【毎日更新】元魔王様の2度目の人生

ゆーとちん

文字の大きさ
上 下
448 / 739
52章

元魔王様と王城襲撃 7

しおりを挟む
 城内に入ると騎士や貴族の護衛が多くの賊を縛り上げて連行していくところだった。
これから一人一人に尋問を行ったり、犯罪奴隷にしたりと大忙しとなるだろう。

 襲撃騒ぎがあったので生誕祭は急遽解散となり、招待客は王族に挨拶を済ませた者から徐々に帰っていく。
そんな中王族達と共に帰る者を見送っているジル達はまだ帰る事が出来無い。

見送りが終わった後、ステリアルと別れてジル達は豪華な応接室に招かれる。
王族とジル達の他にはトレンフルのダンジョンで見たエトワールの付き人達や数名の騎士がいるだけだ。

「それでは情報を整理しようか。ラブリート殿の尋問のおかげで敵を送り込んできたのが伯父上である事は分かった。」

「兄上め、ついにやってくれたな。」

「王の座を奪われたとずっと憎まれていましたからね。」

 エトワールの言葉に国王が溜め息を吐き王妃が悲しそうに呟く。
身内の暴走を止められず犯罪者を生み出してしまったのは少なからず王族にも責任がある。
犯罪者としてしっかり自らの手で罰してくれるだろう。

「でもお祖父様は慧眼でしたね。こんな事をする人を王にしていたらこの国は直ぐに滅びてしまうわ。」

「この国の王としても容赦するつもりは無い。」

 親族ではあるが今回の王城襲撃を行った者を王族達は許すつもりは無い。
誰もが既に罰するべき敵と認識している。

「まあ、それは王族同士で対処してちょうだい。武力が必要になったら協力はしてあげるわ。」

「感謝する。」

 ラブリートの言葉に国王が頭を下げる。
国家戦力のラブリートがいるだけでどんな相手とでも戦える。
相手が戦力を整えてきて戦争になっても安心である。

「それとデレム公爵ですが争いに紛れて姿をくらませました。周辺を捜索したのですが姿は見つけられませんでした。」

 トゥーリが王族達に報告する。
騒ぎがある程度収まった後にラブリートと共に城周りを見回ったのだが首謀者は見つからなかった。
後で聞いた話しだが今回の騒動を起こした国王の兄と言うのがデレムと言う名前の公爵らしい。

「そうか、ご苦労だったなトゥーリ伯爵。後はこちらで引き受けよう。」

 国王が軽く目配せすると待機していた騎士達が部屋を出ていく。
これからデレム公爵を探す大規模な捜索が行われるのだろう。

「ステファニア王女の方はどうだったのかしら?」

 城内の制圧をしていたラブリート達は野外の様子を知らないので尋ねる。

「リア姉様とお話ししていたところを急に襲われました。騎士の皆さんが守ってくれましたが、段々と劣勢になってしまってもう駄目かと。」

 先程は本当に死を覚悟した。
それだけ自分を殺そうとしている者達が強かった。

「その時にジルちゃんが駆け付けてくれた訳ね?」

「はい、格好良かったです!」

 ラブリートの質問にステファニアが嬉しそうに答える。
あと少し遅かったら自分の命は無かったかもしれないので、駆け付けてくれたジルが心の底から格好良く思えた。

「ジルに頼んで正解だったな。」

「親として礼を言わせてくれ。」

 後々その事を知った国王が改めて礼を言ってくる。
他の王族達も国王に続いて頭を下げる。
ステファニアを守ってくれた事に家族として心から感謝していた。

「エトが報酬をくれるから気にしなくていいぞ。」

「はっはっは、後で必ず用意しよう。」

 エトワールが上機嫌に言う。
しっかりと仕事を果たしてくれたジルには相応の報酬を渡すつもりだ。

「他にはガーデンエリアで何もなかったのかい?」

「我は賊と戦闘をしたくらいだからな。…そういえば賊が怪しい薬を使っていたな。」

 トゥーリの質問に先程の事を思い出して答える。
その中で気になった物と言えばあの非合法な薬だ。

「薬?」

「万能薬に似た丸薬の様な物だ。服用すると寿命を削る代わりに自信を大幅に強化出来るらしいぞ。」

 賊の言っていた事をそのまま伝える。
真実かは分からないが尋常では無い強化だったので、かなりの副作用があるのは間違い無いだろう。

「まさか強化薬か!?」

 ジルの言葉を聞いた国王が驚愕している。

「強化薬?」

「ああ、数年前から稀に出回っている悪質な薬だ。使用者が死ぬ代わりに周りに甚大な被害を及ぼす。」

 どうやら王族も薬の存在は把握している様だ。
先程の賊以外でも何度か使用されているのが目撃されており、その度に周りにかなりの被害を出していたらしい。

「出所は掴んでいるのですか?」

「服用者では無いが正体不明の集団が度々その現場で目撃されている。我々は影と呼んでいる。」

「分かっている共通点はその者達が事くらいだ。他は殆ど詳細が分っていない。」

 国王の言った者達に心当たりしかないジルだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

嘘つきレイラ

織部
ファンタジー
1文800文字程度。通勤、通学のお供にどうぞ。 双子のように、育った幼馴染の俺、リドリーとレイラ王女。彼女は、6歳になり異世界転生者だといい、9歳になり、彼女の母親の死と共に、俺を遠ざけた。 「この風景見たことが無い?」 王国の継承順位が事件とともに上がっていく彼女の先にあるものとは…… ※カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しております。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...