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46章

元魔王様とエルフの里 5

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 同時攻撃によりギガントモスの巨体が世界樹から離れる。
しかしまだ世界樹との距離が近いので強力な火魔法を使う訳にはいかない。

「たたみかける!」

 エルミネルが世界樹を蹴ってギガントモスに突っ込む。

「武闘術・手式、掌撃!」

 膨大な魔力によって魔装された掌底を叩き込む。
しかしエルミネルの身体がギガントモスに触れる前に突風が巻き起こり弾き飛ばされてしまう。
ギガントモスが風魔法を使った様だが、エルミネルはなんとか空中でバランスを取って世界樹の凸凹部分に着陸する。

「キシー!」

 ギガントモスの周りに黒いモヤが大量に出現する。
エルフ達が受けた様々な呪いをジル達にも受けさせようとしている。
それだけで無く、雷や氷等の魔法も同時に扱ってきた。

「まずい、世界樹が傷付く!」

「魔法はなんとかする!ギガントモスを少しでも遠ざける事に集中しろ!」

「分かった!」

 エルミネルはジルを信じて再びギガントモスへ突っ込んだ。

「キシー!」

 様々な魔法を同時に使用して攻撃してくる。
エルミネルの後ろには世界樹があるが、ジルを信頼して魔法の全てを回避する。
その目にはギガントモスだけしか映っていない。

「武闘術・脚式、閃回脚!」

「キシー!」

 魔装された回し蹴りがギガントモスの身体に直撃する。
やはり外傷を与える事は出来無かったが、その身体がまた少しだけ世界樹から離れる。

「魔技、アブソーブ!」

 エルミネルを通り越してジルと世界樹に迫るギガントモスの魔法がジルの目の前までくると全て消失してしまう。
効力を発揮する事無く全てが煙の様に消えてしまったのだ。

 これはジルの編み出した魔技、魔法とスキルの合わせ技だ。
超級闇魔法のドミネイトと言う魔法と魔力変換と言うスキルを同時に使用していた。

 闇魔法のドミネイトは自身の周囲の一定空間内の魔法の制御を奪い取る効果を持つ。
基礎魔法でも派生魔法でも上級魔法までなら問答無用で奪い取れる強力な魔法である。

 そして魔力変換と言うスキルは、自身の使用した魔法を元の魔力に還元して魔力量を回復する魔法だ。
生み出したものの使い道が無くなってしまった魔法や永続的に続いている魔法を消す手段として使える。

 これを組み合わせる事で相手の魔法の主導権を奪って自分の魔法にする事で、魔力変換の対象とみなされ魔力に変換する事が出来る。
しかしどちらも消費魔力量が大きく、魔力の回復量よりも消費量の方が圧倒的に多いので、使い所が限られる技となる。

「ジル、今ならいける?」

「あまり火力の高くないやつならな。初級火魔法、ファイアアロー!」

 周囲に大量の火矢が現れる。
初級火魔法とは思えない数だが、ギガントモスの巨体を見ると圧倒的に力不足に感じてしまう。
しかし世界樹との距離がまだ近いので、派手に燃えそうな魔法を使う訳にはいかない。

「キシー!」

 火矢をギガントモスに放つと甲高い悲鳴の様な声を上げている。
巨体から見ても遥かに小さい火なのだが、弱点なので嫌がり方が凄まじい。

「これは期待出来るか?」

「キシー!」

 火矢によるダメージを期待するジルだったが、身体に当たる直前で消えてしまった。
いつの間にかギガントモスの身体の周辺には無数の水球が浮かんでいる。
初級火魔法でも受けたくないのがひしひしと伝わってくる。

「武闘術・手式、砲拳!」

 世界樹から膨大な魔力の奔流が放たれる。
エルミネルが突き出した拳に集約された膨大な魔力が光線の様にギガントモスに直撃する。
火矢とは威力が違うので水球程度では防ぐ事は出来無いがダメージは無く、巨体を押し出す事が目的の攻撃だ。

「いいぞエルミネル、その調子だ。」

「頑張ってる。」

 火矢に気を取られたギガントモスはエルミネルの膨大な魔力を防げず身体を徐々に押されていく。
世界樹との距離が少しずつ開いていく。

「これだけ開けば充分だろう。デカいのをお見舞いしてやる。」

 ジルが世界樹を巻き込まない様に軽くジャンプして離れつつ、ギガントモスに手を向ける。
その手から一瞬で熱気が広がり周囲の温度を急激に高めていく。

「超級火魔法、インシネレート!」

 掌から噴火を連想させる程の火が溢れ出す。
とめどなく溢れる火がギガントモス目掛けて一直線に突き進んでいく。

「キシー!」

 火矢でも嫌がる反応を見せていたのに、今度の火魔法は次元が違う。
ギガントモスは拒絶する様に身体を動かして離れていく。
しかしその巨体では回避は不可能だ。

「水魔法で防げるものなら防いでみろ!」

「キシー!」

 ジルの放った火魔法がギガントモスの身体に直撃する、世界樹の方からはそう見えた。
しかし実際はギガントモスと火魔法との間に現れた壁がそれを直前で防いでいた。
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