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33章

元魔王様と討伐競争 8

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 暫く魔物を狩り続けていると終了時間が迫ってくる。
今日は日帰りの予定なのでダンジョンに泊まるつもりは無い。
そろそろ引き上げないと日が沈んでしまう。

「影丸、終了だ。皆のところに向かうぞ。」

「ウォン!」

 影丸は視界に映っている魔物達を全て影の槍にて貫きドロップアイテムに変える。
鎧も二つ程最後に手に入り、上々の成果であった。

「ナキナは直ぐ近くだな。下か。」

 時空間魔法の空間把握を使用して皆の位置を調べる。
ナキナは階層が違うが直ぐ側にいた。

「超級風魔法、インパクトブレイク!」

 ダンジョンの床を風魔法による衝撃で崩落させる。
丁度良い穴が空いたので影丸が飛び込んで下の階層に降る。
少し離れた場所ではこちらを警戒する様にナキナが小太刀を構えていた。

「ジル殿じゃったか。突然ダンジョンの天井が崩れたから何事かと思ったぞ。」

 正体が分かったので警戒を解いて小太刀を仕舞う。

「悪かったな。一々階段を探すのは手間だったんだ。」

「終了と言う事かのう?」

「ああ、これからシキ達の下へ向かうから乗ってくれ。」

 ナキナが影丸の背中に乗ったのを確認してから、再び天井の穴を抜けて16階層に戻る。
人を二人とスライム一匹くらい乗せても影丸が疲労を感じる事は無く、軽やかな動きに影響が出る心配も無い。

「少し離れているがこっちの方角にいるな。と言うか大丈夫か?」

「何がじゃ?」

「シキ達のいる場所の周辺に魔物が集まっているんだ。」

 空間把握で位置を認識出来たが同時に大量の魔物も認識出来た。
相当な量の魔物に囲まれている様である。
連絡をしてきていないので危機的状況とまではいかないのかもしれないが、とにかく数が多い。

「何かあったのかのう?取り敢えず影丸、急いで向かってみるのじゃ。」

「ウォン!」

 影丸がジルの示した方向に向かってダンジョンを駆け抜ける。
空間把握によって迷路の様な作りも全て認識しているので、迷う事無くシキ達の場所までいける。

「魔物も同じ方向に向かっていってるな。」

「凄い数じゃのう。」

 シキ達の方に向かっていると同じくそちらに向かう魔物を大量に見つける。
一応時間は過ぎているのでカウントはしないが倒してドロップアイテムに変えて回収しておく。

「そろそろ着くぞ。」

「何か聞こえてくるのう。」

 耳を澄ますと確かに向かう方角から声が聞こえてくる。

「タイプB、頑張るのです!ホッコ、そっちにもいったのです!」

 これはシキの声だ。
声色からそれ程危険な状況では無さそうである。
16階層の魔物なのでタイプBとホッコがいて苦戦する様な事も無いだろう。

「シキ、終了の時間だぞ。」

「す、凄い数じゃのう。」

 部屋を覗き込むと大量の魔物と戦うタイプBとホッコ、そして安全な場所でドロップアイテムを拾うシキの姿があった。
ジルは事前に知っていたが魔物の数を知らなかったナキナは驚いていた。

「了解なのです。じゃあ今から拾うのはカウントしないのです。」

「一先ず倒すのに協力するぞ。」

「了解じゃ。」

 ジル達も残っている大量の魔物を倒すのに加勢した。
全員で取り掛かれば直ぐに殲滅する事が出来た。
そして床には一面ドロップアイテムが落ちている。

「ボーナスタイム終了なのです。」

「魔物が常に向かってきていましたから、シキ様の作戦は上手く機能しましたね。」

「クォン!」

 シキ達が大量に魔物を倒せたと喜び合っている。
ジル達が到着した段階でも凄まじい数の魔物がいたので、あれを狩り続けていたとなれば相当な成果となっていそうだ。

「一体何をしたのじゃ?」

「タイプBにハンマーで暴れてもらっただけなのです。」

「あの轟音はタイプBか。」

「妾も聞こえておったぞ。」

 離れた場所や階層違いでも聞こえる程に大きな音であった。

「ダンジョンの魔物は外敵を排除しようと動く習性があるのです。だからわざと大きな音を出して誘き寄せたのです。」

 ダンジョンで普通は鳴り響かない様な音を出し続ければ、魔物達が外敵と判断して近付いてくる。
それをハンマーで音を出しながら排除していれば、一つの永久機関の様になるのだ。

「ダンジョンの魔物がそんな習性を持っていたとはな。」

「さすがはシキ殿、知識の宝庫じゃのう。」

 ダンジョン初見のナキナはともかくジルも知らない事であった。
知識の精霊として蓄えてきた膨大な知識の一部が役に立った。

「それ程でもあるのです。勝者はもらったも同然なのです。」

「それはどうだろうな。影丸の足の速さは相当だったぞ。」

「妾も17階層を独占していた様じゃからのう。結果が楽しみじゃ。」

 ドロップアイテムの確認はギルドでする事にして、ジル達はダンジョンから出でトレンフルの街に帰還した。
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