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40章

元魔王様と三人目の魔法生命体 5

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 研究施設の中に多数召喚された魔物達。
どれもSランククラスの実力があって非常に厄介だ。

「これ程の数を用意しているとは、敵ながらよくやるものだ。」

 振り下ろされた魔物の凶悪な爪を銀月で弾きながら呟く。
一体だけならばそれ程苦労する事も無いのだが、同時に複数を相手にするとなるとさすがのジルも簡単には対処出来無い。

「ホッコ、こいつらはレベルが違い過ぎるから出てくるなよ。」

「クォン。」

 懐に入っているホッコに言い聞かせる。
ただ魔物を倒すだけで無く、ホッコを守りながら戦う必要がある。
普段よりも中々厳しい状況での戦闘だ。

「イレギュラーとは言えど、この戦力は予想外だっただろう?充分過ぎる時間稼ぎが出来ると言うものだ。」

 高みの見物とばかりに男が巻き込まれない位置から高笑いしつつ言う。

「逃げなくていいのか?」

「迎えは呼んでいる。残念ながら私は頭脳担当で戦闘は得意では無いのでな。」

 ここは魔の森の中でもかなり奥の方だと言っていた。
周りに生息する魔物は高ランクばかりであり、非戦闘員が生活出来る様な場所では無い。
一歩外に踏み出せば直ぐに魔物の餌となるだろう。

「つまりそれまでに我が殲滅すれば確保出来ると言う訳か。」

「そんな余裕があるのか?魔物の相手で手一杯に見えるぞ?」

 確かに目の前にいる魔物達はSランククラスの強さを持っているので簡単には倒せない。
今の状態だと男の迎えとやらが間に合ってしまう可能性が高い。

「ならば出し惜しみは無しといこう。我も援軍要請により急がねばならないからな。」

 セダンの街が魔物の大群に取り囲まれているとシキに聞いた。
ここで時間を消費して辿り着くのが遅れればセダンの街は落とされてしまうかもしれない。
早く現状を片付けてセダンの街に急行する必要がある。

「人数不利ならば人手を増やせばいいだけの事。時空間魔法、断絶結界!」

 自分の周囲に半円球状のドーム型の結界を作り出す。
その結界を魔物達が取り囲んで攻撃をしてくるが全て結界が防いでくれている。
しかしいつまでもSランククラスの魔物達の攻撃に耐えられるか分からないので急ぐ必要がある。

「久しぶりにお前に頼むとするか。」

 ジルが無限倉庫の中から取り出したのは、メイド服を身に付けた人の形をした機械だ。
魔王時代に造られたゴーレムに分類される多様性型機械人形、今は魔法生命体と呼んでいるものだ。

 今取り出したのはタイプBやタイプCと同じ様な姿をしているが、二人に比べると少し小さい。
特に意味は無いが造った時期が違うので見た目に多少の違いがあった。

「突然人が!?どこからきた!?」

『タイプD、起動しろ!』

 男が何か言っているが無視して言霊のスキルを使う。
名前を呼ばれたゴーレムの目に光りが灯る。
ジルの魔力と言霊のスキルが無ければ動かせないのはタイプBやタイプCと同じだ。

「マスター!」

 起動して直ぐにタイプDはジルに飛び付き、ジルの身体に全身でしがみついてくる。
タイプBやタイプCの様なメイドらしい立ち居振る舞いとは程遠く子供の様な無邪気さであるが、これがタイプDの平常運転だ。

「随分と久しぶりに起動してもらいました!タイプDはずっと待っていました!」

 ジルに呼び起こされたのが嬉しい様だ。
タイプDがその喜びを態度や言葉で伝えてくる。

「機会が無くて悪かったな。今後も状況次第では頼らせてもらう。」

「是非!」

 タイプDはジルの言葉に嬉しそうな表情を浮かべているが、その機会は中々訪れないかもしれない。
それはタイプDの力が関係している。

「それよりいつまでそうしているつもりだ?周りを見てみろ。」

 呑気に会話しているが魔物達に結界が攻撃されている真っ最中だ。
破られれば四方八方から攻撃が降り注ぐだろう。

「うわ、何やら色んな魔物に囲まれています!マスターとの再会の喜びに感動していて気付きませんでした!」

 どうやらタイプDの視界にはジルしか入っていなかった様だ。
マスターであるジルの事を想ってくれるのは他の二人と変わらない。

「こいつらの殲滅の為に力を貸してほしい。我は転生して弱体化しているのでな。」

「成る程、マスターのお姿が変わっているのは複雑な理由があるんですね!タイプDにお任せ下さい!」

 自信満々にそう言ってからジルの身体から手を離す。

「来たれ、魔杖まじょう夢現むげん!」

 タイプDが空中に手を伸ばしてそう言うと、手の中にジルの背丈をも上回る長杖が現れる。
美しく滑らかな木で作られた杖の先端には、様々な色が渦巻く不思議な球体が取り付けられている。
これは魔王時代にジルが作った魔法道具だ。

 タイプDの専用装備としてプレゼントした物であり、その力を大きく引き出してくれる。
神々の持つ神器に近い最高傑作とも言える魔法道具だ。

「ではマスターの敵を排除しますね!」

 長杖を構えたタイプD、別名超魔法特化型機械人形が魔物達を見据えて笑いながら呟いた。
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