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25章
元魔王様と魔法の授業 7
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もっと幼い頃からルルネットは戦闘訓練を自主的にしており、ブリジットが騎士団を率いている事もあって、その相手は自然とブリジットや騎士達となっていた。
しかし幼いルルネットが戦闘経験豊富な騎士団の者達と戦っても、鍛えてきた時間の差や体格等が騎士よりも明らかに劣っているので当然勝つ事は出来無かった。
手加減をしてもらったり騎士達に武器無し等の縛りを付ければ良い勝負にもなるのだが、負けず嫌いな性格のルルネットはそれが嫌だった。
普通に戦っても負けるのを仕方が無い事だと思って諦めたくなかったので勝てる方法を必死に考えた。
そして詠唱破棄であればそれなりに戦闘経験豊富な者達にも通じるのではないかと思い付いた。
だが詠唱破棄の初級や中級は騎士団でも扱える者はそれなりにいる。
逆に超級や極級はブリジットも出来無いので現実的では無い。
そうなると残るのは上級の詠唱破棄だけだ。
上級の中でも自分の戦闘スタイルに相性が良さそうなフレイムエンチャントだけを詠唱破棄が出来る様に毎日毎日ひたすら使い続けた。
そしてルルネットの頑張りが身を結び、幼いながらも上級の詠唱破棄を身に付けたのだ。
これにはブリジットを始めとして騎士団の誰もが驚いた。
ルルネットは騎士団の者達に通用する攻撃力を手に入れられたので、模擬戦を挑みまくった。
しかし次の問題が発生した。
それは攻撃が当たらないのである。
大人と子供では身体能力やリーチの差があって攻撃力が上がっても避けられたり防がれたりしてしまった。
そこで素早く動ける様になる為の手段として魔装を身に付けようと考えた。
自分が早く動ければいいので魔装は足だけの訓練でよく、他の箇所の訓練分も足だけに回したので意外と早く身に付ける事が出来た。
そこまでしてしまえば騎士達とも良い勝負を出来る様になり、普通に模擬戦をして勝てる時もあった。
結果、ルルネットは近接超特化型の尖った戦闘スタイルとなったのだ。
まだ幼い子供と考えると凄まじい実力ではあるが、色々犠牲にしたので近接戦闘以外殆ど何も出来無いのである。
「成る程、それで使える詠唱破棄の火魔法がフレイムエンチャントだけで、魔装も足しか出来無いと言う訳か。」
ジルの言葉にルルネットが頷く。
「なんとも極端な戦闘スタイルだな。」
「それは自覚してるわよ。でも普通に強くなろうとして頑張ってても、経験で劣ってるからずっと負けっぱなしになって嫌になるじゃない。」
確かに強くなろうと模擬戦を沢山しても全て負けではモチベーションが保てないだろう。
手加減等をしてもらわなくても自分で勝ちを掴みたいのだ。
「お前の気持ちも理解は出来る。それに既に戦闘スタイルが固まっているのなら、やる事は簡単ではないか。」
「そうなの?」
ルルネットは極端過ぎる戦闘スタイルに頭を抱えられるのではないかと思っていたので少し安心する。
「ああ、今のをベースに後は手札を増やしていけばいい。先ずは魔装を足以外でも出来る様に訓練、そして火魔法の初級や中級、爆裂魔法の初級等を覚えて遠距離の攻撃手段も手に入れればいい。結界魔法も有用な物を使えるなら取り入れたいところだ。」
近接戦闘スタイルで慣れているのであれば、それはそのままでいい。
そのスタイルをあまり崩さないまま、やれる事を増やして取り入れていけばルルネットは更に強くなれるだろう。
体格や実戦経験については直ぐにどうにもならないので、魔装の訓練くらいしか近接戦闘能力を上げる手段は無い。
なので魔装以外にも他の戦闘手段となる魔法を訓練すれば、近接戦闘しか出来ない特化型から、遠距離攻撃や防衛手段を持つ近接戦闘型へとなる事が出来る。
やれる事が増える程に相手からすれば厄介となる。
遠距離攻撃手段を一つ手に入れるだけでも、普段相手をしている騎士達は厄介だと感じる様になるだろう。
「簡単に言ってくれるわね。この二つを出来る様にするだけでも数年掛かったのよ?」
「逆に言えばその歳で二つ出来る様にしたのは才能だ。その負けず嫌いな性格なら直ぐに物に出来るだろう。」
一部分の魔装と一つの上級魔法の詠唱破棄と言っても、それらは冒険者でも出来る者は少ない。
ルルネットが強くなりたい一心で毎日愚直に取り組んだ結果である。
ここまで取り組める者は中々いない。
「そ、そうかな?」
ジルに褒め言葉を貰ったルルネットは嬉しそうに頰を掻いている。
歳相応の子供らしい笑顔だ。
「時々実戦的な訓練も付けてやるが、それはルルネットの頑張り次第だな。」
「私は強くなる為なら当然頑張るわよ!」
ルルネットが自信に満ちた顔で言う。
姉であるブリジットが認めた存在が講師となってくれるのだ、ルルネットもやる気が出ると言うものである。
「そうか、ならば今日はここまでとしよう。明日までに間違った知識を忘れ、座学の内容は全て覚えておけよ。」
「えっ、ちょっ!」
ルルネットはその言葉を聞いて何かを言おうとしたみたいだが、ジルは今日の授業は終わったとばかりに直ぐに部屋を出ていってしまった。
学校で教わってきた魔法の知識とジルの教えてくれた内容は随分と違っていた。
それを一日で覚えろとは中々の鬼講師である。
扉を見て唖然としているルルネットを見て、ブリジットとメイドは少しだけ憐れみの視線を向けていた。
しかし幼いルルネットが戦闘経験豊富な騎士団の者達と戦っても、鍛えてきた時間の差や体格等が騎士よりも明らかに劣っているので当然勝つ事は出来無かった。
手加減をしてもらったり騎士達に武器無し等の縛りを付ければ良い勝負にもなるのだが、負けず嫌いな性格のルルネットはそれが嫌だった。
普通に戦っても負けるのを仕方が無い事だと思って諦めたくなかったので勝てる方法を必死に考えた。
そして詠唱破棄であればそれなりに戦闘経験豊富な者達にも通じるのではないかと思い付いた。
だが詠唱破棄の初級や中級は騎士団でも扱える者はそれなりにいる。
逆に超級や極級はブリジットも出来無いので現実的では無い。
そうなると残るのは上級の詠唱破棄だけだ。
上級の中でも自分の戦闘スタイルに相性が良さそうなフレイムエンチャントだけを詠唱破棄が出来る様に毎日毎日ひたすら使い続けた。
そしてルルネットの頑張りが身を結び、幼いながらも上級の詠唱破棄を身に付けたのだ。
これにはブリジットを始めとして騎士団の誰もが驚いた。
ルルネットは騎士団の者達に通用する攻撃力を手に入れられたので、模擬戦を挑みまくった。
しかし次の問題が発生した。
それは攻撃が当たらないのである。
大人と子供では身体能力やリーチの差があって攻撃力が上がっても避けられたり防がれたりしてしまった。
そこで素早く動ける様になる為の手段として魔装を身に付けようと考えた。
自分が早く動ければいいので魔装は足だけの訓練でよく、他の箇所の訓練分も足だけに回したので意外と早く身に付ける事が出来た。
そこまでしてしまえば騎士達とも良い勝負を出来る様になり、普通に模擬戦をして勝てる時もあった。
結果、ルルネットは近接超特化型の尖った戦闘スタイルとなったのだ。
まだ幼い子供と考えると凄まじい実力ではあるが、色々犠牲にしたので近接戦闘以外殆ど何も出来無いのである。
「成る程、それで使える詠唱破棄の火魔法がフレイムエンチャントだけで、魔装も足しか出来無いと言う訳か。」
ジルの言葉にルルネットが頷く。
「なんとも極端な戦闘スタイルだな。」
「それは自覚してるわよ。でも普通に強くなろうとして頑張ってても、経験で劣ってるからずっと負けっぱなしになって嫌になるじゃない。」
確かに強くなろうと模擬戦を沢山しても全て負けではモチベーションが保てないだろう。
手加減等をしてもらわなくても自分で勝ちを掴みたいのだ。
「お前の気持ちも理解は出来る。それに既に戦闘スタイルが固まっているのなら、やる事は簡単ではないか。」
「そうなの?」
ルルネットは極端過ぎる戦闘スタイルに頭を抱えられるのではないかと思っていたので少し安心する。
「ああ、今のをベースに後は手札を増やしていけばいい。先ずは魔装を足以外でも出来る様に訓練、そして火魔法の初級や中級、爆裂魔法の初級等を覚えて遠距離の攻撃手段も手に入れればいい。結界魔法も有用な物を使えるなら取り入れたいところだ。」
近接戦闘スタイルで慣れているのであれば、それはそのままでいい。
そのスタイルをあまり崩さないまま、やれる事を増やして取り入れていけばルルネットは更に強くなれるだろう。
体格や実戦経験については直ぐにどうにもならないので、魔装の訓練くらいしか近接戦闘能力を上げる手段は無い。
なので魔装以外にも他の戦闘手段となる魔法を訓練すれば、近接戦闘しか出来ない特化型から、遠距離攻撃や防衛手段を持つ近接戦闘型へとなる事が出来る。
やれる事が増える程に相手からすれば厄介となる。
遠距離攻撃手段を一つ手に入れるだけでも、普段相手をしている騎士達は厄介だと感じる様になるだろう。
「簡単に言ってくれるわね。この二つを出来る様にするだけでも数年掛かったのよ?」
「逆に言えばその歳で二つ出来る様にしたのは才能だ。その負けず嫌いな性格なら直ぐに物に出来るだろう。」
一部分の魔装と一つの上級魔法の詠唱破棄と言っても、それらは冒険者でも出来る者は少ない。
ルルネットが強くなりたい一心で毎日愚直に取り組んだ結果である。
ここまで取り組める者は中々いない。
「そ、そうかな?」
ジルに褒め言葉を貰ったルルネットは嬉しそうに頰を掻いている。
歳相応の子供らしい笑顔だ。
「時々実戦的な訓練も付けてやるが、それはルルネットの頑張り次第だな。」
「私は強くなる為なら当然頑張るわよ!」
ルルネットが自信に満ちた顔で言う。
姉であるブリジットが認めた存在が講師となってくれるのだ、ルルネットもやる気が出ると言うものである。
「そうか、ならば今日はここまでとしよう。明日までに間違った知識を忘れ、座学の内容は全て覚えておけよ。」
「えっ、ちょっ!」
ルルネットはその言葉を聞いて何かを言おうとしたみたいだが、ジルは今日の授業は終わったとばかりに直ぐに部屋を出ていってしまった。
学校で教わってきた魔法の知識とジルの教えてくれた内容は随分と違っていた。
それを一日で覚えろとは中々の鬼講師である。
扉を見て唖然としているルルネットを見て、ブリジットとメイドは少しだけ憐れみの視線を向けていた。
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