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43章

元魔王様と天使族の襲来 3

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 翌日、レイアとテスラの二人と魔の森で魔物の討伐依頼を受ける約束をしていたが、そこにナキナと影丸も加わって魔の森までやってきた。

「よしっと、これで討伐依頼達成だね。」

「ジルさん達と一緒でしたから直ぐに終わってしまいましたね。」

 魔物から討伐を証明する部位をレイアとテスラが回収する。
ギルドからの依頼は魔の森に到着して10分程で終わってしまった。
移動時間の方が長かったかもしれない。

「我らは殆ど何もしていなかったけどな。」

「さすがは期待の大型新人じゃのう。」

「ありがとうございます。」

「えへへ、照れますね。」

 レイアは満足そうにテスラは照れくさそうに笑っている。
ここにはランク詐欺と呼ばれる者達しかいないので、Dランクの依頼に苦戦する者なんていない。
それでも討伐依頼をこの早さで終わらせるのは、実力者でも中々出来る事では無い。

「最近のギルドでは二人の噂を聞かぬ日は無いからのう。実力派美人コンビとしてセダンでも有名になりつつあるみたいじゃ。」

 正体には気付かれていないので冒険者からは勿論の事、街の住人達からも二人の人気は非常に高い。
お近付きになりたいと男性からの人気が圧倒的ではあるが、女性からも格好良くて強いと慕われている。

「我も噂なら幾つか聞いたな。登録して数日でDランクになった事や絡んできたBランク冒険者を返り討ちにした事とかな。」

 ギルドに立ち寄るとミラからも二人の話題が出てくる事がある。
それだけ活躍していると言う事だ。

「依頼に関しては反応を見るに成果が良過ぎたみたいでしたね。時間が余ったので納品物を依頼数の数倍集めたり、討伐数を大幅に上回ったりしていましたから。」

 二人の実力から考えればそうなるのも当然だ。
明らかに二人共Dランク帯のレベルでは無い。

「それと絡んできた冒険者に関しては向こうが100悪いのよね。酔いまくって絡んできた挙句、胸を触られそうになったんですから。」

 テスラがその時の事を思い出して、不機嫌そうな表情をしながら豊満な胸を抱えている。
それを見たレイアがキッとテスラを静かに睨む。
そのぶきで誘惑するなとでも言いたげである。

「だからと言って瀕死の重症にまでする事は無かったんじゃないか?」

「乙女の身体に触れるなら相応な覚悟が必要って事ね。」

 自分には全く非が無いと態度が物語っている。
聞けば一般的なポーションや光魔法による治療でも全治出来無い程の大怪我だったらしい。
魔物との戦闘が可愛く思える部類だっただろう。

「同じ女性としてテスラ殿の言い分も分かるからのう。」

 ナキナも酔っていたとは言え冒険者にも責任があると言いたげだ。
確かに酔いを理由にして毎回そんな事をされたら女性冒険者達はたまったものではないだろう。

「ジルさんなら別にいいんだけどな。」

「テスラがそう言う態度だから他の方が勘違いするんですよ。少し慎みなさい。」

 少し屈んでジルに上目遣いをしているテスラを窘める。
サキュバスらしいと言えばらしい行動だ。

「えー、レイアだってしてほしいくせに。むっつり~。」

「わわわ、私はそんな事は!と言うか誰がむっつりですか!」

 レイアが顔を赤らめさせながら抗議している。
ジルの目の前で言われたのが恥ずかしいのだろう。

「お前達、戯れ合うのもその辺にしておけ。それよりも事前に話していた通りに、ここからは少し付き合ってもらうぞ。」

「例のスキル集めですね?」

「良さそうな魔法道具があるって聞いたけどどんなの?」

 二人には事前に今日の目的を話している。
依頼が終わった後は人化のスキルを集める為に協力してくれる事になっている。

「これだ。スキルを蓄え他者に与える効果を持つ。」

「素晴らしい魔法道具ですね。」

「羨ましいな~。」

 人化のスキルを二人に与えた時にもスキル収納本は見ているが、その件についてはナキナに教えていないので魔法道具も初めて見た事にした。
二人にも話しを合わせる様に言ってある。

「今回の狙いはホッコ殿の欲する人化のスキルじゃ。それを得る為に魔物を大量に狩る事になっておる。」

「だがこの魔法道具を所有している者が倒す必要があるから、実質我だけでの魔物狩りだな。」

 スキル収納本の効果は倒した相手からランダムにスキルを入手出来ると言うものだ。
所持者以外が倒してもスキルのストックは増えない。

「では私達は素材集めですね?」

「ああ、悪いが我の倒した魔物の回収を任せる。」

「任せてちょうだい、私達で全部回収してみせるわ。」

 三人と影丸がいれば回収役は充分だろう。
思う存分スキル集めに集中出来そうだ。

「代わりに報酬を先に渡しておこう。」

「綺麗な鞄ですね。」

「貰ってもいいの!」

 レイアとテスラがそれぞれ鞄を受け取り嬉しそうにしている。
親愛なる主からの贈り物となれば喜ばない訳が無い。

「それは魔法道具の鞄だ。見た目よりも多く物が収納出来る様になっている。魔物を拾うのに使った後は所有物にするといい。」

 無限倉庫の様な収納系スキルを持たない二人は重宝するだろう。
二人は満面の笑みで鞄を身に付けていた。
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