172 / 736
19章
元魔王様と領主の依頼 1
しおりを挟む
再びバイセルの街に戻って盗賊達を引き渡し、今度こそジル達はセダンの街に向けて飛び立った。
依頼した天使や盗賊の情報を即座に把握出来ていなかったのか、街に戻っても貴族に押し掛けられる事も無かった。
「もう直ぐ到着するぞ。」
前方を見ながらスカイの背中に乗っている皆に向けてダナンが言う。
その声を聞いて眠そうにしていた者達がようやく到着かと背伸びしている。
貴族だけで無く送り込まれた天使や盗賊とも一騒動あったので早くセダンの街に帰りたかった。
夜通し飛んだ事もあり明け方には到着出来そうだ。
「あれが普段ジル殿達が過ごしておる街なんじゃな?」
遠くに見えてきた街並みを見てナキナが呟く。
「ああ、中々住み心地がいいぞ。」
「仲の良い知り合いも沢山出来たのです!」
転生してからずっと同じ街で暮らしているので良好な関係を築けた者も増えてきた。
それに街のトップである領主とも気楽な関係を築けているのは生活する上で便利である。
「妾も楽しみなのじゃ。」
「本当にこっちで暮らしていくのか?」
「うむ、ジル殿達が迷惑で無ければ、妾も近くで共に過ごさせてほしい。」
ナキナの事についてはスカイの背中で飛んでいる最中に軽く聞かせてもらった。
これからは仲間に加えてもらいセダンの街で暮らし、一緒に行動させてほしいとの事だった。
元々何も言わずに集落を出ていったジル達を探す為に旅に出たらしい。
そして会ったらお礼として役に立って恩返しをするつもりだったとか。
「我は別に構わないが、共に行動したいのなら勝手な行動はするなよ。」
ジルがすんなりと受け入れた事にナキナは驚いていた。
断られるのではないかとずっと不安だったらしく、許可されて拍子抜けした様子であった。
ジルとしてはナキナは知らない仲でも無いし、鬼人族には少なからず転生して迷惑を掛けた。
勝手な罪滅ぼしかもしれないがこちらの言う事を聞いてくれるのならば、ナキナの自由にさせる事にした。
「ジル殿の言う通りにするのじゃ。」
恩返ししにきたのであって迷惑を掛けにきた訳では無い。
人族の暮らしをしていくのだし、言われた事はしっかりと守るつもりだ。
「やったのです!またお姫様と一緒にいられるのです!」
「妾も嬉しいぞ!シキ殿とライム殿も仲良くしてくれると嬉しいのじゃ。」
シキとライムは鬼人族の集落にいた頃、ナキナと共に行動する時間が長かった。
なので今ではすっかり打ち解けている。
「到着だ。」
セダンの街から少し離れた場所にスカイを着陸させる。
出発の時と同じく街の近くに降りて他の人を驚かせない為だ。
「わしはスカイに飯を食べさせてくるからここで解散としよう。」
ダナンがスカイの上に乗ったまま言う。
「魔物狩りか?手伝うぞ?」
「狩りもスカイの楽しみの一つだから気にするな。また何かあれば店にこい。」
そう言い残してスカイは飛び立っていった。
向かっている方角は魔の森なので、魔物達はレッサーワイバーンと言う捕食者に狙われるだろう。
「我らは街に入るとするか。」
門に近付いていくと閉まっていたのだが、丁度門番が門を開けてくれた。
開門のタイミングとかち合ったらしい。
「おっ、朝から待っている者がいたか。」
「今帰ってきたところだ。」
「それはタイミングが良かったな。身分証を出してくれ。」
通行の手続きとして冒険者カードを差し出す。
シキは契約した精霊であり、ライムは従魔なので身分証は必要無い。
「そう言えばナキナは身分証を持っているのか?」
奴隷は人と言うよりは物の様に一般的に扱われるが、街の出入りに関しては身分証が無ければお金が掛かるらしい。
奴隷の街の出入りにお金が掛からないとなれば、する者がいるとは思えないが奴隷を装って無償で街を出入りしようとする者が出てこないとも限らないかららしい。
「冒険者カードならば持っておるぞ。この前作ったのじゃ。」
門番に自分の冒険者カードを渡す。
ナキナのランクはEとなっている。
ジルの時にもあったがギルドで冒険者になる時にある程度の力量を見極めてランクを決める為にランク選定試験を受ける必要がある。
試験を受けた冒険者が試験官の評価でEFGの三つのランクに分けられる。
ナキナがEランクと言う事は文句無しの実力だと判断されたのだろう。
「よし、通っていいぞ。」
街の中に入ったジル達は早速普段から泊まっている宿屋に向かう。
宿屋前には早朝から掃き掃除をしている看板娘のリュカの姿が見える。
「朝からせいがでるな。」
「ジルさん、今帰ったんだ。おかえり。」
朝から元気にリュカが挨拶してくる。
「ん?そっちの鬼人族の女の人はお客さん?」
ジル達が宿屋に泊まってからそれなりに経つので、見知らぬ人と行動していれば気になるだろう。
「ああ、我の隣りの部屋は空いているか?」
「大丈夫だよ。手続きは後でもいいから鍵渡しておくね。」
早朝に冒険者が帰ってくるのは宿屋をしていれば珍しい事でも無い。
依頼で朝帰りと言う事も多いので疲れているだろうと面倒な作業は後回しにして気を利かせてくれているのだ。
お金も後払いでいいと言うのは信用してくれているのだろう。
「悪いな。」
「感謝するのじゃ。」
リュカに見送られながら部屋に向かう。
積もる話しもあるとは思うが皆疲れているので一旦寝てゆっくり休んでから改めてと言う事になった。
依頼した天使や盗賊の情報を即座に把握出来ていなかったのか、街に戻っても貴族に押し掛けられる事も無かった。
「もう直ぐ到着するぞ。」
前方を見ながらスカイの背中に乗っている皆に向けてダナンが言う。
その声を聞いて眠そうにしていた者達がようやく到着かと背伸びしている。
貴族だけで無く送り込まれた天使や盗賊とも一騒動あったので早くセダンの街に帰りたかった。
夜通し飛んだ事もあり明け方には到着出来そうだ。
「あれが普段ジル殿達が過ごしておる街なんじゃな?」
遠くに見えてきた街並みを見てナキナが呟く。
「ああ、中々住み心地がいいぞ。」
「仲の良い知り合いも沢山出来たのです!」
転生してからずっと同じ街で暮らしているので良好な関係を築けた者も増えてきた。
それに街のトップである領主とも気楽な関係を築けているのは生活する上で便利である。
「妾も楽しみなのじゃ。」
「本当にこっちで暮らしていくのか?」
「うむ、ジル殿達が迷惑で無ければ、妾も近くで共に過ごさせてほしい。」
ナキナの事についてはスカイの背中で飛んでいる最中に軽く聞かせてもらった。
これからは仲間に加えてもらいセダンの街で暮らし、一緒に行動させてほしいとの事だった。
元々何も言わずに集落を出ていったジル達を探す為に旅に出たらしい。
そして会ったらお礼として役に立って恩返しをするつもりだったとか。
「我は別に構わないが、共に行動したいのなら勝手な行動はするなよ。」
ジルがすんなりと受け入れた事にナキナは驚いていた。
断られるのではないかとずっと不安だったらしく、許可されて拍子抜けした様子であった。
ジルとしてはナキナは知らない仲でも無いし、鬼人族には少なからず転生して迷惑を掛けた。
勝手な罪滅ぼしかもしれないがこちらの言う事を聞いてくれるのならば、ナキナの自由にさせる事にした。
「ジル殿の言う通りにするのじゃ。」
恩返ししにきたのであって迷惑を掛けにきた訳では無い。
人族の暮らしをしていくのだし、言われた事はしっかりと守るつもりだ。
「やったのです!またお姫様と一緒にいられるのです!」
「妾も嬉しいぞ!シキ殿とライム殿も仲良くしてくれると嬉しいのじゃ。」
シキとライムは鬼人族の集落にいた頃、ナキナと共に行動する時間が長かった。
なので今ではすっかり打ち解けている。
「到着だ。」
セダンの街から少し離れた場所にスカイを着陸させる。
出発の時と同じく街の近くに降りて他の人を驚かせない為だ。
「わしはスカイに飯を食べさせてくるからここで解散としよう。」
ダナンがスカイの上に乗ったまま言う。
「魔物狩りか?手伝うぞ?」
「狩りもスカイの楽しみの一つだから気にするな。また何かあれば店にこい。」
そう言い残してスカイは飛び立っていった。
向かっている方角は魔の森なので、魔物達はレッサーワイバーンと言う捕食者に狙われるだろう。
「我らは街に入るとするか。」
門に近付いていくと閉まっていたのだが、丁度門番が門を開けてくれた。
開門のタイミングとかち合ったらしい。
「おっ、朝から待っている者がいたか。」
「今帰ってきたところだ。」
「それはタイミングが良かったな。身分証を出してくれ。」
通行の手続きとして冒険者カードを差し出す。
シキは契約した精霊であり、ライムは従魔なので身分証は必要無い。
「そう言えばナキナは身分証を持っているのか?」
奴隷は人と言うよりは物の様に一般的に扱われるが、街の出入りに関しては身分証が無ければお金が掛かるらしい。
奴隷の街の出入りにお金が掛からないとなれば、する者がいるとは思えないが奴隷を装って無償で街を出入りしようとする者が出てこないとも限らないかららしい。
「冒険者カードならば持っておるぞ。この前作ったのじゃ。」
門番に自分の冒険者カードを渡す。
ナキナのランクはEとなっている。
ジルの時にもあったがギルドで冒険者になる時にある程度の力量を見極めてランクを決める為にランク選定試験を受ける必要がある。
試験を受けた冒険者が試験官の評価でEFGの三つのランクに分けられる。
ナキナがEランクと言う事は文句無しの実力だと判断されたのだろう。
「よし、通っていいぞ。」
街の中に入ったジル達は早速普段から泊まっている宿屋に向かう。
宿屋前には早朝から掃き掃除をしている看板娘のリュカの姿が見える。
「朝からせいがでるな。」
「ジルさん、今帰ったんだ。おかえり。」
朝から元気にリュカが挨拶してくる。
「ん?そっちの鬼人族の女の人はお客さん?」
ジル達が宿屋に泊まってからそれなりに経つので、見知らぬ人と行動していれば気になるだろう。
「ああ、我の隣りの部屋は空いているか?」
「大丈夫だよ。手続きは後でもいいから鍵渡しておくね。」
早朝に冒険者が帰ってくるのは宿屋をしていれば珍しい事でも無い。
依頼で朝帰りと言う事も多いので疲れているだろうと面倒な作業は後回しにして気を利かせてくれているのだ。
お金も後払いでいいと言うのは信用してくれているのだろう。
「悪いな。」
「感謝するのじゃ。」
リュカに見送られながら部屋に向かう。
積もる話しもあるとは思うが皆疲れているので一旦寝てゆっくり休んでから改めてと言う事になった。
4
お気に入りに追加
119
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる