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41章

元魔王様と秘密の拠点 4

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 トゥーリとの交渉を終えたジル達は早速魔の森へと向かう。

「この辺りか。」

 貸しの代わりに譲って貰った土地のある場所までやってくる。
実際に見るとかなり広い範囲を貰えたのが分かる。
視界内では貰えた土地全てが見えていないだろう。

「この後はどうするのじゃ?」

「一先ず浮かせる土地を切り離さないと滅茶苦茶になっちゃうのです。」

 浮遊石は魔力を使用して周囲の物を浮遊させる効果を持つ。
その為に先ずは浮かせる範囲を指定する必要がある。
地面が地続きの状態だと無理矢理浮かせようとして中途半端な形になって浮いてしまうかもしれない。

「少し待っていろ。時空間魔法、空間把握!」

 ジルは周囲に認識範囲を広げていく。
これによりトゥーリから譲り受けた魔の森を含む周辺の土地を全て範囲内に収める。
これで中はどこでも魔法の対象範囲となった。

「中級風魔法、ウインドブレイド!」

 ジルが魔法を使用すると空中に可視化出来る風の刃が出現して地面に向かって進んでいく。
地面に当たると爆音を立てながら巨大な亀裂を作りあげる。
それを何度も色んな場所で行って地面を削り掘り、土地を切り離していく。

「こんなものか。」

 地面の中を空間把握によって認識しながら風の刃で削る事数分、ようやく切り離し終える事が出来た。
これで浮遊石の許容範囲の質量であれば浮かせられる筈だ。

「早速試してみるのです。」

「確か埋めるだけでいいんだよな?」

「そうなのです。」

 ジルは少しだけ足元を掘って浮遊石を置く。
そして浮遊石に魔力を流していくと、浮遊石が軽く明滅し始める。
少しすると切り離した地面とそうでない地面の高さが徐々に変わっていき、浮き始めたのが分かった。

「おおお、浮いているのじゃ!」

「成功だな。」

 一先ず地面を浮かせる事には成功した。
下から見ると四角錐を逆さまにした様な形状になっている事が分かるだろう。
なので地面にもそう言う穴が空いている事になる。

「一先ずこのままだと目立つから結界を張っておくか。」

「セダンの街からも見えてしまうかもしれんしのう。」

 浮かせた地面はかなりの大きさなので、遠くからでも見えてしまうかもしれない。
応急処置として偽装結界で浮島を包み、外部から見えない様にしておく。

 大穴が空いた地面に関してはそのまま放置しておいた。
トゥーリから何も言われる心配は無く、セダンからもかなり離れた位置の魔の森なので冒険者に見つかる可能性も低い。
例え見つかったとしても危険な魔の森であれば魔物との戦闘後と思ってもらえるだろう。

「シキ、どこまで上げる?」

「もっともっと上なのです。下にこんな大きな物が浮いてたら空を飛ぶ魔物とかが普通にぶつかっちゃうのです。」

 確かにそうだと思いながら浮遊石に更に魔力を注いでいく。
すると高度がどんどん上がっていき、かなり高い位置までやってきた。
セダンの街よりも雲の方が近いかもしれない。

「ここまでくれば大丈夫なのです。」

「よし、ではこの位置に浮かせるとしよう。」

 浮遊石に土を被せて埋める。
魔力が豊富な魔の森が浮島には存在するので、現状維持だけなら魔力の供給は土壌から吸収される分だけでも充分だ。

「高いのは少し怖いのう。突然落ちないか心配じゃ。」

「浮遊石がある限り落下に関しては大丈夫だろう。だが外敵の対策はこれから行う。」

「空だからって安心は出来無いのです。」

 この世界には空を飛ぶ種族や魔物も普通に存在している。
そう言った者達からすれば、邪魔な浮島を排除しようとしたり、住処にしようと勝手に乗り込まれるかもしれない。
視界的な対策以外にもやる事は多い。

「ところでこれからはここに住むのじゃろうか?」

「それでもいいが、どちらかと言うと隠れ家的な場所だな。だがここの居心地が良ければずっと居付いても構わない。」

 何かと秘密の多いジル達は何も隠さなくてもいいプライベートな場所が欲しかった。
それがこの浮島である。
飛行能力を持たない者では立ち入る事も出来ず、持っている者でも対策するつもりなので誰も入れない浮島となる。

「この浮島があれば様々な事が出来る様になるのです!これからが更に楽しくなるのです!」

「様々な事?」

「一番簡単な例は異世界の物についてなのです。ここなら周りの目を気にしなくていいから異世界の物の研究を思う存分行えるのです。」

 今までは地上で行えなかった実験や研究がここなら可能となる。
異世界の知識を得たシキとしては、実際にそれらを試す場所が欲しかったのだ。

「先ずはどんな事をするのかのう?」

「異世界の食物や植物の栽培なんかしてみたいのです。」

「ほほう、面白そうじゃのう。」

 この世界では見る事が出来無いものを育てられる環境。
ナキナとしても多少興味が湧く。

「ここは我らだけの土地だからな。ナキナも自由にすればいい。魔物にも困らないだろうしな。」

 そう言ってジルが魔の森に視線を向ける。
貰った土地には広大な魔の森の一部も含まれているので、魔物も普通に生息している。
なので鍛錬の相手や魔物狩りにも困らない。

「それはいいのう。早速影丸と狩りにでもいってくるのじゃ。」

「ウォン!」

 ナキナの言葉を聞いて嬉しそうに鳴きながら影の中から影丸が飛び出してきた。

「では行ってくるのじゃ。」

 影丸に乗ったナキナはそう言い残して魔の森の中へと向かった。

「我は浮島に色々と対策を加えていくか。」

「シキは取り敢えず拠点を作るのです。」

 ジルとシキも出来たばかりの浮島に各々手を加えていった。
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