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40章
元魔王様と三人目の魔法生命体 10
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事後処理に冒険者達が奔走してスタンピードの収束を完全に確認出来た頃には、完全に日も落ちて夜となっていた。
少なくない犠牲を出したスタンピードだったが、そのおかげでセダンの街の平穏は守り抜けた。
「今日は好きなだけ飲み食いしてくれ。ギルドが全ての代金を持つからのう。」
エルロッドの言葉に酒場にいる冒険者達から歓声が上がる。
報酬とは別途でスタンピードの打ち上げを酒場でしているのだ。
「随分と太っ腹だな。」
「冒険者の皆さんを随分と酷使してしまいましたからね。ギルド側から出来る事と言えば報酬と酒場の貸し切りくらいですよ。」
ミラがジルの飲み切った果汁水にお代わりを注いでくれる。
「そっちも疲れているだろう?ミラも休んだらどうだ?」
「そうしたいのは山々なのですが、ジルさんが厄介な件を持ち込んでくれましたからね。片付くまではまだまだ休めそうにないんです。」
ミラは軽い溜め息を吐いてそう言った。
「せっかく連れ帰ったと言うのに、我が余計な事をしたみたいではないか。」
ミラが言っているのは白衣の男の件だ。
スタンピードに関係があったので連れ帰って預けたのだが、それで更に一部の者達が忙しく動いている。
「すみません、冗談ですよ。その件は本当に感謝しています。ですがその問題が解決出来るまではギルド側はあまり休めそうにありません。」
「それ程の重要案件なんだな。」
「当たり前じゃないの。人為的なスタンピードかもしれないなんて国案件の大問題よ?」
ラブリートが呆れた視線を向けてきている。
災厄を人為的に起こせるとなればとんでもない事だ。
知れ渡れば戦争や復讐等の手段として災厄を気軽に起こそうとする馬鹿が現れないとも限らない。
「そうなると我は大手柄と言う事になるな。」
「その犯人の一人を連れてきたのですから、ジル様には更なる報酬が期待出来るのです!」
「これ以上貰う必要があるのかのう?」
ナキナも今回のスタンピードでは数多くの魔物を倒してかなりの貢献度を上げている。
なのでジルとナキナは相当な報酬を受け取っている。
今回のスタンピードに参加した者の中でも一番稼いでいるだろう。
「金は幾らでも欲しいからな。シキと前々から検討していた物もそろそろ買えそうだ。」
「それは嬉しい報告なのです!」
前々から計画していた事が今回入ってきた大金で実現可能となっていた。
今まで稼いできた甲斐があったと言うものだ。
「妾はそんな話し聞いておらんぞ?仲間外れは酷いのじゃ。」
二人に会話の内容を知らされておらずナキナが頰を膨らませて抗議してくる。
「悪いな、後で話してやる。」
「約束じゃぞ?」
話してくれるのならばとその場は収めてくれた。
「やっぱりいいわね仲間って。」
その様子を微笑ましそうに見ていたラブリートが呟く。
「ラブリートさんも作られてはどうですか?」
「私は一人の方が楽なのよ。同じくらい強い子じゃないと不自由に感じちゃうわ。」
Sランク冒険者の立ち回りに合わせるとなるとAランク冒険者でも限られてくる。
だからと言って個人で国家戦力とも言われる同じランク帯で組む方が難しいだろう。
「ジルさん達のパーティーなら上手くやっていけそうですけど?」
「そうね、ジルちゃん達となら私も大歓迎だわ。」
実力者の揃うジル達のパーティーであればラブリートも不自由を感じる事は無いだろう。
殆ど同格の存在であるジルが不自由無くやっていけてるのが証拠だ。
「却下だ。ラブリートと同じパーティーなんて目立ってしょうがない。確実に面倒な目に遭う事が見えているのに選択する必要は無いな。」
「って感じで断られるとは思っていたわ。残念だけど諦めるしか無いわね。」
目立つ事や面倒事を嫌うジルとしては、国家戦力として名が広まっているラブリートを同じパーティーに迎えるのは遠慮したい。
そんな事をすれば注目される事間違い無しであり、それをラブリートも理解しているので入れるとは思っていなかった。
なので言葉ではそう言っているが断られてもあまり残念そうにはしていない。
「ミラさん、少し宜しいですか?」
ギルドの職員が近付いてくる。
今は冒険者達の相手をしている者と事後処理に奔走している者で分かれており、この者は後者だ。
「あっ、すみません。つい話し込んでしまいました。」
「いえいえ、働き通しなんですから少しは休んでほしいくらいですよ。ですが緊急でお耳に入れたい情報がありまして。」
「では向こうに行きましょう。」
用事でミラが連れられていくのと変わる様にギルメンテが近付いてくる。
「兄貴、呑んでますか?」
既に酒を呑み過ぎて出来上がっている様子だ。
足取りがフラフラしておぼつかない。
「ギルメンテか、無事に生き残った様だな。」
「当たり前ですよ!」
見た目に大きな怪我は無いので無事スタンピードを乗り切った様だ。
誤解が解けてこれからは冒険者の知り合いとして仲良くやっていくつもりなので無事なのは何よりだ。
「魔物も結構倒しましたからね!兄貴の話しも聞かせて下さいよ!」
「ああ、別にいいぞ。」
「ジルさん、お取り込み中すみません。少しお時間宜しいですか?」
ギルメンテとスタンピードの話しをしようと思うと、先程連れられていったミラが戻ってきた。
その表情を見るに雑談に戻ってきた訳では無さそうだ。
「悪いなギルメンテ、また今度だ。」
「いえいえ、兄貴の分も俺がたらふく呑んでおきますよ!」
気分を害する事も無く、そのまま仲間達の下へと戻っていった。
「どうかしたのか?」
「実はジルさんが連れ帰った白衣の男性ですが、何者かに殺害されてしまったらしいです。」
戻ってきたミラが申し訳無さそうにジルに向けてそう言った。
少なくない犠牲を出したスタンピードだったが、そのおかげでセダンの街の平穏は守り抜けた。
「今日は好きなだけ飲み食いしてくれ。ギルドが全ての代金を持つからのう。」
エルロッドの言葉に酒場にいる冒険者達から歓声が上がる。
報酬とは別途でスタンピードの打ち上げを酒場でしているのだ。
「随分と太っ腹だな。」
「冒険者の皆さんを随分と酷使してしまいましたからね。ギルド側から出来る事と言えば報酬と酒場の貸し切りくらいですよ。」
ミラがジルの飲み切った果汁水にお代わりを注いでくれる。
「そっちも疲れているだろう?ミラも休んだらどうだ?」
「そうしたいのは山々なのですが、ジルさんが厄介な件を持ち込んでくれましたからね。片付くまではまだまだ休めそうにないんです。」
ミラは軽い溜め息を吐いてそう言った。
「せっかく連れ帰ったと言うのに、我が余計な事をしたみたいではないか。」
ミラが言っているのは白衣の男の件だ。
スタンピードに関係があったので連れ帰って預けたのだが、それで更に一部の者達が忙しく動いている。
「すみません、冗談ですよ。その件は本当に感謝しています。ですがその問題が解決出来るまではギルド側はあまり休めそうにありません。」
「それ程の重要案件なんだな。」
「当たり前じゃないの。人為的なスタンピードかもしれないなんて国案件の大問題よ?」
ラブリートが呆れた視線を向けてきている。
災厄を人為的に起こせるとなればとんでもない事だ。
知れ渡れば戦争や復讐等の手段として災厄を気軽に起こそうとする馬鹿が現れないとも限らない。
「そうなると我は大手柄と言う事になるな。」
「その犯人の一人を連れてきたのですから、ジル様には更なる報酬が期待出来るのです!」
「これ以上貰う必要があるのかのう?」
ナキナも今回のスタンピードでは数多くの魔物を倒してかなりの貢献度を上げている。
なのでジルとナキナは相当な報酬を受け取っている。
今回のスタンピードに参加した者の中でも一番稼いでいるだろう。
「金は幾らでも欲しいからな。シキと前々から検討していた物もそろそろ買えそうだ。」
「それは嬉しい報告なのです!」
前々から計画していた事が今回入ってきた大金で実現可能となっていた。
今まで稼いできた甲斐があったと言うものだ。
「妾はそんな話し聞いておらんぞ?仲間外れは酷いのじゃ。」
二人に会話の内容を知らされておらずナキナが頰を膨らませて抗議してくる。
「悪いな、後で話してやる。」
「約束じゃぞ?」
話してくれるのならばとその場は収めてくれた。
「やっぱりいいわね仲間って。」
その様子を微笑ましそうに見ていたラブリートが呟く。
「ラブリートさんも作られてはどうですか?」
「私は一人の方が楽なのよ。同じくらい強い子じゃないと不自由に感じちゃうわ。」
Sランク冒険者の立ち回りに合わせるとなるとAランク冒険者でも限られてくる。
だからと言って個人で国家戦力とも言われる同じランク帯で組む方が難しいだろう。
「ジルさん達のパーティーなら上手くやっていけそうですけど?」
「そうね、ジルちゃん達となら私も大歓迎だわ。」
実力者の揃うジル達のパーティーであればラブリートも不自由を感じる事は無いだろう。
殆ど同格の存在であるジルが不自由無くやっていけてるのが証拠だ。
「却下だ。ラブリートと同じパーティーなんて目立ってしょうがない。確実に面倒な目に遭う事が見えているのに選択する必要は無いな。」
「って感じで断られるとは思っていたわ。残念だけど諦めるしか無いわね。」
目立つ事や面倒事を嫌うジルとしては、国家戦力として名が広まっているラブリートを同じパーティーに迎えるのは遠慮したい。
そんな事をすれば注目される事間違い無しであり、それをラブリートも理解しているので入れるとは思っていなかった。
なので言葉ではそう言っているが断られてもあまり残念そうにはしていない。
「ミラさん、少し宜しいですか?」
ギルドの職員が近付いてくる。
今は冒険者達の相手をしている者と事後処理に奔走している者で分かれており、この者は後者だ。
「あっ、すみません。つい話し込んでしまいました。」
「いえいえ、働き通しなんですから少しは休んでほしいくらいですよ。ですが緊急でお耳に入れたい情報がありまして。」
「では向こうに行きましょう。」
用事でミラが連れられていくのと変わる様にギルメンテが近付いてくる。
「兄貴、呑んでますか?」
既に酒を呑み過ぎて出来上がっている様子だ。
足取りがフラフラしておぼつかない。
「ギルメンテか、無事に生き残った様だな。」
「当たり前ですよ!」
見た目に大きな怪我は無いので無事スタンピードを乗り切った様だ。
誤解が解けてこれからは冒険者の知り合いとして仲良くやっていくつもりなので無事なのは何よりだ。
「魔物も結構倒しましたからね!兄貴の話しも聞かせて下さいよ!」
「ああ、別にいいぞ。」
「ジルさん、お取り込み中すみません。少しお時間宜しいですか?」
ギルメンテとスタンピードの話しをしようと思うと、先程連れられていったミラが戻ってきた。
その表情を見るに雑談に戻ってきた訳では無さそうだ。
「悪いなギルメンテ、また今度だ。」
「いえいえ、兄貴の分も俺がたらふく呑んでおきますよ!」
気分を害する事も無く、そのまま仲間達の下へと戻っていった。
「どうかしたのか?」
「実はジルさんが連れ帰った白衣の男性ですが、何者かに殺害されてしまったらしいです。」
戻ってきたミラが申し訳無さそうにジルに向けてそう言った。
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