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60章

元魔王様と浮島待機組の現状報告 8

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 そろそろ報告する内容も無くなってきただろうとジルが考えていると、一つ聞きたかった事を思い出した。

「そう言えばダンジョンコアの復元はどうなったのだ?」

 ジル達が王都に行っている間にバイセルの街のオークションに参加したと意思疎通による連絡が入った。
落札した後の進捗状況をまだ聞いていなかった。

「ジル様の協力もあってダンジョンコアの欠片を入手してダンジョンコアを作り出す事には成功したのです。」

 さすがは知識の精霊であるシキだ。
この世界には無い技術を習得して、しっかり再現出来ていた。

「ダンジョンコアは既に設置済みじゃ。ジル殿が結界を張っている浮遊石の近くじゃな。」

「成る程、ならばダンジョンコアにも簡単には破壊出来無い様に結界を展開しておくか。浮島の心臓とも言える浮遊石の守りと同じく手を抜くつもりは無い。」

 結界によって守られている状況であれば、異変があった時に直ぐに気付く事が出来る。
ジルの結界魔法なのでどちらも簡単に壊される心配は無い。
どちらも貴重な物なのでしっかりと守っておきたい。

「せっかく復元したのに壊れたら悲しいのです。安全な場所にダンジョンを作りたかったから助かるのです。」

 結界も多少は融通が効くので仲間だけが通れる様にする事も出来る。
完全に囲ってしまえば破壊されない限り部外者の侵入を許す事も無い。

「では早速ダンジョン探索といくか。トレンフルのダンジョン以来だしな。」

「残念ながら探索は出来ぬぞ。」

「ん?何故だ?」

 浮島に出来たダンジョンを見てみようかと思ったがナキナが無理だと言ってきた。

「ダンジョンコアを設置してダンジョンは出来ているのです。でも今は何も無いただの部屋なのです。」

「実際に見てもらった方が早いじゃろう。直ぐそこじゃしな。」

 そう言われてダンジョンコアが設置されている場所に移動する。
そこには祠の様な物が出来ていて、地下に続く階段がある。
そこを降りるとダンジョンコアを中心に何も無い部屋が広がっていた。

「本当に何も無いな。」

「一応ダンジョンなんじゃがな。」

「何故何も無いんだ?」

「簡単な理由なのです。ダンジョンを作るダンジョンマスターがいないからなのです。」

 このダンジョンにはダンジョンマスターがいない。
故にまだダンジョンとして不完全な状態だった。

「ダンジョンマスターか。確かダンジョンと運命を共にする者だったか?」

「そうなのです。普通ならダンジョンが生成されるのと同時にダンジョンを管理するダンジョンマスターも一緒に生まれるのです。でも今回のは自然に生成されるのとは違うのです。」

「生成では無く復元だからな。」

 ダンジョンコアの欠片からダンジョンコアを復元させる事には成功したが、そのダンジョンコアが壊れた時に消滅したダンジョンマスターは一緒に蘇らなかった様だ。

「一度壊れたダンジョンコアは、復元してもダンジョンマスターまでは戻らんと言う事じゃな。」

「つまりダンジョンマスターを見つけないといけない訳か。」

「はいなのです。それまではただの小さな部屋なのです。」

 ダンジョンマスター以外にダンジョンの内装を弄る事は出来無い。
なので今はこの状態から変わる事は無い。

「ダンジョンマスターになれる魔物はどう見分けるんだ?」

「ジル様の万能鑑定ならダンジョンマスターになれると表示される筈なのです。人物鑑定系のスキルで名前と一緒に表示されると前に聞いた事があるのです。」

「それならば我にも見つけられそうだな。」

 前世から万能鑑定は持っているがそう言った表記は目にした事が無い。
四六時中スキルを使っている訳でも無いので単純に見つけられていないと言うのもあるが、それなりにダンジョンマスターになれる者は珍しいのかもしれない。

「ちなみにダンジョンマスターになれるのは魔物だけでは無いのです。人種にも可能性はあるのです。」

「ほう、それは初耳だな。」

 前世から様々なダンジョンを訪れたが魔物のダンジョンマスター以外は見た事が無かった。

「ダンジョンは魔力の濃い場所だから生成される時に魔物が一緒にダンジョンマスターとして生み出される仕組みなのです。人種が一から作られる事は無いのです。」

 ダンジョンの中が魔物が生まれる条件を満たしているからこそ、ダンジョンマスターに最初に選ばれるのは魔物だけだった。

「でもダンジョンが栄える世界ではダンジョンマスターの資格を持っている者が普通にダンジョンを運営しているらしいのです。ダンジョンコアを復元させる事で新たなマスターとして登録出来るって書いてたのです。」

 ダンジョンコアの復元はダンジョンマスターを別の者が変われると言う利点がある。
自分が思い描くダンジョンを自由に作れるとなれば、ダンジョンマスターになりたいと思う者もそれなりにいるらしい。

「ならば魔物か人種でダンジョンマスターを探せば言い訳だな?」

「そうなるのです。でもこれは気長に探すとするのです。」

「簡単には見つからないだろうしな。それにダンジョンと共に死ぬ可能性がある以上、マスター候補の了承を得る必要もある。当然破壊なんて事は我がさせないがな。」

 もしダンジョンマスター候補が見つかった時には万全の守りを約束する事とした。
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