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56章

元魔王様と魅了で敵対 5

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 ミスリル鉱石を含めた納品物を渡し終えたジルとユメノは受付に戻ってくる。

「まさかあのミスリル鉱石に出会えるとは思いませんでした。あれはどこの工房も欲しがると思うのでとても助かります。」

 ユメノが満足そうな笑顔で言う。
売るだけでなく交渉にも使えそうなミスリル鉱石なので重宝する事間違い無しだ。
ジルがそんな物を持っているなんて知らなかったので嬉しい誤算である。

「そんな良い鉱石を譲った我に良さげな依頼を紹介してもらいたいな。」

「え?依頼ですか?まだ受けるんですか?」

 納品依頼をかなりの数消化してくれたジルには大金が入る筈だ。
これ以上依頼を受けるとは思わなかった。

「当然だ、まだ今日と言う時間が余っているからな。納品依頼以外にも受けて報酬を得たいところだ。」

 ここで帰っても特にやる事が無いのでどうせなら身入りの良い依頼を受けてから帰りたい。
ダンジョンコアの欠片と言う素材は滅多に出回らないのでどれくらいの額まで上がるか分からない為、資金は多く確保しておくに越した事は無い。

「そんなにお金が必要って一体何を買うんですか?」

「詮索はいいから依頼を紹介してくれ。」

「依頼ですか、当然高ランクの方がいいんですよね?」

「報酬は高ければ高い程いい。」

 キュールネの冒険者カードで普段受けられない高ランクの依頼が普通に受けられるのであれば、報酬が段違いに高い高ランクの依頼を受けたい。

「うーん、依頼ボードに貼り出されている物でもいいんですけど、何か良い依頼があったかどうか。」

 引き出しから何枚かの依頼書を取り出して受付に広げる。

「それも依頼書か?」

「ボードにこれから貼る依頼や急ぎでは無い依頼等ですね。」

 まだ貼られる前なので冒険者の知らない依頼書となる。
依頼ボードの捌け具合や納期を見て受付嬢が貼り出すのだ。

「ならば既に貼り出されているものにそれも含めて高額な報酬の依頼を頼む。」

「何でもいいんですか?」

「場所が分かっている討伐依頼が手っ取り早くて助かるな。その場所も王都近辺であれば望ましい。」

 日帰りで終わらせたいので遠い場所は困る。
キュールネがいるので魔法による爆速移動も使用出来無いので王都近辺だと有り難い。

「注文が多いですね…。そんな都合の良い依頼は…あったかもしれません。」

 依頼書の中から一つを掴んで持ち上げる。

「お、どんな依頼だ?」

「これです。場所は王都近郊の街道付近。討伐対象はおそらくインプですね。」

「おそらく?」

「まだ確定情報ではないんですよ。それらしい姿をその場所で目撃したと言う話しがギルドに持ち込まれただけなんです。」

 そう言って依頼書を渡してくる。
依頼書は調査依頼となっているが、討伐しても構わないらしい。
どちらでも依頼達成となるが討伐の方が当然報酬が高い。

「ならば実際にはいない可能性もあるか。」

「冒険者からの情報なので可能性は高いと思うんですけどね。もし本当であればあまり放置は出来ませんし。」

「インプは仲間を呼び寄せる習性があるからな。」

 放置すれば仲間を呼び寄せて対処が厄介になってしまう。
そうなる前に片付けたい魔物だ。

「それに魔法が得意な魔物ですからね。ある程度の力量を持った方でないと向かわせられません。本当は高ランクの冒険者の手が空いたら指名依頼を出す予定だったんです。」

「そんなに警戒する程か?」

 ジルにとってはそんなに警戒する魔物ではないと言う印象だ。
インプは多少魔法が使えるくらいの魔物と言う認識である。

「数が分かりませんからね。既に仲間を呼び寄せていた場合、囲まれて魔法の集中砲火を浴びる様な事になってしまうかもしれません。」

 単独ならばそんなに脅威では無くても集まれば厄介になる。
同ランクの冒険者では対処が難しいだろうとのギルドの判断だ。

「確かに多いと厄介かもな。報酬は数が多ければその分増える感じか?」

「その予定です。ですがインプがいるかの街道調査、早期解決への協力と言う事で多少色を付けておきますよ。ミスリル鉱石の事もありますし。」

 まだ貼り出される前だったのでユメノの方で多少報酬を上乗せしてくれるらしい。
ミスリル鉱石の存在がとても効いている様だ。

「さすがに話しが分かるな。よし、インプ討伐の依頼を受けるとしよう。」

「分かりました、ジルさんなら大丈夫だとは思いますけどお気を付けて。」

 ユメノに依頼書を処理してもらって、酒場にいるホッコとキュールネを連れてインプがいるかもしれないと言う街道を目指した。
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