシエルしかいないらしく、婿養子に来てもらう必要がある。
本来であれば公爵家に並ぶ家格が求められる。
「ちなみにですがブリオル様は現在四十を過ぎておられます。そして側室を含め十以上も妻を持つ好色として知られています。」
付け加える様にアンレローゼが教えてくれる。
露骨に表情に出ている訳では無いが心良くは思っていなさそうだ。
「お嬢はどう考えているのだ?」
「私としては何度もお断りしています。お父様も国も違えば爵位も違い、歳も親子程も離れていて、更に好色の男になんて嫁がせたくはないと。」
一人娘を心配する親としてはそう思うのも納得だ。
そんな者に嫁がせても幸せにしてくれるかは分からない。
「ではそれで話しは終わりではないか?」
「ですが私を良く思わない方々はそれを受け入れさせたいのですよ。厄介なスキル持ちを隣国に引き渡せるのですから。」
「成る程な。」
万が一の脅威を恐れて危険なスキルを持つリュシエルを他国に追いやりたい。
そう思う者達はこの婚約を成功させたいと思うだろう。
「忌々しい事です。お嬢様をその様に扱う者達が。」
「あの様な好色子爵に嫁いでも良い未来は絶対に訪れません。」
騎士達が不愉快そうな表情を隠そうともせずに言う。
幼い頃から見守ってきたリュシエルにこれ以上不幸せな未来が訪れるのは納得出来無い。
「だが結局はお嬢と公爵家の判断だろう?公爵も否定的なら良かったではないか。」
親が味方なのであれば問題無さそうだ。
成功させたい者達に唆されて勝手に話しを進められる心配も無い。
「それがそうとも言えないのです。今日来た使いの方がブリオル様が色良い返事を待っている。返事次第では実力行使も辞さないと。」
「脅しではないか。隣国の一子爵がそんな事を言って国同士の争いに発展でもしたらどうするのだ?」
「そうはならないのですよ。対象が私なのですからね。」
そう自嘲気味にリュシエルが呟く。
誰も自分の為に力を貸してくれたりはしないと思っている様だ。
「王家に助けを求めればいいのではないか?我としては印象が良い方なのだが。」
実際に会ってみて中々話せる王族だと感じた。
エトワールなんて二度会っただけなのに随分と気安い関係を築けている。
「ただでさえ私のスキルのせいでご迷惑をお掛けしているのです。結婚の相談なんてとても出来ません。」
王家にもスキルの件で何度か迷惑を掛けているらしい。
この程度の事で王家を煩わせたくは無い。
「結局お嬢はどうしたいんだ?」
「私は…。」
「受ける必要なんてありません!私達が必ずお守りします!」
「そうです!国力の低下した今、子爵が保有する戦力なんてたかが知れています!」
騎士達がリュシエルは自分達が守ると宣言する。
好色子爵になんて渡す気は無い。
「「ジル様…。」」
「シキ、お前の言いたい事は分かっているから安心しろ。そしてアンレローゼ、お前は我の部下か何かか?同じ様に頼る視線を向けてくるな。我を巻き込んでおいて。」
シキの気持ちには応えるつもりだが同じ様な視線を向けてくるアンレローゼにはジト目をお返ししておく。
このメイドが巻き込んできたと言っても過言では無いのだ。
「一先ずお嬢がしたい様にしろ。一晩考えてみるといい。」
「そうします。失礼しますね。」
騎士達を引き連れてリュシエルは屋敷へと戻っていった。
15
お気に入りに追加
119
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる