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45章

元魔王様とお手軽金策事業 1

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 ホッコが変化のスキルで人の姿になれる様になったので、やりたい事が色々と増えた。
今は浮島の魔の森でジルと一緒に魔物を狩っている。

「とりゃーなの!」

「グギャア!」

 ホッコとゴブリンの剣がぶつかり合う。
ディバースフォクスのホッコは魔法を主体として戦う魔物なのだが、人型になれたので武器を使ってみたいと言われて剣で戦わせているところだ。
初めてなのでゴブリンと良い勝負を繰り広げている。

「ホッコ、良い機会だし魔装を意識して戦ってみろ。」

「魔装なの?」

 魔装は身体や武器に魔力を纏わせて強化する技術だ。
人で言うところの魔法使いのポジションであるホッコだが、魔装は使えるに越した事は無い。
咄嗟の回避や防御力の強化等、近接戦闘を行わない後衛職でも使い所はある。

「一先ず魔力を手に集める感じだ。」

「やってみるの!」

 ゴブリンと剣を交えながら魔力の操作を試みる。
実戦レベルには遠く及ばないが多少の魔力が手に集まる。

「次はそれを身体に纏わせるんだ。服を着ている様な感じだな。」

「むむむっ!」

 魔力が手の周りに徐々に広がって纏っていく。
その瞬間を狙ってやったのか分からないがゴブリンが剣に込める力を緩めた。

「うわっ!?」

 魔力の操作に集中していたホッコはそれでバランスを崩して前のめりに倒れる。

「グギャア!」

 ホッコがバランスを崩した隙を見逃さず、ゴブリンが剣を叩き付けてくる。

『動くな!』

「グギャッ!?」

 言霊のスキルによってゴブリンの動きが止まる。
突然顔しか動かせなくなり、何が起こったか分からずパニックになっている。

「いててなの。」

「ホッコ、ゴブリンの動きは止めたからもう一度だ。」

「分かったの!主様、ありがとうなの!」

 ホッコは笑みを浮かべて立ち上がり再び剣を構える。
少し待つとゴブリンの拘束時間も解けて再び剣がぶつかり合う。
言霊のスキルでサポートしつつ何度か同じ様な事を繰り返していると、ホッコの手に魔力が纏った。

「とりゃーなの!」

 魔装が成功した事により攻撃力に圧倒的な差が生まれて均衡が破れる。
ゴブリンが剣を勢い良く押し返されて尻餅を付かされる。
そこを見逃さずゴブリンの首を斬り落とす。

「主様、勝てたの!」

 ホッコは大喜びで戻ってくる。
ジルのサポートが無い実戦であれば負けていたのはホッコだったが、初めての試みだったのでそれは今後の訓練次第だ。

「さすがに飲み込みが早いな。魔力を頻繁に使ってきた甲斐があったのかもな。」

「主様の教え方が上手いの!」

 魔法を主体として戦うホッコはジルと出会う前から沢山魔法を使ってきた筈だ。
なので魔力の使用や操作には慣れているので魔装の習得速度も早いのではないかと考えた。
まだ拙いが魔装を直ぐに成功させるのは見込みがある。

「それは勝手に処理するといい。」

 こちらの様子を木陰から伺っているウルフ達に言う。
ジルから許可が出たので倒れているゴブリンを咥えて去っていった。

 ワーウルフがジル達の下に付いたので定期的に狩った魔物を餌として分けてやっているのだ。
勢力も少しずつ増やしている様で、今や浮島の魔の森一の集団となっている。

「さて、そろそろ小腹も空いたし戻るとするか。」

「主様、ドライフルーツが食べたいの!」

 最近のホッコのお気に入りのおやつだ。
暇があればシキやメイドゴーレムの下へ向かって貰っている様である。
皆可愛らしいホッコの餌付けに夢中となっている。

「シキに貰いにいくか。」

 浮島の建物も居住用と実験施設用で随分と建物が増えた。
木製の簡単なつくりなのでメイドゴーレム達がどんどん建ててくれた。

「シキ、いるか?」

「ジル様、丁度良かったのです。」

 何かの作業中だった様だが、それを中断して飛んでくる。

「ん?」

 シキがジルの隣りでキラキラとした視線を向けてくるホッコに気付く。
それを見てタイプCを呼ぶ。

「いつものなのです。」

「畏まりました、どうぞ。」

「やったの!」

 もう何日も同じ事をしていればホッコが求める物も分かってくる。
タイプCからお皿を受け取り、上に乗るドライフルーツを口に運ぶ。
そして幸せそうな表情を浮かべている。

「毎日貰っている様だがいいのか?」

「消費量よりも生産量の方が上回っているから問題無いのです。」

 シキもドライフルーツを口に運び、ジルも皿から一つ貰う。
優しい甘さが口の中に広がり戦闘の疲れを癒してくれる。

「だが果物も金が掛かるだろう?」

「前に異世界通販を使ったのは直ぐに見せる為なのです。今作っているのはこの世界産の物なので、充分に元は取れるのです。」

 シキが定期的に地上に足を運んでいたがその時に仕入れているのだろう。
それなら安く材料を仕入れられるので、金もあまり掛からなそうだ。

「お代わりなの!」

「一日一皿までなのです。」

「ガーンなの。」

 シキの言葉にホッコがショックを受けている。
この二人がやるとなんとも可愛らしい光景となる。

「それで何か用があったんだろ?」

「そうなのです。ドライフルーツがある程度量産出来たので売却をお願いしたいのです。」

 そう言ってテーブルの上に大量のドライフルーツが入った袋が出された。
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