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19章
元魔王様と領主の依頼 8
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大事な行商に強力な護衛としてジルを付けられれば成功は約束されたも同然だ。
依頼主としては是非信頼出来る者を付けたい。
「無理にとは言わんで。でもジルさんが付いてきてくれたら百人力や。」
シュミットは目の前でアーマードベアと言う魔物をジルが軽々と倒したのを実際に見ている。
冒険者では無いが多少戦闘の心得があるシュミットから見てもその実力は凄まじいとはっきり分かる。
「お前らの目的は収納の方だろう?」
ジルの言葉に二人がビクッと身体を震わせる。
「な、何の事かな~。」
「わ、わいは強い護衛がいれば安心出来るなって思っただけやで~。」
二人は露骨に視線を逸らしながら言う。
その行動がよく物語っている。
「なら他を当たるんだな。」
強い護衛と言う条件だけであれば高ランク冒険者を雇えば事足りる。
わざわざジルを雇わなくてもいいだろう。
「ま、待って待って!分かった正直に言うよ!」
「ジルさんのスキルが借りられると、わいらも助かるんや!」
ジルが今にも帰ろうとしているのを見て二人は慌てて止めながら本音を言う。
ジルの言った通り二人の目的は収納であった。
馬車では積載量に限界がある。
どれだけ沢山の物を仕入れたいと思っても限界はあり、数を望めば馬車の量も比例して増える事になる。
馬車が増えれば護衛や馬の餌も同じく増える事となり金は幾らあっても足りない。
しかしそう言った問題を一気に解決する手段をジルは持っている。
それがジルの持つ無限倉庫のスキルだ。
収納量に上限が無く、買い付けたい分だけ際限無く買える。
更にスキル内に収納しているので奪われる心配も無い。
二人もこの業界は長いがジルを襲って確実に奪える者に心当たりなんて無い。
「そんな事だろうとは思った。」
運搬においてジル程ぴったりな人材はいない。
二人としては是非ジルに頼みたかったのだ。
「勿論収納だけで無くジル君の実力も理解しているつもりだよ。両方を兼ね備えたジル君に引き受けてもらうのが私達の最善だね。護衛依頼としてそれなりに報酬は出すから引き受けてくれないかな?」
「景色は絶景、料理も美味い最高の街やで?」
トゥーリの言葉はあまり響かなかったがシュミットの言葉に少し心が揺らぐ。
さすがはやり手の商人、相手の気にいる事や気分を良くする事を言って交渉を上手く運ぶ手腕は見事だ。
美味い料理と言われれば興味は出てくる。
「うーむ、護衛依頼か。ちなみにセダンからどれくらい離れているんだ?」
もう少しだけ話しを聞いてから判断しようと説明を求める。
「片道2週間やな。」
「それは遠いな。」
ジルはそれを聞いて悩んでしまう。
護衛依頼なのだからその期間シュミットの側を離れられず拘束される事になる。
自分達だけならば魔法による移動時間大幅短縮の爆速移動が出来るのだがシュミットの前ではそれも難しい。
「トゥーリ様、駄目そうやな。」
「やっぱ乗り気になれないよね。予想は付いてたんだけど。」
二人は残念そうにしながら言う。
ジルの事を考えれば予想通りではあるのだが、それでも引き受けてくれれば助かったのも事実だ。
「トゥーリなら我が面倒事を嫌っているのを知っているだろう?」
「私と君の仲だから引き受けてくれないかなって少し期待したんだよ。」
領主と平民と言う身分も立場も全然違う二人ではあるが、それに関係無くお互いにフランクで接しやすい関係を築いている。
「せやったらギルドで同行者探すしかないな。まあ、トレンフルやったら行きたがる奴もおるやろ。」
「そうだね。私からの依頼だから報酬も普通より少し高いし。」
二人は諦めて別の護衛を探す事に決めた。
海沿いの綺麗な街で料理も美味しいので、男女共に人気がある。
なので冒険者に依頼すれば誰かしらは引き受けてくれる。
「ちょっと待て、トレンフルだと?」
「ブリジットの住む街なのです!」
二人の会話から聞き覚えのある言葉が聞こえて反応する。
以前街を行商の護衛として訪れた女騎士のブリジットと、その内訪れると約束した町の名前がトレンフルである。
「ん?二人共ブリジット殿と面識あったの?」
ブリジットと会った時にはトゥーリはいなかったのでその件は知らない。
貴族であるブリジットと繋がりがあるとは思わなかった。
「ああ、この前模擬戦をした仲だ。」
シキの主人であるジルの強さを確かめたいと模擬戦を挑まれた。
元契約者としてその心配は分かるので引き受けたのだ。
「へえ、それは知らなかったよ。」
「その時に今度領に行く約束をしていたのです。」
詳しい時期は決めていないが約束は取り付けた。
なのでその内トレンフルには行かなければならない。
「なんやて!最高のタイミングやないか!」
シュミットはそれを聞いて喜んでいる。
ジルを護衛として連れていける可能性はまだ残されていると分かったからだ。
「それならこの機会に護衛として行ってみるのはどうかな?」
どうせ行く予定ならば護衛ついでに行けばいいとの提案だ。
それを聞いてジルは再び悩む。
当初は魔法で手早く向かうつもりだったので、そんな長期間の移動は想定していなかった。
「たまには長旅もいいと思うのです。」
助け舟と言う訳では無いと思うが悩んでいるジルにシキが言ってきた。
それを見た二人はうんうんと同意する様に何度も頷いている。
「妾も海は見た事が無いから行ってみたいのう。」
ナキナも興味があるのかシキの言葉に続いて言う。
集落での暮らしが長かったナキナは森の中以外の生活はあまり知らないのだろう。
純粋に見てみたいと思ってのナキナの発言に、またもや二人はうんうんと同意する様に何度も頷いていた。
「分かった、仲間達も乗り気みたいだから依頼を受けるとしよう。」
最終決定権を持つジルがそう宣言するとトゥーリとシュミットはハイタッチして喜んでいた。
依頼主としては是非信頼出来る者を付けたい。
「無理にとは言わんで。でもジルさんが付いてきてくれたら百人力や。」
シュミットは目の前でアーマードベアと言う魔物をジルが軽々と倒したのを実際に見ている。
冒険者では無いが多少戦闘の心得があるシュミットから見てもその実力は凄まじいとはっきり分かる。
「お前らの目的は収納の方だろう?」
ジルの言葉に二人がビクッと身体を震わせる。
「な、何の事かな~。」
「わ、わいは強い護衛がいれば安心出来るなって思っただけやで~。」
二人は露骨に視線を逸らしながら言う。
その行動がよく物語っている。
「なら他を当たるんだな。」
強い護衛と言う条件だけであれば高ランク冒険者を雇えば事足りる。
わざわざジルを雇わなくてもいいだろう。
「ま、待って待って!分かった正直に言うよ!」
「ジルさんのスキルが借りられると、わいらも助かるんや!」
ジルが今にも帰ろうとしているのを見て二人は慌てて止めながら本音を言う。
ジルの言った通り二人の目的は収納であった。
馬車では積載量に限界がある。
どれだけ沢山の物を仕入れたいと思っても限界はあり、数を望めば馬車の量も比例して増える事になる。
馬車が増えれば護衛や馬の餌も同じく増える事となり金は幾らあっても足りない。
しかしそう言った問題を一気に解決する手段をジルは持っている。
それがジルの持つ無限倉庫のスキルだ。
収納量に上限が無く、買い付けたい分だけ際限無く買える。
更にスキル内に収納しているので奪われる心配も無い。
二人もこの業界は長いがジルを襲って確実に奪える者に心当たりなんて無い。
「そんな事だろうとは思った。」
運搬においてジル程ぴったりな人材はいない。
二人としては是非ジルに頼みたかったのだ。
「勿論収納だけで無くジル君の実力も理解しているつもりだよ。両方を兼ね備えたジル君に引き受けてもらうのが私達の最善だね。護衛依頼としてそれなりに報酬は出すから引き受けてくれないかな?」
「景色は絶景、料理も美味い最高の街やで?」
トゥーリの言葉はあまり響かなかったがシュミットの言葉に少し心が揺らぐ。
さすがはやり手の商人、相手の気にいる事や気分を良くする事を言って交渉を上手く運ぶ手腕は見事だ。
美味い料理と言われれば興味は出てくる。
「うーむ、護衛依頼か。ちなみにセダンからどれくらい離れているんだ?」
もう少しだけ話しを聞いてから判断しようと説明を求める。
「片道2週間やな。」
「それは遠いな。」
ジルはそれを聞いて悩んでしまう。
護衛依頼なのだからその期間シュミットの側を離れられず拘束される事になる。
自分達だけならば魔法による移動時間大幅短縮の爆速移動が出来るのだがシュミットの前ではそれも難しい。
「トゥーリ様、駄目そうやな。」
「やっぱ乗り気になれないよね。予想は付いてたんだけど。」
二人は残念そうにしながら言う。
ジルの事を考えれば予想通りではあるのだが、それでも引き受けてくれれば助かったのも事実だ。
「トゥーリなら我が面倒事を嫌っているのを知っているだろう?」
「私と君の仲だから引き受けてくれないかなって少し期待したんだよ。」
領主と平民と言う身分も立場も全然違う二人ではあるが、それに関係無くお互いにフランクで接しやすい関係を築いている。
「せやったらギルドで同行者探すしかないな。まあ、トレンフルやったら行きたがる奴もおるやろ。」
「そうだね。私からの依頼だから報酬も普通より少し高いし。」
二人は諦めて別の護衛を探す事に決めた。
海沿いの綺麗な街で料理も美味しいので、男女共に人気がある。
なので冒険者に依頼すれば誰かしらは引き受けてくれる。
「ちょっと待て、トレンフルだと?」
「ブリジットの住む街なのです!」
二人の会話から聞き覚えのある言葉が聞こえて反応する。
以前街を行商の護衛として訪れた女騎士のブリジットと、その内訪れると約束した町の名前がトレンフルである。
「ん?二人共ブリジット殿と面識あったの?」
ブリジットと会った時にはトゥーリはいなかったのでその件は知らない。
貴族であるブリジットと繋がりがあるとは思わなかった。
「ああ、この前模擬戦をした仲だ。」
シキの主人であるジルの強さを確かめたいと模擬戦を挑まれた。
元契約者としてその心配は分かるので引き受けたのだ。
「へえ、それは知らなかったよ。」
「その時に今度領に行く約束をしていたのです。」
詳しい時期は決めていないが約束は取り付けた。
なのでその内トレンフルには行かなければならない。
「なんやて!最高のタイミングやないか!」
シュミットはそれを聞いて喜んでいる。
ジルを護衛として連れていける可能性はまだ残されていると分かったからだ。
「それならこの機会に護衛として行ってみるのはどうかな?」
どうせ行く予定ならば護衛ついでに行けばいいとの提案だ。
それを聞いてジルは再び悩む。
当初は魔法で手早く向かうつもりだったので、そんな長期間の移動は想定していなかった。
「たまには長旅もいいと思うのです。」
助け舟と言う訳では無いと思うが悩んでいるジルにシキが言ってきた。
それを見た二人はうんうんと同意する様に何度も頷いている。
「妾も海は見た事が無いから行ってみたいのう。」
ナキナも興味があるのかシキの言葉に続いて言う。
集落での暮らしが長かったナキナは森の中以外の生活はあまり知らないのだろう。
純粋に見てみたいと思ってのナキナの発言に、またもや二人はうんうんと同意する様に何度も頷いていた。
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