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52章
元魔王様と王城襲撃 2
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会場で目を光らせるキュールネの隣りで美味しいフルーツを食べていると、ついに動きがあった。
「っ!?メイドがエトワール殿下と接触を!…飲み物を取っただけですか。」
王族達も招待客と交流する為に席を立っていて、その中には今日の主役であるエトワールも含まれる。
手に持っていたグラスが空いてしまったので、飲み物のお代わりをメイドが持つトレイの上から取る。
そのメイドが魅了されているとジルが教えたメイドだったのでキュールネが一瞬警戒したのだが、飲み物を受け取って直ぐに二人共その場を離れる。
それを見て何も無かったと判断した様だ。
「普通なら気付けないのだろうな。」
「え?ジル様?」
突然フルーツが乗った皿を渡されたキュールネが首を傾げている。
そしてジルはその場から勢い良く飛び出す。
正に今新しいグラスに口を付けようとしているエトワール目掛けて。
そしてエトワールが口を付ける直前にグラスを手で軽く払い除ける。
突然そんな事をされたのでエトワールの手からグラスが離れてしまい、中身を撒き散らしながら床に落ちて割れてしまう。
「突然どうし…。」
「貴様!自分が何をしたか分かっているのか!」
「エトワール殿下に対してなんという無礼を!王国騎士よ、この無礼者を捕えよ!」
エトワールはジルの姿を確認すると驚きながらも理由を尋ねようとした。
しかしその声は周りの高位貴族達の声によって掻き消されてしまい、無礼を働いたジルを捕える様にと大声が響く。
近くにいなかった王族の騎士や各貴族の護衛や世話係がジルを警戒する様に主人の前に立つ。
側から見ればエトワールの持つグラスを叩き落とした平民の冒険者としか映らないので仕方が無いだろう。
「ジル様…何をして…。」
Aランク冒険者クラスの実力を持つキュールネでもジルの行動が理解出来ずに青い顔をしている。
だがそれも仕方が無い事だ。
特定のスキルや魔法道具、人外の動体視力や危機察知を持たなければ今回の事には気付け無かったのだから。
ジルの周りを貴族が呼び寄せた騎士達が取り囲む。
武器は携帯していないが王国の騎士にまでなった者達ならば無手でもそれなりに戦えるだろう。
「お前達下がれ。」
驚きから復帰したエトワールが周りを囲む者達に向けて言う。
「し、しかしこの者は。」
「私の言葉が聞けないのか?」
エトワールの言葉に従ってジルを取り囲んでいた騎士達が下がっていく。
さすがに戦闘を覚悟していたのだがエトワールの言葉で無くなった。
「エトワール殿下!この冒険者の無礼を見過ごすのですか!」
「先ずは理由を聞いてからだ。平民を問答無用で罰する様な傲慢な権力者では無いつもりだからな。」
エトワールがそう口にすると周囲の貴族達は黙ってしまった。
ここでこれ以上騒げば王族に自分はそう言う人物だとアピールしているようなものだ。
「それでジル、突然どうしたのだ?」
「グラスを受け取る直前に毒物を入れられるのが見えてな。めでたい祝いの日に死にたくは無いだろう?」
それを聞いて周囲の者達が驚いている。
手の中に隠した瞬時に液体に溶ける毒物をグラスの中に入れる瞬間をジルは見ていた。
その後に万能鑑定で受け取ったグラスの中身を鑑定までしているので間違い無い。
「まさかそんな…。」
「はっ!」
「おっと、急に忙しいな。」
エトワールが話している最中にその背後から一人の騎士が収納系のスキルか魔法道具で武器を取り出して斬り掛かってくるのが見えた。
ジルは一瞬でエトワールの背後に移動して剣先を指二本で挟んで受け止める。
「なっ!?」
騎士は確実にエトワールを殺せるタイミングだったので、防がれた事に驚愕している。
中々力が強い様だがジルに比べると遥かに劣るので、ピクリとも動かせない事に更に驚いている。
「お、お前エトワール殿下に何をしている!?」
「喧しい!」
「ぐはっ!?」
騎士の主人と思われる者が足で蹴られて吹き飛んでいく。
ジルに剣先を掴まれていてバランスの悪い体勢と言うのもあり、威力が出なかったのか主人は咳き込んでいるだけで大した怪我は負っていない。
「これは一体…。」
「随分と人気者だなエトよ。だが敵対者くらいは招かない様に注意した方がいいと思うぞ?」
「そんな事は分かっているし行っていた筈だ!」
そんなやり取りをしている間にもジルとエトワールを取り囲む様に様々な者達が武器を取り出して構え始める。
さすがに収納系スキルや魔法道具を持つ者まで警戒するのは無理であった。
「エト、目的は分からないが王族狙いだ。お前だけがターゲットかは分からないぞ。」
「っ!?騎士達よ、私に構わず非戦闘力の護衛に付きながら賊を討て!」
エトワールは瞬時に状況を判断して近くにいた自分の信頼出来る護衛の騎士達に指示を出す。
この会場には有力者が多い分、それだけ戦えない者も多い。
「し、しかしエトワール殿下の護衛が。」
「心強い冒険者がいるから問題無い!それに私もそれなりに戦える!私よりも他の王族や貴族を守ってくれ!」
「わ、分かりました!」
騎士達はエトワールの言葉に従って王家の者達や会場にいる貴族達の護衛の為に散っていく。
「さてジルよ、すまないが助力を願うぞ。」
「我を雇うと高くつくぞ?」
「ふっ、この状況を切り抜けられるなら幾らでも支払ってやる。」
ジルの本音か冗談か分からない言葉にエトワールが爽やかな笑顔で答える。
本当にそれだけの財力を持っているので問題無いのだろう。
ジルは気前の良い雇い主を背にしながら目の前にいる敵を見て笑った。
「っ!?メイドがエトワール殿下と接触を!…飲み物を取っただけですか。」
王族達も招待客と交流する為に席を立っていて、その中には今日の主役であるエトワールも含まれる。
手に持っていたグラスが空いてしまったので、飲み物のお代わりをメイドが持つトレイの上から取る。
そのメイドが魅了されているとジルが教えたメイドだったのでキュールネが一瞬警戒したのだが、飲み物を受け取って直ぐに二人共その場を離れる。
それを見て何も無かったと判断した様だ。
「普通なら気付けないのだろうな。」
「え?ジル様?」
突然フルーツが乗った皿を渡されたキュールネが首を傾げている。
そしてジルはその場から勢い良く飛び出す。
正に今新しいグラスに口を付けようとしているエトワール目掛けて。
そしてエトワールが口を付ける直前にグラスを手で軽く払い除ける。
突然そんな事をされたのでエトワールの手からグラスが離れてしまい、中身を撒き散らしながら床に落ちて割れてしまう。
「突然どうし…。」
「貴様!自分が何をしたか分かっているのか!」
「エトワール殿下に対してなんという無礼を!王国騎士よ、この無礼者を捕えよ!」
エトワールはジルの姿を確認すると驚きながらも理由を尋ねようとした。
しかしその声は周りの高位貴族達の声によって掻き消されてしまい、無礼を働いたジルを捕える様にと大声が響く。
近くにいなかった王族の騎士や各貴族の護衛や世話係がジルを警戒する様に主人の前に立つ。
側から見ればエトワールの持つグラスを叩き落とした平民の冒険者としか映らないので仕方が無いだろう。
「ジル様…何をして…。」
Aランク冒険者クラスの実力を持つキュールネでもジルの行動が理解出来ずに青い顔をしている。
だがそれも仕方が無い事だ。
特定のスキルや魔法道具、人外の動体視力や危機察知を持たなければ今回の事には気付け無かったのだから。
ジルの周りを貴族が呼び寄せた騎士達が取り囲む。
武器は携帯していないが王国の騎士にまでなった者達ならば無手でもそれなりに戦えるだろう。
「お前達下がれ。」
驚きから復帰したエトワールが周りを囲む者達に向けて言う。
「し、しかしこの者は。」
「私の言葉が聞けないのか?」
エトワールの言葉に従ってジルを取り囲んでいた騎士達が下がっていく。
さすがに戦闘を覚悟していたのだがエトワールの言葉で無くなった。
「エトワール殿下!この冒険者の無礼を見過ごすのですか!」
「先ずは理由を聞いてからだ。平民を問答無用で罰する様な傲慢な権力者では無いつもりだからな。」
エトワールがそう口にすると周囲の貴族達は黙ってしまった。
ここでこれ以上騒げば王族に自分はそう言う人物だとアピールしているようなものだ。
「それでジル、突然どうしたのだ?」
「グラスを受け取る直前に毒物を入れられるのが見えてな。めでたい祝いの日に死にたくは無いだろう?」
それを聞いて周囲の者達が驚いている。
手の中に隠した瞬時に液体に溶ける毒物をグラスの中に入れる瞬間をジルは見ていた。
その後に万能鑑定で受け取ったグラスの中身を鑑定までしているので間違い無い。
「まさかそんな…。」
「はっ!」
「おっと、急に忙しいな。」
エトワールが話している最中にその背後から一人の騎士が収納系のスキルか魔法道具で武器を取り出して斬り掛かってくるのが見えた。
ジルは一瞬でエトワールの背後に移動して剣先を指二本で挟んで受け止める。
「なっ!?」
騎士は確実にエトワールを殺せるタイミングだったので、防がれた事に驚愕している。
中々力が強い様だがジルに比べると遥かに劣るので、ピクリとも動かせない事に更に驚いている。
「お、お前エトワール殿下に何をしている!?」
「喧しい!」
「ぐはっ!?」
騎士の主人と思われる者が足で蹴られて吹き飛んでいく。
ジルに剣先を掴まれていてバランスの悪い体勢と言うのもあり、威力が出なかったのか主人は咳き込んでいるだけで大した怪我は負っていない。
「これは一体…。」
「随分と人気者だなエトよ。だが敵対者くらいは招かない様に注意した方がいいと思うぞ?」
「そんな事は分かっているし行っていた筈だ!」
そんなやり取りをしている間にもジルとエトワールを取り囲む様に様々な者達が武器を取り出して構え始める。
さすがに収納系スキルや魔法道具を持つ者まで警戒するのは無理であった。
「エト、目的は分からないが王族狙いだ。お前だけがターゲットかは分からないぞ。」
「っ!?騎士達よ、私に構わず非戦闘力の護衛に付きながら賊を討て!」
エトワールは瞬時に状況を判断して近くにいた自分の信頼出来る護衛の騎士達に指示を出す。
この会場には有力者が多い分、それだけ戦えない者も多い。
「し、しかしエトワール殿下の護衛が。」
「心強い冒険者がいるから問題無い!それに私もそれなりに戦える!私よりも他の王族や貴族を守ってくれ!」
「わ、分かりました!」
騎士達はエトワールの言葉に従って王家の者達や会場にいる貴族達の護衛の為に散っていく。
「さてジルよ、すまないが助力を願うぞ。」
「我を雇うと高くつくぞ?」
「ふっ、この状況を切り抜けられるなら幾らでも支払ってやる。」
ジルの本音か冗談か分からない言葉にエトワールが爽やかな笑顔で答える。
本当にそれだけの財力を持っているので問題無いのだろう。
ジルは気前の良い雇い主を背にしながら目の前にいる敵を見て笑った。
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