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55章
元魔王様と従魔の成長 3
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ギルドにやってきた二人は演習場に向かう。
「あれ?ジルさん?」
「ユメノか。受付にいないのは珍しいな。」
「一応素材の査定も出来るんです。なのでそちらが忙しい時は手伝う事もあるので倉庫に行ってました。」
受付が忙しくなるのは朝と夜なので昼前後は暇になる為、ユメノが駆り出されていたらしい。
「そんな事よりもギルドにいらしたと言う事は依頼ですか!」
「残念ながら違うな。」
「そうですか。」
ジルが依頼を受けるのかと期待した表情を浮かべていたが、今日の目的が依頼ではないと知って残念そうにしている。
「それにもう直ぐセダンに帰るから依頼も受ける事は無いだろう。」
定期的な依頼は行っていたのでミラにも文句は言われないだろう。
「そう言えばジルさんは王都の冒険者では無かったんでした。あー、優秀な冒険者が流れていってしまう。」
ジルがセダンに帰ってしまうと聞いてユメノが悲しそうに呟く。
「我以外にも高ランクの冒険者なんて大勢いるだろう?」
「それは王都ですから当然いますけど、ジルさんはその中でも頭三つくらい抜けてますよ。短い王都滞在中に孤児達が暫く裕福に暮らせる報酬を支払ったり、滞ってた常設依頼の原因を排除してくれたり、教会の値段改正まで関わったと聞きましたよ?普通の冒険者の出来る範囲を超えています。」
確かに王都に来てから色々とやったが全て自分がしたい様にやった結果だ。
そのおかげで美味しい肉や蜂蜜が大量に手に入り、ホッコも三つ目の適性を得られたのだ。
「まあ、王都にとってプラスの出来事ばかりなのだから良かったじゃないか。」
「それはそうですね。だからこそこのまま居着いてほしいのですが。」
ユメノとしてはそれ程周りに良い影響を与えてくれるジルの様な冒険者が近くにいてくれるのは有り難い。
出来れば王都に住んでほしいと思っている。
「悪いが住み慣れた街の方が過ごしやすいのでな。それに仲間達を残してきている。」
「それでは仕方無いですよね。ご縁があっただけでも良かったと思っておきます。」
無理に住まわせるつもりもないので出会いがあっただけで良しとしておく。
どうしても頼りたくなった時は指名依頼と言う手もある。
と言ってもDランクのジルが受けるかは分からない。
「ちなみに依頼ではないのでしたら何をしにギルドへ?」
「少し演習場にな。」
「演習場ですか?これ以上強くなる必要性は感じませんが。」
今でもジルは冒険者の中で突出した実力を持っている。
これ以上の強さが必要なのかとユメノが首を傾げる。
「我では無い。ホッコの訓練だ。」
「新しい魔法を試しにきたの!」
「成る程、そうでしたか。ですが今演習場は王国の騎士団で貸し切り状態でして、スペースはあまり無いのです。」
「貸し切り?」
演習場が既に大人数で使われていてホッコの訓練が難しいと言う。
「なんでも王国の騎士団を更に強くする必要があるのだとか。噂ですと強化薬と言う非合法な薬を扱う組織がいるらしく、その組織に対抗する為の強化訓練らしいですよ。」
ユメノが周りを気にしながら後半を小声で伝えてくれる。
そんなに広まっている話しでは無いが実力のある冒険者には多少情報を流して、騎士と同じく戦力になってもらいたいと考えているのだろう。
「では演習場は使えないのか。」
「残念なの。」
対人戦を経験したかったホッコが残念そうに呟く。
「いえ、ジルさんがとある条件をのんで下されば使用出来ますよ。」
「条件?」
「騎士団はギルドに高ランクの冒険者を訓練相手として用意してほしいと言ってきているのです。なのでジルさんも騎士団を相手に少し戦っていただけるのでしたらホッコちゃんも騎士団員と訓練させてもらえると思います。」
ジルはDランクで高ランクでは無いが、その実力は高ランク冒険者達を軽く凌駕する。
そんなジルなら騎士団もかなり良い訓練相手となるので、ホッコの訓練相手くらい用意してくれるだろうとの事だ。
「成る程、王国の騎士団員を相手に訓練出来るのはホッコにとっては悪くないな。」
「強い騎士と戦ってみたいの!」
国に仕える騎士は相応の実力を求められるのでホッコにも良い刺激になる筈だ。
本人もとてもやる気である。
「ならば我が一肌脱いでやろう。騎士の相手を引き受けよう。」
「本当ですか!助かります!引き受けてくれる高ランクの冒険者が少なくて困っていたんです。」
ジルの言葉を聞いてユメノが嬉しそうに言う。
「あまり受けている者がいないのか?」
「ギルドから報酬は出るんですけどあまり高くはないので。王国の騎士団を相手にするよりも依頼を受けた方が圧倒的に稼ぎがいいんです。」
冒険者は人よりも魔物を相手にする事の方が圧倒的に多い職業だ。
実力者との訓練は経験にはなるが、冒険者ならば依頼を優先する者も多いだろう。
「まあ、今回は金銭が目的では無いからな。王国の騎士を相手に魔法の訓練を出来るのだから我らには都合の良い話しだ。」
「楽しみなの!」
「では早速演習場に向かいましょう。」
ユメノに案内されながら二人は演習場に向かった。
「あれ?ジルさん?」
「ユメノか。受付にいないのは珍しいな。」
「一応素材の査定も出来るんです。なのでそちらが忙しい時は手伝う事もあるので倉庫に行ってました。」
受付が忙しくなるのは朝と夜なので昼前後は暇になる為、ユメノが駆り出されていたらしい。
「そんな事よりもギルドにいらしたと言う事は依頼ですか!」
「残念ながら違うな。」
「そうですか。」
ジルが依頼を受けるのかと期待した表情を浮かべていたが、今日の目的が依頼ではないと知って残念そうにしている。
「それにもう直ぐセダンに帰るから依頼も受ける事は無いだろう。」
定期的な依頼は行っていたのでミラにも文句は言われないだろう。
「そう言えばジルさんは王都の冒険者では無かったんでした。あー、優秀な冒険者が流れていってしまう。」
ジルがセダンに帰ってしまうと聞いてユメノが悲しそうに呟く。
「我以外にも高ランクの冒険者なんて大勢いるだろう?」
「それは王都ですから当然いますけど、ジルさんはその中でも頭三つくらい抜けてますよ。短い王都滞在中に孤児達が暫く裕福に暮らせる報酬を支払ったり、滞ってた常設依頼の原因を排除してくれたり、教会の値段改正まで関わったと聞きましたよ?普通の冒険者の出来る範囲を超えています。」
確かに王都に来てから色々とやったが全て自分がしたい様にやった結果だ。
そのおかげで美味しい肉や蜂蜜が大量に手に入り、ホッコも三つ目の適性を得られたのだ。
「まあ、王都にとってプラスの出来事ばかりなのだから良かったじゃないか。」
「それはそうですね。だからこそこのまま居着いてほしいのですが。」
ユメノとしてはそれ程周りに良い影響を与えてくれるジルの様な冒険者が近くにいてくれるのは有り難い。
出来れば王都に住んでほしいと思っている。
「悪いが住み慣れた街の方が過ごしやすいのでな。それに仲間達を残してきている。」
「それでは仕方無いですよね。ご縁があっただけでも良かったと思っておきます。」
無理に住まわせるつもりもないので出会いがあっただけで良しとしておく。
どうしても頼りたくなった時は指名依頼と言う手もある。
と言ってもDランクのジルが受けるかは分からない。
「ちなみに依頼ではないのでしたら何をしにギルドへ?」
「少し演習場にな。」
「演習場ですか?これ以上強くなる必要性は感じませんが。」
今でもジルは冒険者の中で突出した実力を持っている。
これ以上の強さが必要なのかとユメノが首を傾げる。
「我では無い。ホッコの訓練だ。」
「新しい魔法を試しにきたの!」
「成る程、そうでしたか。ですが今演習場は王国の騎士団で貸し切り状態でして、スペースはあまり無いのです。」
「貸し切り?」
演習場が既に大人数で使われていてホッコの訓練が難しいと言う。
「なんでも王国の騎士団を更に強くする必要があるのだとか。噂ですと強化薬と言う非合法な薬を扱う組織がいるらしく、その組織に対抗する為の強化訓練らしいですよ。」
ユメノが周りを気にしながら後半を小声で伝えてくれる。
そんなに広まっている話しでは無いが実力のある冒険者には多少情報を流して、騎士と同じく戦力になってもらいたいと考えているのだろう。
「では演習場は使えないのか。」
「残念なの。」
対人戦を経験したかったホッコが残念そうに呟く。
「いえ、ジルさんがとある条件をのんで下されば使用出来ますよ。」
「条件?」
「騎士団はギルドに高ランクの冒険者を訓練相手として用意してほしいと言ってきているのです。なのでジルさんも騎士団を相手に少し戦っていただけるのでしたらホッコちゃんも騎士団員と訓練させてもらえると思います。」
ジルはDランクで高ランクでは無いが、その実力は高ランク冒険者達を軽く凌駕する。
そんなジルなら騎士団もかなり良い訓練相手となるので、ホッコの訓練相手くらい用意してくれるだろうとの事だ。
「成る程、王国の騎士団員を相手に訓練出来るのはホッコにとっては悪くないな。」
「強い騎士と戦ってみたいの!」
国に仕える騎士は相応の実力を求められるのでホッコにも良い刺激になる筈だ。
本人もとてもやる気である。
「ならば我が一肌脱いでやろう。騎士の相手を引き受けよう。」
「本当ですか!助かります!引き受けてくれる高ランクの冒険者が少なくて困っていたんです。」
ジルの言葉を聞いてユメノが嬉しそうに言う。
「あまり受けている者がいないのか?」
「ギルドから報酬は出るんですけどあまり高くはないので。王国の騎士団を相手にするよりも依頼を受けた方が圧倒的に稼ぎがいいんです。」
冒険者は人よりも魔物を相手にする事の方が圧倒的に多い職業だ。
実力者との訓練は経験にはなるが、冒険者ならば依頼を優先する者も多いだろう。
「まあ、今回は金銭が目的では無いからな。王国の騎士を相手に魔法の訓練を出来るのだから我らには都合の良い話しだ。」
「楽しみなの!」
「では早速演習場に向かいましょう。」
ユメノに案内されながら二人は演習場に向かった。
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