471 / 693
55章
元魔王様と従魔の成長 4
しおりを挟む
演習場に到着するとあちこちで騎士や冒険者が模擬戦をしていた。
黒フード達と戦える様にする為の訓練と言う事もあり、騎士団のやる気がとても高い。
王族もこの件に本気で取り組む姿勢の様だ。
「ソート副団長、少し宜しいでしょうか?」
「ユメノ殿、何でしょうか?」
ユメノが話し掛けたのは冒険者と戦っている騎士達を見ながら指導している女性の騎士だ。
「こちらの方も追加で訓練に加わって下さる冒険者さんです。ランクは低いのですが実力は…。」
「ジル殿ではないですか!?」
「あれ?お知り合いでした?」
ユメノが言い終わる前にソートがジルを見て驚きながら言う。
「そう言われてみると見覚えがあるな。確かトレンフルのダンジョンで出会った騎士だったか?」
「覚えて頂けているとは光栄です。その節は大変お世話になりました。」
「気にするな。」
ソートとはトレンフルのダンジョンで出会っていた。
エトワールに万能薬を譲った時に一緒に行動していた者の一人だ。
「お知り合いなら話しは早いですね。ジルさんとホッコさんも訓練に加えて頂きたいのです。」
「ジル殿が高い実力をお持ちなのは知っています。我々としては有り難い限りですが宜しいのですか?」
「我もホッコを騎士と戦わせて鍛える目的があるからな。代わりに騎士の方は我が鍛えてやろう。」
騎士と戦える経験は滅多に無い。
ホッコにとって良い刺激になる筈だ。
「それは有り難い申し出です。騎士団の数名は今いる冒険者では少し実力に開きがあり、指導に徹していましたので。」
ユメノの前なのでソートが申し訳無さそうに言う。
「高ランク冒険者が参加しているのではなかったのか?」
「最高でもBランクまでですね。Aランクの方々は都合が合わなかったり、別の依頼を受けていたりと参加者はいないんです。ジルさんの知る美酒の宴の皆さんも依頼中でした。」
どうやら王都の実力者は皆出払っているらしい。
高ランク冒険者は指名依頼も多いので多忙なのだ。
「成る程な。では騎士団員の実力者達は我が相手をしてやろう。」
ジルとしても相手が実力者であるのに越した事は無い。
新人騎士の相手をさせられても一瞬で勝負が決まってしまう。
「ジル殿が相手ですか。ギルドに設置してある不死の魔法道具に感謝しなければいけませんね。」
演習場には全力で訓練出来る様に死者を出さない魔法道具が設置されている。
それが無ければ相手を殺す程の全力を発揮しての訓練なんて出来無い。
「その代わりにホッコの相手も見繕ってくれよ?」
「宜しくなの!」
騎士と戦えるのでワクワクした表情でホッコが頭を下げる。
「お任せ下さい。どのくらいの強さを希望されますか?」
「そうだな、手始めにCランク冒険者クラスの騎士を頼む。」
「畏まりました。少しお待ち下さい。」
ソートがジルの希望に合う騎士に声を掛けに向かう。
「それではジルさん、私も受付があるので戻りますね。」
「ああ、助かったぞ。」
ユメノが受付に戻って直ぐにソートも一人の騎士を連れて戻ってきた。
「お待たせ致しました。」
「宜しくお願いします。」
騎士がホッコに礼をして言う。
まだ若い騎士であり少し緊張している様だ。
「宜しくなの!早速戦うの!」
「実戦形式で頼むぞ。」
「分かりました。」
ホッコが空いているスペースに向かって元気良く走っていく。
「それでは早速我らもやるか。」
「そうして下さると助かります。見学しながらの指導ばかりで身体を殆ど動かしていないので。」
周りの騎士や冒険者は結構汗をかいたり息切れをしたりしているがソートは会った時からずっと涼しい顔をしている。
訓練が始まってから殆ど動いていないのだろう。
「同じ様な騎士は他にどれくらいいる?」
「あちらで見学している者達が私と同じ立場ですね。」
ソートと同じ様に騎士達に指示を飛ばしている者達がいる。
「全員で五人か。それくらいなら我が纏めて相手をしてやろう。」
「分かりました、それではこちらへ。」
ジルの言葉に特に文句を言う事も無くソートが案内してくれる。
それが平気で行える実力者だと言う事は度々耳にするジルに関する情報で把握していた。
「団長、少し宜しいでしょうか?」
後を付いていくと一番高価な装備に身を包む騎士にソートが尋ねた。
どうやら王国騎士団の団長らしい。
「ソートか。どうかしたか?」
「こちらのジルさんが我々の相手を引き受けて下さいました。」
「おおお!貴殿は夜会で闘姫と共に我々の主を守ってくれた冒険者か!その節は世話になった。」
騎士団長はジルの事を知っていた。
どうやらエトワールの生誕祭の時に現場にいて、賊達と戦っているジルを目撃したらしく、深々と頭を下げながらお礼を言われた。
「あの時にいたのか。」
「ああ、我々よりも遥かに強い冒険者だ。とてもよく印象に残っている。そんな冒険者が引き受けてくれるとは有り難い話しだ。」
「そうか?ならば早速やるか。」
団長もやる気になっているのでジルも模擬戦を始める事にした。
黒フード達と戦える様にする為の訓練と言う事もあり、騎士団のやる気がとても高い。
王族もこの件に本気で取り組む姿勢の様だ。
「ソート副団長、少し宜しいでしょうか?」
「ユメノ殿、何でしょうか?」
ユメノが話し掛けたのは冒険者と戦っている騎士達を見ながら指導している女性の騎士だ。
「こちらの方も追加で訓練に加わって下さる冒険者さんです。ランクは低いのですが実力は…。」
「ジル殿ではないですか!?」
「あれ?お知り合いでした?」
ユメノが言い終わる前にソートがジルを見て驚きながら言う。
「そう言われてみると見覚えがあるな。確かトレンフルのダンジョンで出会った騎士だったか?」
「覚えて頂けているとは光栄です。その節は大変お世話になりました。」
「気にするな。」
ソートとはトレンフルのダンジョンで出会っていた。
エトワールに万能薬を譲った時に一緒に行動していた者の一人だ。
「お知り合いなら話しは早いですね。ジルさんとホッコさんも訓練に加えて頂きたいのです。」
「ジル殿が高い実力をお持ちなのは知っています。我々としては有り難い限りですが宜しいのですか?」
「我もホッコを騎士と戦わせて鍛える目的があるからな。代わりに騎士の方は我が鍛えてやろう。」
騎士と戦える経験は滅多に無い。
ホッコにとって良い刺激になる筈だ。
「それは有り難い申し出です。騎士団の数名は今いる冒険者では少し実力に開きがあり、指導に徹していましたので。」
ユメノの前なのでソートが申し訳無さそうに言う。
「高ランク冒険者が参加しているのではなかったのか?」
「最高でもBランクまでですね。Aランクの方々は都合が合わなかったり、別の依頼を受けていたりと参加者はいないんです。ジルさんの知る美酒の宴の皆さんも依頼中でした。」
どうやら王都の実力者は皆出払っているらしい。
高ランク冒険者は指名依頼も多いので多忙なのだ。
「成る程な。では騎士団員の実力者達は我が相手をしてやろう。」
ジルとしても相手が実力者であるのに越した事は無い。
新人騎士の相手をさせられても一瞬で勝負が決まってしまう。
「ジル殿が相手ですか。ギルドに設置してある不死の魔法道具に感謝しなければいけませんね。」
演習場には全力で訓練出来る様に死者を出さない魔法道具が設置されている。
それが無ければ相手を殺す程の全力を発揮しての訓練なんて出来無い。
「その代わりにホッコの相手も見繕ってくれよ?」
「宜しくなの!」
騎士と戦えるのでワクワクした表情でホッコが頭を下げる。
「お任せ下さい。どのくらいの強さを希望されますか?」
「そうだな、手始めにCランク冒険者クラスの騎士を頼む。」
「畏まりました。少しお待ち下さい。」
ソートがジルの希望に合う騎士に声を掛けに向かう。
「それではジルさん、私も受付があるので戻りますね。」
「ああ、助かったぞ。」
ユメノが受付に戻って直ぐにソートも一人の騎士を連れて戻ってきた。
「お待たせ致しました。」
「宜しくお願いします。」
騎士がホッコに礼をして言う。
まだ若い騎士であり少し緊張している様だ。
「宜しくなの!早速戦うの!」
「実戦形式で頼むぞ。」
「分かりました。」
ホッコが空いているスペースに向かって元気良く走っていく。
「それでは早速我らもやるか。」
「そうして下さると助かります。見学しながらの指導ばかりで身体を殆ど動かしていないので。」
周りの騎士や冒険者は結構汗をかいたり息切れをしたりしているがソートは会った時からずっと涼しい顔をしている。
訓練が始まってから殆ど動いていないのだろう。
「同じ様な騎士は他にどれくらいいる?」
「あちらで見学している者達が私と同じ立場ですね。」
ソートと同じ様に騎士達に指示を飛ばしている者達がいる。
「全員で五人か。それくらいなら我が纏めて相手をしてやろう。」
「分かりました、それではこちらへ。」
ジルの言葉に特に文句を言う事も無くソートが案内してくれる。
それが平気で行える実力者だと言う事は度々耳にするジルに関する情報で把握していた。
「団長、少し宜しいでしょうか?」
後を付いていくと一番高価な装備に身を包む騎士にソートが尋ねた。
どうやら王国騎士団の団長らしい。
「ソートか。どうかしたか?」
「こちらのジルさんが我々の相手を引き受けて下さいました。」
「おおお!貴殿は夜会で闘姫と共に我々の主を守ってくれた冒険者か!その節は世話になった。」
騎士団長はジルの事を知っていた。
どうやらエトワールの生誕祭の時に現場にいて、賊達と戦っているジルを目撃したらしく、深々と頭を下げながらお礼を言われた。
「あの時にいたのか。」
「ああ、我々よりも遥かに強い冒険者だ。とてもよく印象に残っている。そんな冒険者が引き受けてくれるとは有り難い話しだ。」
「そうか?ならば早速やるか。」
団長もやる気になっているのでジルも模擬戦を始める事にした。
27
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる