409 / 693
48章
元魔王様と強制睡眠 4
しおりを挟む
セダンの街を出発してからの道中は平和そのものであった。
大きなトラブルも無く順調に王都を目指して進んでいく。
「ちょっとジル君、だらけ過ぎじゃないかな?一応私の護衛なんだよ?」
広い馬車の中で寝転んでいるジルに向かってトゥーリが言う。
とても護衛とは思えない姿勢であり、外を警戒しているのかも怪しい。
「そう言われても平和そのもので出番なんて無いではないか。護衛の仕事が無いのだから仕方無いだろう?」
「それはそうなんだけど。」
「ジルちゃんと一緒だから退屈しないと思っていたのに当てが外れたわね。」
ラブリートも暇そうにしている。
盗賊どころか魔物との戦闘も殆ど無くて護衛であるジルとラブリートは暇を持て余していた。
一応寝転んでいながらも警戒はしているので護衛の仕事はしている。
「まあ、力量差の分かる魔物ならそもそも近付いてはこないだろうからな。」
ジルやラブリートは冒険者の中でもトップクラスの実力者である。
高ランクの魔物であればその強さを感じ取って自然と離れていく。
なので襲ってくるのは低ランクの魔物が多くなるのだが、馬車での移動なのでそもそも速度的に追い付けない魔物も多い。
そう言った魔物に一々構っていてはキリが無いので、追い掛けてくる魔物だけを相手にしている為戦闘回数が少ないのだ。
「来るとしたら盗賊くらいかしら?」
「そうだな、こんな化け物に挑もうとする奴の気が知れん。」
「ほんとよね、ランク詐欺もいいところだわ。」
お互いがお互いの事を見て言い合う。
どちらもこんな相手に挑む盗賊が可哀想だと口にしている。
「一般的な目線から言わせてもらうと君達どっちも化け物だけどね。」
その様子を見てトゥーリが呆れながら言う。
その言葉にキュールネもこくこくと頷いている。
どんぐりの背比べと言ったところだ。
「それにしても本当に退屈ね。快適なのは良いけれど、このままじゃ1月後には王都に着いちゃうんじゃないかしら?」
「何だと?」
ラブリートの呟いた言葉にジルが反応する。
「このまま順調に進めばそうなるだろうね。」
「おい、エトの生誕祭はいつ頃だ?」
詳しい日にちまでは把握していなかった。
生誕祭についてはトゥーリが知っているので付いていくだけでいいと認識していたからだ。
「だいたい1月半後くらいだったかしら?」
「それなのに後1カ月で着くだと?早く出発し過ぎだろう。」
順調に進めば生誕祭まで2週間も王都で暇を持て余す事になる。
そんなに早く出発しているとは思わなかった。
「そんな事を言われても順調に進める保証なんて無いんだから仕方無いよ。万が一遅れたら貴族としての私の立場が崩れるんだから、これでも普通なんだよ?」
トゥーリとしてはそれくらいの時間の余裕を持つのは当然であった。
ジルの意見も分からなくはないが、余裕を持たずに遅れましたでは話しにならないのである。
数週間早く到着するくらいが丁度良い。
「さすがに心配性過ぎるのではないか?」
「まあまあ、王都なんて頻繁に訪れないんだしいいじゃない。四六時中トゥーリちゃんの護衛をしていろって訳でも無いんだから。」
ラブリートは早く到着する事に肯定的だ。
その時間を使って王都を満喫するつもりなのかもしれない。
「無事に送り届けてくれたら自由時間は設けるつもりだよ。その間は王都を観光したり、やりたい事をするといいさ。」
「まあ、暇潰しの材料があるならいいんだけどな。」
王都に訪れる機会もそんなに無いので、観光時間を貰えるのであれば納得しておく。
国の中心部ともなればセダンとは違ってジルが興味を持つ物も少なからずあるだろう。
「まあ、それも順調に進んでいければの話しだしね。」
「そろそろジルちゃんがトラブルを引き寄せてくれるかもしれないし。」
「ふっ、今回ばかりは…。」
ジルが否定しようとしたところで馬車がガタンと揺れる。
そして少し進んだ後に馬車は完全に停止した。
先程馬を休ませたばかりであり休憩では無いので、何かあったと考えるのが普通だ。
「トゥーリ様、急に止まってしまい申し訳ありません。進行方向に人が倒れていまして、盗賊かどうか確認して参ります。」
「分かったよ、気を付けてね。」
御者台から降りてきたシズルが馬車の扉を開けて報告してきた。
トゥーリが許可を出すと倒れている人に駆け寄っていく。
「今回ばかりは何かしら?」
「…はぁ。」
ジルはまたいつもの流れかと思いつつも、面倒事に発展しないでくれと心の中で祈る事しか出来無かった。
大きなトラブルも無く順調に王都を目指して進んでいく。
「ちょっとジル君、だらけ過ぎじゃないかな?一応私の護衛なんだよ?」
広い馬車の中で寝転んでいるジルに向かってトゥーリが言う。
とても護衛とは思えない姿勢であり、外を警戒しているのかも怪しい。
「そう言われても平和そのもので出番なんて無いではないか。護衛の仕事が無いのだから仕方無いだろう?」
「それはそうなんだけど。」
「ジルちゃんと一緒だから退屈しないと思っていたのに当てが外れたわね。」
ラブリートも暇そうにしている。
盗賊どころか魔物との戦闘も殆ど無くて護衛であるジルとラブリートは暇を持て余していた。
一応寝転んでいながらも警戒はしているので護衛の仕事はしている。
「まあ、力量差の分かる魔物ならそもそも近付いてはこないだろうからな。」
ジルやラブリートは冒険者の中でもトップクラスの実力者である。
高ランクの魔物であればその強さを感じ取って自然と離れていく。
なので襲ってくるのは低ランクの魔物が多くなるのだが、馬車での移動なのでそもそも速度的に追い付けない魔物も多い。
そう言った魔物に一々構っていてはキリが無いので、追い掛けてくる魔物だけを相手にしている為戦闘回数が少ないのだ。
「来るとしたら盗賊くらいかしら?」
「そうだな、こんな化け物に挑もうとする奴の気が知れん。」
「ほんとよね、ランク詐欺もいいところだわ。」
お互いがお互いの事を見て言い合う。
どちらもこんな相手に挑む盗賊が可哀想だと口にしている。
「一般的な目線から言わせてもらうと君達どっちも化け物だけどね。」
その様子を見てトゥーリが呆れながら言う。
その言葉にキュールネもこくこくと頷いている。
どんぐりの背比べと言ったところだ。
「それにしても本当に退屈ね。快適なのは良いけれど、このままじゃ1月後には王都に着いちゃうんじゃないかしら?」
「何だと?」
ラブリートの呟いた言葉にジルが反応する。
「このまま順調に進めばそうなるだろうね。」
「おい、エトの生誕祭はいつ頃だ?」
詳しい日にちまでは把握していなかった。
生誕祭についてはトゥーリが知っているので付いていくだけでいいと認識していたからだ。
「だいたい1月半後くらいだったかしら?」
「それなのに後1カ月で着くだと?早く出発し過ぎだろう。」
順調に進めば生誕祭まで2週間も王都で暇を持て余す事になる。
そんなに早く出発しているとは思わなかった。
「そんな事を言われても順調に進める保証なんて無いんだから仕方無いよ。万が一遅れたら貴族としての私の立場が崩れるんだから、これでも普通なんだよ?」
トゥーリとしてはそれくらいの時間の余裕を持つのは当然であった。
ジルの意見も分からなくはないが、余裕を持たずに遅れましたでは話しにならないのである。
数週間早く到着するくらいが丁度良い。
「さすがに心配性過ぎるのではないか?」
「まあまあ、王都なんて頻繁に訪れないんだしいいじゃない。四六時中トゥーリちゃんの護衛をしていろって訳でも無いんだから。」
ラブリートは早く到着する事に肯定的だ。
その時間を使って王都を満喫するつもりなのかもしれない。
「無事に送り届けてくれたら自由時間は設けるつもりだよ。その間は王都を観光したり、やりたい事をするといいさ。」
「まあ、暇潰しの材料があるならいいんだけどな。」
王都に訪れる機会もそんなに無いので、観光時間を貰えるのであれば納得しておく。
国の中心部ともなればセダンとは違ってジルが興味を持つ物も少なからずあるだろう。
「まあ、それも順調に進んでいければの話しだしね。」
「そろそろジルちゃんがトラブルを引き寄せてくれるかもしれないし。」
「ふっ、今回ばかりは…。」
ジルが否定しようとしたところで馬車がガタンと揺れる。
そして少し進んだ後に馬車は完全に停止した。
先程馬を休ませたばかりであり休憩では無いので、何かあったと考えるのが普通だ。
「トゥーリ様、急に止まってしまい申し訳ありません。進行方向に人が倒れていまして、盗賊かどうか確認して参ります。」
「分かったよ、気を付けてね。」
御者台から降りてきたシズルが馬車の扉を開けて報告してきた。
トゥーリが許可を出すと倒れている人に駆け寄っていく。
「今回ばかりは何かしら?」
「…はぁ。」
ジルはまたいつもの流れかと思いつつも、面倒事に発展しないでくれと心の中で祈る事しか出来無かった。
6
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる