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59章

元魔王様とスライムテイム 2

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 ジル達一行はトゥーリが王都で話し聞いたと言うスライムで賑わっている村に到着した。
馬車の中から見ても村には多くの観光客がいるのが分かる。
冒険者、騎士、商人、研究者と様々だ。

「これだけいると泊まれるところは無さそうだな。」

 大きくない村なので宿屋の類いも無い。
村人が住む小さな家が十数件あるくらいだ。

「いつも通り馬車内で構わないさ。急な訪問だし貴族だからと言って権力を振り翳したくもないからね。」

「一先ず滞在する事は伝えておきましょうか。」

「トゥーリ様、私が行ってきます。」

「頼むね。」

 エレノラが村に滞在する旨を伝えにいくと、直ぐに一人の老人を連れて戻ってきた。

「トゥーリ様、村長が是非一言挨拶をと参られました。」

「トゥーリ伯爵様、ようこそおいで下さいました。何も無い村ですがどうぞゆっくりしていって下さい。」

 村長が深々と頭を下げながら言う。
それを見た周りの村人達や観光客達も貴族が来たと理解して頭を下げる。

「わざわざすまないね。セダンへの帰り道でスライムを見に寄らせてもらったよ。突然の訪問だからあまり気にしなくていいからね。」

「分かりました。最近は皆その目的で訪れてきますので、村も少しばかり賑わってきて助かっています。」

 観光客が増えたおかげで村の収入にも繋がっている様だ。

「村長ー!少し宜しいですか?」

「呼ばれているみたいだよ。私の事はいいから対応してあげてくれ。」

「申し訳ありません、それでは失礼致します。」

 観光客が多いので村長も引っ張りだこだ。
トゥーリが気にしなくていいと言うと頭を下げて他の者の対応へと向かっていった。

「それじゃあ早速スライムについて情報を集めようか。希少なスライムってのも気になるし。」

「村人なら情報を持っているかもな。」

「テイムに行く前に軽く聞き込みをしましょう。」

 この村がスライムで賑わってから時間は経っている。
これなら様々な情報を村人達も持っているだろう。

「それじゃあシズルとエレノラは馬とハニービーを頼めるかい?」

「「お任せ下さい。」」

「ホッコもハニービー達と遊んでいるの!」

「分かった。何か危険があれば守ってやるんだぞ?」

「了解なの!」

 三人が馬車の方に向かっていった。
ジル達も村の中を手分けして情報を得る事にする。

「兄ちゃん兄ちゃん。」

「ん?我か?」

 誰から情報を得ようかと考えていると突然子供に呼び止められた。

「そうだよ、外から来た兄ちゃん。饅頭はいらないかい?」

 そう言って木箱の中を指差す。
そこにはびっしりと饅頭が敷き詰められていた。

「スライム饅頭か、スライムの素材でも使ってるのか?」

「そんな不味そうなの使わないよ。スライムの形をしてるからスライム饅頭なんだよ。」

 どうやら見た目通り普通の饅頭の様だ。
スライム人気にあやかってそう言う名前にしているのだろう。

「そうだったか。それを買ってほしいのか?」

「うん、あまり売れ行きがよくなくてさ。」

「こんなに観光客がいるのにか?」

 見渡す限り村の外からやってきた観光客ばかりで村人よりも圧倒的に多い。

「皆スライムが目当てで来てるからね。繁盛してるのは捕獲道具を売ってる道具屋、武器防具の修繕をする鍛冶屋、スライムの素材を売買する素材屋とかだよ。」

 確かに村の中で行列が出来ている場所を見るとそう言ったスライムに関わる店ばかりだ。
飲食もそれなりに売れてはいるが、客足の数は段違いだ。

「成る程な。スライムに付いての情報を教えてくれるなら買ってもいいぞ。」

「情報?」

「ここの村人なら客の会話を聞く事も多いだろう?どんなスライムがいたかとかな。」

 情報の対価として饅頭を買ってやればお互いに損はしない。

「そんな事でいいの?」

「そんな事でいいんだ。」

「分かった、知ってるだけのスライムの種類と出現場所について教えるよ。」

 子供であってもそれなりの情報は持っていそうだ。

「よし、交渉成立だな。売りたいだけ我によこせ、全て買ってやろう。」

「えっ!?幾らでもいいの!?」

「ああ、構わないぞ。」

 驚いているがそれも当然だろう。
子供が売っている饅頭の在庫は相当な数であり、全て売れればとんでもない数になる。
全部一人で食べ切るのは難しい量だ。

「でも饅頭が無駄になっちゃうよ。そんな勿体無い事は出来無いよ。」

「安心しろ。我は収納系のスキル持ちだ。収納した物の時間経過も無いから同じ状態でずっと保存しておける。」

 なので全ての饅頭を買い取っても問題は無い。
食べたい時に食べたい量だけ取り出す事が可能なのだ。

「収納系のスキル!?兄ちゃん、凄いんだな!」

 その後少年の差し出した分だけスライム饅頭を購入してお金を払ってやった。
少年はジルにとても感謝して、スライムについての情報を教えてくれた。
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