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41章
元魔王様と秘密の拠点 6
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ギルドの次はシュミットの店を訪れる。
トレンフルでも色々と買い取ってもらったが、その残りをセダンに戻ってからも買い取ってもらう事になっていた。
「ほな、買い取った分の金を渡すで。」
「悪いな遅くなってしまって。」
金貨の詰まった袋を受け取る。
これでトレンフルで得た不要な物は全て換金出来た。
「構わんで、スタンピードの対応で忙しいのは知っとったからな。」
冒険者達はスタンピードが終わるまでの期間、毎日休む暇も無く働き通しだった。
その反動で今は殆どの者が休息を取っている状況だ。
「ギルドで買い取れる量には限界があったから、在庫を一気に換金してもらえて助かる。」
「わいにはこんくらいしか出来へんからな。街を守ってくれた礼みたいなもんや。それにダンジョン産の素材や魔法道具は需要があるから助かるで。」
シュミットが買い取った物はセダンの街では珍しい物ばかりである。
街が変われば求められる物も違ってくるので、買い取り手は沢山現れるだろう。
「それでもかなりの出費じゃないか?」
「トレンフルでの儲けが全て飛んでしまったわ。それでも全部売れればたっぷり儲けれるんやけどな。」
「そうか、ならば有り難くもらっていく。」
「またおもろい物仕入れたら持ってきてや。」
シュミットに見送られて店を後にする。
続いて向かうのはダナンの工房だ。
手持ちの金を増やす為に回収出来る場所は回っていく。
「ダナン、金の回収にきたぞ。」
「借金取りみたいな言い方はやめろ。ミスリルの売却金だろう?」
ジルの人聞き悪い台詞を訂正するダナン。
「ああ、少し金が不足しているので欲しくてな。」
「スタンピードに参加していなかったのか?」
スタンピードの報酬の事を言っているのだろう。
冒険者で無くてもあれ程の規模の依頼ならば相当な報酬が貰える事くらいは分かる。
「していたから報酬は貰ったぞ。大きい買い物をして懐事情が寂しいだけだ。」
「成る程な、ほらよ。」
ダナンはかなり重い大きな袋を渡してくる。
中を見るとキラキラと光る金貨が山の様に入っている。
「おおお、結構な額だな。」
「オークション二回分のミスリルインゴットの売却額だ。毎回値段が多少動くから、ばらつきがあるのは許してくれ。」
ジルがいなくてもミスリル鉱石は大量に預けてあるので、定期的にオークションに出してくれている。
必要の無い鉱石が大量の金に変わるのでこの臨時収入は本当に有り難い。
「問題無いぞ。報酬は相変わらずミスリル鉱石でいいのか?」
「ああ、わしは金よりもこの高純度のミスリルの方が欲しいからな。」
報酬が金では無くミスリル鉱石と言う点もジルからすれば助かる。
文字通り山の様に無限倉庫の中に入っているのでどんどん消費しても痛くも痒くも無い。
「そして今日はもう一つ頼みがあってきたんだ。」
「金を受け取りにきただけじゃなかったんだな。」
「まあな、実は刀を打ってほしくてな。」
「刀?二刀流にでもするのか?」
ダナンがジルの腰を見ながら言う。
そこにはダナンの打った銀月が下がっている。
ジルの愛刀であり、エルダードワーフの逸品だ。
「我のでは無い。仲間の一人が刀を欲していてな。」
前に頼まれたタイプBの賞品だ。
セダンの街に戻ったらダナンに頼むつもりだった。
タイプBが扱う事を考えるとそれなりの物を用意したい。
「成る程、ジルの頼みなら打ってやらん事も無い。ちなみに実力はどうだ?」
既にジルの実力は疑う余地も無い。
そのジルが認めているのであればダナンとしては打つのに充分な理由だ。
「ナキナと同等以上だと我が保証しよう。見たいのなら直接戦っているところを見せられるぞ?」
「ジルがそれだけ認めてるのなら確認は不要だ。一本打ってやろう。」
「助かる。」
ナキナの実力は前に確認済みなので同等以上と言うならダナンに文句は無い。
早速取り掛かろうと立ち上がる。
「ちなみに鍛治師の矜持として自分以外が刀に手を加える事についてはどう思っている?」
この確認は重要だ。
後からこっそり付け加える事も出来るが、ダナンとは今後も良い関係を続けていきたいので、作り手に対して失礼な事はしたくない。
「ジルが刀に何かすると言う事か?」
「何かしらの力を与えて魔法道具にしたくてな。」
せっかくタイプBに新たな武器を与えるのならば、少しでも有用な物を与えてやりたい。
エルダードワーフの逸品と言っても武器の性能が飛び抜けているだけで魔法武具では無いのだ。
「気に食わないならやらないぞ?」
「ドワーフでそう言う考えの者は多いが、わしの武具が昇華される行為なら別に構わないぞ。」
逆に武具の性能を下げる様な事になれば絶対に許さないとその表情が物語っている。
エルダードワーフとして自分の作った物の価値を下げられる様な行いは見過ごせ無い。
「分かった、では宜しく頼む。」
「出来上がったら知らせるから楽しみに待っているといい。それと魔法道具にしたらわしにも見せてくれ。」
自分の作った武具がどう変わるのか興味があるのだろう。
ダナンは早速刀の製作に取り掛かってくれたので、ジルは完成を楽しみにしつつ店を後にした。
トレンフルでも色々と買い取ってもらったが、その残りをセダンに戻ってからも買い取ってもらう事になっていた。
「ほな、買い取った分の金を渡すで。」
「悪いな遅くなってしまって。」
金貨の詰まった袋を受け取る。
これでトレンフルで得た不要な物は全て換金出来た。
「構わんで、スタンピードの対応で忙しいのは知っとったからな。」
冒険者達はスタンピードが終わるまでの期間、毎日休む暇も無く働き通しだった。
その反動で今は殆どの者が休息を取っている状況だ。
「ギルドで買い取れる量には限界があったから、在庫を一気に換金してもらえて助かる。」
「わいにはこんくらいしか出来へんからな。街を守ってくれた礼みたいなもんや。それにダンジョン産の素材や魔法道具は需要があるから助かるで。」
シュミットが買い取った物はセダンの街では珍しい物ばかりである。
街が変われば求められる物も違ってくるので、買い取り手は沢山現れるだろう。
「それでもかなりの出費じゃないか?」
「トレンフルでの儲けが全て飛んでしまったわ。それでも全部売れればたっぷり儲けれるんやけどな。」
「そうか、ならば有り難くもらっていく。」
「またおもろい物仕入れたら持ってきてや。」
シュミットに見送られて店を後にする。
続いて向かうのはダナンの工房だ。
手持ちの金を増やす為に回収出来る場所は回っていく。
「ダナン、金の回収にきたぞ。」
「借金取りみたいな言い方はやめろ。ミスリルの売却金だろう?」
ジルの人聞き悪い台詞を訂正するダナン。
「ああ、少し金が不足しているので欲しくてな。」
「スタンピードに参加していなかったのか?」
スタンピードの報酬の事を言っているのだろう。
冒険者で無くてもあれ程の規模の依頼ならば相当な報酬が貰える事くらいは分かる。
「していたから報酬は貰ったぞ。大きい買い物をして懐事情が寂しいだけだ。」
「成る程な、ほらよ。」
ダナンはかなり重い大きな袋を渡してくる。
中を見るとキラキラと光る金貨が山の様に入っている。
「おおお、結構な額だな。」
「オークション二回分のミスリルインゴットの売却額だ。毎回値段が多少動くから、ばらつきがあるのは許してくれ。」
ジルがいなくてもミスリル鉱石は大量に預けてあるので、定期的にオークションに出してくれている。
必要の無い鉱石が大量の金に変わるのでこの臨時収入は本当に有り難い。
「問題無いぞ。報酬は相変わらずミスリル鉱石でいいのか?」
「ああ、わしは金よりもこの高純度のミスリルの方が欲しいからな。」
報酬が金では無くミスリル鉱石と言う点もジルからすれば助かる。
文字通り山の様に無限倉庫の中に入っているのでどんどん消費しても痛くも痒くも無い。
「そして今日はもう一つ頼みがあってきたんだ。」
「金を受け取りにきただけじゃなかったんだな。」
「まあな、実は刀を打ってほしくてな。」
「刀?二刀流にでもするのか?」
ダナンがジルの腰を見ながら言う。
そこにはダナンの打った銀月が下がっている。
ジルの愛刀であり、エルダードワーフの逸品だ。
「我のでは無い。仲間の一人が刀を欲していてな。」
前に頼まれたタイプBの賞品だ。
セダンの街に戻ったらダナンに頼むつもりだった。
タイプBが扱う事を考えるとそれなりの物を用意したい。
「成る程、ジルの頼みなら打ってやらん事も無い。ちなみに実力はどうだ?」
既にジルの実力は疑う余地も無い。
そのジルが認めているのであればダナンとしては打つのに充分な理由だ。
「ナキナと同等以上だと我が保証しよう。見たいのなら直接戦っているところを見せられるぞ?」
「ジルがそれだけ認めてるのなら確認は不要だ。一本打ってやろう。」
「助かる。」
ナキナの実力は前に確認済みなので同等以上と言うならダナンに文句は無い。
早速取り掛かろうと立ち上がる。
「ちなみに鍛治師の矜持として自分以外が刀に手を加える事についてはどう思っている?」
この確認は重要だ。
後からこっそり付け加える事も出来るが、ダナンとは今後も良い関係を続けていきたいので、作り手に対して失礼な事はしたくない。
「ジルが刀に何かすると言う事か?」
「何かしらの力を与えて魔法道具にしたくてな。」
せっかくタイプBに新たな武器を与えるのならば、少しでも有用な物を与えてやりたい。
エルダードワーフの逸品と言っても武器の性能が飛び抜けているだけで魔法武具では無いのだ。
「気に食わないならやらないぞ?」
「ドワーフでそう言う考えの者は多いが、わしの武具が昇華される行為なら別に構わないぞ。」
逆に武具の性能を下げる様な事になれば絶対に許さないとその表情が物語っている。
エルダードワーフとして自分の作った物の価値を下げられる様な行いは見過ごせ無い。
「分かった、では宜しく頼む。」
「出来上がったら知らせるから楽しみに待っているといい。それと魔法道具にしたらわしにも見せてくれ。」
自分の作った武具がどう変わるのか興味があるのだろう。
ダナンは早速刀の製作に取り掛かってくれたので、ジルは完成を楽しみにしつつ店を後にした。
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