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26章

元魔王様と絶品魚料理 2

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 正しい内容の授業をしていればいつかは気付かれると思っていたが予想外に早かった。
自分の首を締めてしまっているが、授業をしっかりと聞いて覚えてくれているのは嬉しい事だ。

「何か爆裂魔法を使えない事情でもあるのですか?それとも例外的に適性が無いのでしょうか?」

「なんで黙るのよ。」

 ブリジットは聞かない方がよかったのかと少し遠慮気味である。
逆にルルネットは黙っていないで返答してほしそうだ。

「ふむ、事情はあると言えばあるが…。他言無用の条件を守れるのならば教えてやってもいい。」

 少し悩んだがこの者達なら教えても問題無いだろうと言う結論に至った。
ブリジットとはそれなりにやり取りする事があったし、ルルネットは数日の付き合いだが人柄は見えてきており、秘密を言いふらしたりはしなさそうだ。

「守るわ!」

「他人の秘密を無闇に口にする様な事はしません。サリーも宜しいですね?」

「はい、お嬢様の言であれば命に変えても。」

 約一名言葉が重いが、二人が信用していてそこまで言うのならサリーの事も信じられる。
授業はサリーにも一緒に聞かれているので、ジルに爆裂魔法の適性がある事はバレているだろう。

「ならば話そう。当然我は爆裂魔法を使える。それ以外にも幾つか適性を持っている。」

 トレンフルで暫く生活していくのなら、ある程度公言しておいた方が行動しやすいだろう。
明確に使える魔法を全て教える訳では無いが、それなりに使える事は仄めかしておく。

「へぇ~、ジルって優秀な魔法使いだったのね。」

「魔法使いと言う分類なのでしょうか?」

 ジルと模擬戦をしたブリジットは少し疑問を浮かべているが構わず続ける。

「人前で火魔法しか使わないのは適性の多さを知られたく無いからだ。厄介事に巻き込まれたく無いからな。」

「成る程、そう言う事でしたか。」

「どう言う事?」

 直ぐにブリジットが意図を把握してくれたがルルネットはよく分かっていないみたいだ。

「魔法の適性を幾つも持つ様な優秀な冒険者であれば、囲って手元に置きたいと考える者は多いでしょう。特にそう言った貴族は多く、自分さえ良ければ他者の気持ちを考えない様な方も多いですから、知られたくない気持ちも分かります。」

 分かっていない様子のルルネットに説明してくれる。
実際にジルが一番気にしているのもそこである。
権力ばかりあってこちらの話しを聞かない面倒な貴族に知られるのだけは避けたい。

「成る程ね。それでジルは隠していたのね。」

「そう言う事だ。」

「ちなみに冒険者になる際のギルドカード作成はどう突破したのですか?」

 ブリジットがふと疑問に思ったのか尋ねてくる。
冒険者カードに記される魔法の適性について言っているのだろう。

「まあ、魔法道具で少しな。」

 スキルとは言わずに魔法道具のせいにしておく。
スキルとバレたらどれだけ隠し事をしているのかと言う話しになりそうだ。

「…聞かなかった事にしておきます。」

 そう呟いてブリジットは何事も無かったかの様に紅茶を飲んでいる。
最後の話しだけは見て見ぬふりをしてくれる様だ。

 ギルドカードを作る際に内容の改竄をする行為は当然よろしくは無い。
ギルド側がそれも参考にして冒険者の力量を把握しているからだ。

 適性によって見合った依頼を紹介したり指名依頼をしたりもするので重要な項目となっている。
それでもブリジットが見逃す事にしたのは、内容を盛った改竄では無かったからだ。

 自分を強く有能に見せようとする改竄であればギルド側に大きな迷惑が掛かるのだが、そうでなければそれ程迷惑を掛ける事にもならないだろうとの判断である。

「それじゃあ早速見せてよ!」

「いいだろう。ルルネット、そこの小石を遠くに投げてみろ。」

「分かったわ!」

 ルルネットは言われた通りにジルが指差した落ちている小石を拾う。
そして振りかぶってその小石を遠くに投げる。
訓練用の的が置かれている方に弧を描いて小石が飛んでいく。

「クイックボム!」

 座ったまま小石を捕捉して指をパチンと一回鳴らす。
すると空中を移動していた小石がボンッと言う爆発音と共に小さな爆煙に包まれる。
その直後に爆煙の中から小石が地面に落下する。
小石はジルの爆裂魔法によって少し表面が削れていた。

「これが初級爆裂魔法のクイックボムだ。参考になったか?」

 ルルネットに尋ねると三人が小石のある方を見ている。

「確かクイックボムは発動は早いですが少し熱いと感じるだけの爆煙を発生させる、攻撃力の無い魔法だったと記憶しているのですけど…。」

「少しとは言っても小石を削っているわね…。」

 本来の魔法とは違って攻撃性がある威力を発揮したジルの魔法を見て、サリーを加えた3人が呆然としているのだった。
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