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44章

元魔王様と待望のスキル購入 4

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 煙の中から現れたのは狐耳と尻尾を生やし獣人の美少女となったホッコである。

「成功だな。これなら獣人族に見えるから問題無いだろう。」

「主様!」

 ホッコが喜びながらジルに抱き付いてくる。
姿が変わったので魔物の時とは違ってしっかりと重みがある。

「ホッコちゃん、先ずは何か着ようか?」

 ジルに抱き付いていたホッコをテスラが引き剥がす。
魔物の姿から獣人の姿になったホッコは全裸であった。
人目が無い浮島とは言え、このままはあまりよろしく無いだろう。

「ホッコ殿、一先ず妾の着替えを着るとよい。」

「分かったの!」

 ホッコはナキナから渡された服を着ていく。
だが着替えと言う行為に慣れていないので苦戦している。
なのでナキナやテスラが着替えを手伝ったり教えたりしてくれている。

「レイア、何をしている。」

「女性の裸を見るのはジルさんとていかがなものかと思いまして。」

ジルの目はレイアの手によって塞がれており、視界には暗闇が広がっている。
別に見たいと思って見ていた訳では無いのだが、レイアが気になってしまった様だ。

「もう大丈夫です、失礼致しました。」

 レイアが謝罪して手を退かしてくれると着替え終わったホッコがいた。
鬼人族の里で勇者が広めた物の一つ、巫女服と呼ばれる衣装だ。

「ほう、似合っているな。」

「主様にそう言ってもらえて嬉しいの!」

 ホッコはご機嫌な様子で再び抱き付いてくる。
先程は抱き付いた途端に着替の為に引き剥がされたのでその続きだろう。

「勇者曰く、種族ごとに特に似合う衣装と言うものが異世界の常識として知られているらしいのじゃ。そして狐の獣人は巫女服や浴衣だと言い伝えられていたのう。」

 その勇者は様々な種族に対して似合う衣装に付いて熱く語ったらしい。
そしてこの世界には無い衣装を次々に作り出し広め伝えたと言う。

「成る程な、我としてはホッコが着たい物を着ればいい。」

「これが気に入ったの!動きやすいし可愛いの!」

 そう言ってクルクルと回って見せる。
下はスカートなので足も動かしやすそうだが、普通の衣服なので防御力は低そうだ。
と言ってもジルが触れさせなければ済む話しではある。

「そう言えば変化のスキルの使い心地はどうだ?」

「最高なの!色んな姿になれそうなの!」

「変化のスキル?」

 元々ホッコに与える予定だったのは人化のスキルだ。
しかしジルが異世界通販のスキルで購入したのは別のスキルだった。

「こっちのスキルの方が使い勝手が良さそうだったからな。人族にしかなれない人化のスキルの上位スキルと言った感じだ。」

「いつでもこうして主様に抱き付けて嬉しいの!」

 待ち望んだ人型になれるスキルに大はしゃぎである。

「人化のスキルを欲していたのはそれが理由か?」

「そうなの!主様と一緒の目線で色々な事がしたかったの!」

「可愛い事を言ってくれる。」

「くぉ~ん。」

 ホッコを撫でてやると気持ち良さそうな声を出して鳴いている。
人型になっても魔物の頃と同じで撫でられるのは好きな様だ。

「ちょっとくっつき過ぎじゃない?」

「ううう、羨ましいです。」

「まあまあ二人共、今日くらいはホッコ殿に譲ってやってほしいのじゃ。」

 ジルに撫でられてご満悦なホッコを見て二人が羨ましそうな視線を送っており、それをナキナが抑えてくれている。
ずっと人の姿になるのを楽しみにしていたホッコの願いがようやく叶ったのだ。
今日くらいは大好きな主人に甘やかされてほしい。

「じゃあナキナちゃんが私達を甘やかしてよ。」

「えっ?妾が?」

 テスラの言葉にナキナがキョトンとした顔で言う。
二人がジルを好いているのは言動や行動から何となく分かっていた。
しかしその代わりが自分に務まるとは思えない。

「あれを見て甘やかされたくなったの。早く早く。」

「こ、こうじゃろうか?」

 テスラが頭を差し出してくるのでナキナが優しく撫でる。
本来であればサキュバスと言う種であるテスラの方がそう言った役目をする側だと思うがナキナも嫌と言う訳では無いので言われたままにしてやる。

「ふむふむ、成る程。これはこれでありね。レイアもしてもらったら?」

「わ、私もですか?少し恥ずかしいのですが。」

 ナキナに撫でられているテスラを見て若干顔を赤らめている。

「なーに言ってんのよ。こんな事で恥ずかしがってたら本番の時はどうするの。」

「ほ、本番…。」

 何を想像したのかレイアの顔が見る見る赤くなっていく。

「分かったら大人しく撫でられなさい。」

 そう言ってテスラが手招きするとレイアがおずおずと近付いてくる。
そしてナキナ達の前に屈む。

「よ、宜しくお願いします。」

「う、うむ。」

 ナキナはテスラに続いてレイアの頭も撫でてやる。
クールな普段の印象からは想像出来無い程に表情が忙しく変化している。

「どうじゃろうか?」

「けけけ結構なお手前かと思います。」

「それは良かったのじゃ。」

 言葉が少し変になっているが喜んでくれたのであれば良かった。

「お前達は何をしているんだ?」

「皆撫でられると嬉しいの!」

 レイアはナキナに撫でられている姿をジルにマジマジと見られて更に顔を赤くさせ、恥ずかしさのあまり両手で顔を覆っていた。
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