【毎日更新】元魔王様の2度目の人生

ゆーとちん

文字の大きさ
上 下
337 / 772
37章

元魔王様と災厄の対策 8

しおりを挟む
 ジルの初撃によって早速人数を減らした剣の誓い。
いきなり四人に減ってしまったがAランクパーティーらしく、動揺する事も無く戦意は健在だ。

「我は仕事をしたから、後は任せる。」

 そう言ってジルは銀月を鞘に戻す。
そのまま後ろに下がって戦いを見守る事にして戦闘は二人に任せた。
実力者を一瞬で無力化させたので実力は示せただろう。

「あれを避けるなら、少しは楽しめそうだな。」

「平等に二人ずつ分ける。」

 二人は残った相手を見て嬉しそうに呟いている。

「ちっ、いつまでも舐めてくれる!」

 二人の態度に苛立ちながらギルメンテが素早く動きつつ剣を振ってくる。

「おっと、危ねえ。ギルメンテだったか?俺とやり合ってくれるのは嬉しいが、先に邪魔者の排除といかせてもらうぜ。」

「お楽しみは最後。」

 ギルメンテの攻撃を避けた後、それに構わず手負いの者に向けて二人は走り出す。
ジルの攻撃を回避した猛者の方とはじっくり楽しみたいので、残りの二人は早々に退場してもらう事にしたのだ。

「首狩り!」

 アレンが両手に持つ両刃斧を相手の首目掛けて振るう。
剣の誓いの者が迫る凶悪な斧を剣で防ごうとするが、威力が強くて強引に押し込まれてしまい、そのまま大きく吹き飛ばされて気を失った。

「武闘術・脚式きゃくしき、閃回脚!」

 膨大な魔力で片足を魔装したエルミネルは相手との距離を一瞬で詰め、身体をくるりと回転させて相手に回し蹴りを叩き込む。
流れる様な一連の動きに反応出来ず、相手はなす術無く吹き飛ばされて気を失った。

「っ!?俺のパーティーメンバーを一撃で!?」

 呆気無く倒されてしまった二人を見てギルメンテが驚愕の表情を浮かべている。
目の前で起こっている光景が信じられないと言った様子だ。

「次はお前の番だな。」

「楽しませて。」

 二人がニヤリと笑って残る相手に向かっていく。
そこから激しい戦いが繰り広げられ、10分程経過してもまだ続いている。
と言ってもアレンとエルミネルが遊んでいるだけで状況は一方的である。

「はぁはぁ、ちくしょう、何故この俺が低ランク相手に。」

「リーダー、こっちも限界です。」

 剣の誓いの二人は肩で息をしており体力も残り僅かと言った状況だ。

「なんだなんだ、だらしねえな。リハビリにもなんねえぞ。」

「もう少し楽しみたかったけど残念。」

 対する二人は全く息を乱しておらず、まだまだ戦えると言った様子だ。
予想外に早くバテてしまった二人を見て残念そうにしている。

「お前達早く終わらせろ。待たされているこちらの身にもなれ。」

 ただでさえ乗り気では無い模擬戦なのに、二人が楽しんでいるせいで時間が掛かってしまっている。
ジルとしてはさっさと終わらせて会議に戻りたい。

「だってよ、これ以上待たせると機嫌が悪くなりそうだし、そろそろ終わらせとくか。」

「分かった。足りない分は後でアレンとする。」

「いいぜ、付き合ってやるよ。」

 二人はまだまだ戦い足りない様子だ。
一応相手はAランクパーティーなのだが、実力的には少し物足りなかったらしい。

「お前達、随分と余裕な態度だがまだ終わってはいないぞ!」

 舐められている事に激怒してギルメンテが全身を魔装する。
最後の力を振り絞ってアレンを倒そうと特攻してくる。

「面白え!」

「終わらせる!」

 剣と戦斧が激しくぶつかり合い火花を散らす。
何度か至近距離で打ち合い、アレンが威力任せに戦斧を振るって無理矢理ギルメンテを弾き飛ばす。

「首斬り!」

 アレンが片方の戦斧をギルメンテ目掛けて放り投げる。
両方の柄が鎖で繋がっているのだが、鎖がどんどん伸びていっている。
戦斧だけで無く、鎖も含めて魔法道具なのだ。

「そんな単調な直線攻撃が当たるか!そして武器を減らしたな!」

 ギルメンテは真っ直ぐ飛んでくるだけの戦斧を少し動くだけで簡単に回避して、ジャラジャラと音を鳴らしながら真横で伸びている鎖の横を走る。
武器が片手だけとなり戦力ダウンしたアレンと決着を付けるつもりだ。

「そいつは勘違いって奴だな。首落とし!」

 柄同士を繋いでいた鎖が今度は急速に縮まっていく。
つまり投げていた戦斧が鎖に引かれてアレンの手元に戻ってくる事になる。
これにより何が起こるかと言うと、鎖が縮んで引き戻された戦斧によってアレンは後ろから強襲される事となる。

「かはっ!?」

 全く警戒していなかった首後ろへと戦斧が勢い良く激突する。
突然の強烈な衝撃に理解が追い付かず、そのままギルメンテは意識を失った。

「何が起こったか理解する前に気絶しちまったか?だが俺の勝ちだ。」

「私も勝った。」

 勝利ポーズを取っているエルミネルの近くで相手が白目を剥いて大の字で横たわっていた。

「勝者はジルちゃん達のチームよ。」

 ラブリートの宣言によって模擬戦が終了となる。
見ていた者達の反応としては驚愕が一番多かった。
低ランク即席パーティーがAランクパーティーを圧倒するなんて、この街に住んでいる者達でなければ誰も予想出来無かっただろう。

「どれだけ待たせてくれる、時間を掛け過ぎだ。」

 圧倒的に観戦時間の方が長かったジルが文句を言う。

「せっかくの高ランク冒険者との戦いなんだぜ?楽しみてえじゃねえか。」

「でも満足出来て無い。」

 実力的にはAランク冒険者の中でも上位に位置しそうな二人なので、同じランク帯でも満足出来る相手は少ないのだろう。

「そうだな、早速やるか?」

「うん。ジルもやる?」

「やらん。と言うか会議の途中だろうが。」

 ジルが指摘すると二人はそう言えばと言った表情をしている。
模擬戦に夢中で会議の途中だと言う事をすっかり忘れている二人だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...