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37章

元魔王様と災厄の対策 2

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 突然不思議な組み合わせで食事をする事になった。
アレンはボリューム満点のオーク肉のステーキを頬張り、エルミネルは具沢山のシチューを味わっている。

「美味いか?」

「クォン!」

 テーブルの上ではホッコが魔物の肉を食べて上機嫌だ。
小さな身体なのによく食べている。

「前にはいなかったよな?旅でテイムしたのか?」

 アレンが美味しそうに食事しているホッコを見ながら尋ねる。

「ああ、トレンフルに行った時にな。」

「ディバースフォクスをテイムするなんて凄い。一流テイマーになれる。」

「お前達でも出来そうだけどな。」

 この二人も相当な実力者には違い無い。
テイムする条件は様々だが実力を認めさせるだけなら充分だと思われる。

「それよりもお前達は討伐の帰りか?珍しい組み合わせだな?」

 どちらもソロで行動しているところしか見た事が無い。

「いや、ジルを見つけて一緒になっただけだな。目的は同じだろうがな。」

「会議の為にきた。エルロッドに呼ばれてるから。」

「成る程、お前達も会議か。」

 高ランク冒険者を集めた会議らしいが、この二人の実力であれば声が掛かるのも納得である。
実力的にスタンピードで活躍する事間違い無しなのだから、事前に色々と共有しておきたい。

「面倒だが受付嬢にしつこく言われてな。スタンピードをあまく見るなだってよ。会議は面倒だが死に掛けた身だからな。」

 Sランククラスの魔物と戦った際に呪いの武具の力を使い、アレンは死に掛けている。
それを心配され、更に激しい戦闘が予想される本番では、危険を減らす為にもう少し他の人と連携して動いてほしいと思われたのだろう。

「アレンでも死に掛けた魔物。楽しみ。」

「お前も気を付けた方がいいぜ?Sランクの魔物は本当に化け物だからな。相性的に有利で無ければ撤退しつつ、同じ化け物をぶつけるしかない。」

 アレンがエルミネルを注意しつつジルに視線を向ける。
化け物と言う言葉が誰を指しているのか一目瞭然だ。

「そこで我を見るな。」

「ジルが化け物なのは理解した。詐欺ランク。」

 セダンの街に来たばかりのエルミネルにも早くもDランクはおかしいと思われている様だ。

「それはお前達もだろう?Cランクでは無いな。」

 この二人も明らかにAランククラスはあるのでランク詐欺はお互い様だ。

「ランク止めねえと長期依頼で拘束されちまうからな。」

「私は戦えるから冒険者になった。面倒な事はあまりしたくない。」

 どちらもジルと同じ様な理由でランクを止めていた。
ランクを上げるメリットよりも、上げた事によるデメリットの方を気にする者も一定数いる様だ。

「似た物同士って事ね。」

 そう言って余った席に新たに人が座る。
セダンの街が誇る最強の冒険者、Sランクのラブリートだ。

「ラブリート、お前も会議か?」

「そうよ、時間もあるし相席してもいいかしら?」

「構わんぞ。」

 ラブリートは早速女性向けのデザートを注文している。
その巨漢には似合わないと思いながらも、誰もそんな事を口にする者はいない。

「それにしても期待の新星が勢揃いね。」

 テーブルに付く面々を見ながらラブリートが言う。

「俺達がか?」

「ええ、今回のスタンピードに参加する冒険者で私が注目している子ばかりよ。」

 ジルは以前から気に入られていたが、アレンや街に来たばかりのエルミネルも同様に気に入られている様だ。

「Sランクに認められて嬉しい。」

 冒険者のトップからの言葉にエルミネルは感動している様子だ。

「ギルマスの知り合いなんですってね。期待してるわよ。」

「頑張る。今度是非模擬戦してほしい。」

「暇な時なら受けてあげるわ。」

「嬉しい。」

 ラブリートの返答に目をキラキラとさせて嬉しそうな表情をしながらエルミネルが呟く。
冒険者のトップクラスとの模擬戦なんて望んでも簡単に出来る事では無いので喜ぶのも分かる。

「ラブリートが模擬戦を受けるなんて珍しいな?」

「そうかしら?有望株は育成の意味も込めて訓練は結構受けているから、アレンちゃんに誘われても受けるわよ?」

 ジルと違ってメリット等は気にせず、認めている者との模擬戦は普通に受けているらしい。
Sランク自らの育成とは豪華である。

「実力が違い過ぎて経験になる気がしねえな。」

 ラブリートの言葉に嫌そうな表情を浮かべるアレン。

「ならジルちゃんに頼む?」

「同じだ。お前達とやっても瞬殺されて終わりだ。」

 アレンの中では絶対に敵わない化け物として、ジルとラブリートが登録されている様だ。

「もう、最近の若い子は向上心が足りないわね。昔は毎日の様にお誘いがあって退屈しなかったわよ?」

「そう言う奴らは向上心と言うよりかは物珍しさや度胸試しで挑んでるだけだと思うけどな。」

 最強の冒険者と言われるランク帯の実力をノーリスクで経験出来るのであれば誰もが模擬戦を挑みたいと思うだろう。

「まあ、アレンはもう少し自力が欲しいところではあるな。Sランクの魔物と渡り合えるくらいには。」

「確かにそうね、武器に頼り過ぎてる節があるわ。」

「うるせえ、化け物共が。」

 アレンはそう言ってやけ食いする様にステーキに大きな口で齧り付いた。
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