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16章
元魔王様とシキの契約者 2
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指名依頼とは受ける冒険者を依頼主が指名して頼んでくる形態の依頼の事である。
本来ならば強制力のある指名依頼を断るとギルドからの評価に関わり、ランクダウンや報酬減額などの処置をされる事がある。
しかしそれはCランク以上の冒険者に限定され、Dランクのジルには関係無いので断っても問題は無い依頼でもある。
なので内容を見て気に入らなければその場で断っても文句は言われない。
「ほう、短時間の割には中々の額だな。」
依頼書の内容を見たジルが呟く。
普段受けている依頼と比較してもかなりの高額依頼であった。
「収納系のスキルは貴重ですからね。それにジルさんに荷運びを頼むのも心苦しいですから、それを考慮した額となります。」
荷運びは報酬があまり高く無いので、本来ならば低ランク帯の冒険者の雑用依頼である。
なので収納系統のスキルを持つ者達は、わざわざ荷運びの依頼を受けたりはしない。
収納系統のスキルも使用する度に当然魔力を消費する。
しかし誰もがジルの様に無制限に持てる訳でも無く、大量の魔力を持っている訳でも無い。
なので安い報酬の荷運びで一日魔力を使えなくするよりは、別の依頼を受けて仲間の為にスキルを使う事を優先するのが普通だ。
ギルド側もそう言った事は分かっているので、Dランクとは言え実力は高ランクと遜色無いジルに荷運びを頼むのは申し訳無く思っていた。
なので他の依頼に回す予定の魔力を使わせる事を考慮して、少し高い報酬にしているのだ。
「いいだろう。短時間で終わるし、もう一稼ぎしてから帰るとしよう。」
「ありがとうございます!助かります!」
ミラは嬉しそうにお礼を言って依頼書の手続きをする。
荷運びの作業は大変であり、受付嬢も駆り出される事になっていたので、ジルが受けてくれればミラも重労働をしなくてすむのだ。
「ミラさん、ちょっといいですか?商隊長の方がお越しなのですが。」
別の受付嬢がミラに声を掛けてくる。
どうやら荷運びの相手が到着した様だ。
「ベストタイミングですね。直ぐに素材を運びますから、外で待ってもらって下さい。」
「分かりました。」
受付嬢が自分の受付で待っている身なりの良い者と話している。
商隊を率いてきた商人であろう。
「ジルさん、早速お願いします。」
「分かった。」
ミラに案内されていつもの倉庫に向かう。
いつもと違ってギルド職員達が忙しく動いている。
大量の素材を倉庫から運び出すので、運び出しやすい様に入り口付近に集められていた。
ジルは先程依頼を受けたばかりなので、ギルド職員達は荷運びをしてくれるとはまだ知らない。
普段から大量に魔物の買い取りをギルドに頼む冒険者と言うのがギルド職員の認識なので、この忙しい時にまさかと数人が身構えている。
「皆さん、ジルさんが依頼を受けて下さいましたから、ここになるべく集めてもらえればそれで大丈夫です。」
ギルド職員に向けてミラが言うと、皆一様に助かったと言う表情になっている。
ジルのスキルについては倉庫で披露する事が度々あるので、知っている者も多いのだ。
「かなりの量だな。」
ギルド職員達によって次々と集められていく素材を収納しながら言う。
既にかなりの量を無限倉庫に収納しているのにまだ終わらない。
「往復で一月くらいは掛かりますから、頻繁に来れる訳でも無いんです。なので一度に仕入れる数も多くなるんですよね。」
そうは言っても一体馬車何台分の量なのかと言う程の量だ。
しかし無限倉庫にキャパオーバーは無いので全て仕舞う事は出来る。
ジルがこんなスキルを持っているのでギルドの者達としては、大口の取り引きをジルに移動してやってもらえれば安全で確実だと思っていたりする。
だがジルは長期間拘束されてしまう様な依頼を受けるつもりは無い。
ミラやギルド職員の一部もそれを分かっているので、受けてくれないだろうと思い頼まないのだ。
「これで全部だな。」
「では表に向かいましょうか。」
全て収納し終えたジルはミラに付いてギルドの外に向かう。
ギルドはセダンの街の中央通りに面している。
街の中央通りと言うだけあって道幅はかなり広く作られている。
馬車同士の衝突事故なんて起こらない様に、余裕をもって馬車四台分くらいの幅が設けられている。
そんなギルドの前に十台を超える大所帯の馬車が一列に綺麗に並べられていた。
少し道を占領してしまってはいるが大口の取り引きは定期的にあるので、セダンに住んでいる者達も分かっている様で、道を通る際に気を付けてくれている。
「お待たせ致しました。」
先程受付嬢に商隊長と呼ばれていた商人が見えたのでミラが話し掛ける。
「早速素材を受け取らせてもらいにきました。」
商隊長が長旅の疲労を感じさせない表情で言う。
実はギルドに訪れる前に既にこの街で行商をしてきたので、懐が随分と潤っており機嫌が良い。
大量の馬車で来たのは仕入れる為だけでは無い。
素材を買うついでにこの街では珍しい物を売りにもきているのである。
「宿屋の手配もしております。いつもの場所です。」
「助かります。」
宿の案内状を商隊長が笑顔で受け取る。
後で聞いた話しだが一泊してから直ぐに街を発つ様で、その一泊も商品のチェックをする時間らしい。
往復で1ヶ月近くも掛かるので呑気に休んでいる暇は無いのだと言う。
「それでは積んでいきますね。手前の馬車からでよろしいですか?」
ミラが尋ねながら馬車に近付いていくのでジルも付いていく。
「ええ、それで大丈夫です。ところで特に何もお持ちで無い様ですが?」
手ぶらで馬車に近寄る二人を見て商隊長が疑問に思いながら言う。
「ご心配いりませんよ。ジルさん、ここに出して下さい。」
「分かった。」
ジルは無限倉庫のスキルを使ってミラに指定された場所に先程収納した素材を次々と出していった。
本来ならば強制力のある指名依頼を断るとギルドからの評価に関わり、ランクダウンや報酬減額などの処置をされる事がある。
しかしそれはCランク以上の冒険者に限定され、Dランクのジルには関係無いので断っても問題は無い依頼でもある。
なので内容を見て気に入らなければその場で断っても文句は言われない。
「ほう、短時間の割には中々の額だな。」
依頼書の内容を見たジルが呟く。
普段受けている依頼と比較してもかなりの高額依頼であった。
「収納系のスキルは貴重ですからね。それにジルさんに荷運びを頼むのも心苦しいですから、それを考慮した額となります。」
荷運びは報酬があまり高く無いので、本来ならば低ランク帯の冒険者の雑用依頼である。
なので収納系統のスキルを持つ者達は、わざわざ荷運びの依頼を受けたりはしない。
収納系統のスキルも使用する度に当然魔力を消費する。
しかし誰もがジルの様に無制限に持てる訳でも無く、大量の魔力を持っている訳でも無い。
なので安い報酬の荷運びで一日魔力を使えなくするよりは、別の依頼を受けて仲間の為にスキルを使う事を優先するのが普通だ。
ギルド側もそう言った事は分かっているので、Dランクとは言え実力は高ランクと遜色無いジルに荷運びを頼むのは申し訳無く思っていた。
なので他の依頼に回す予定の魔力を使わせる事を考慮して、少し高い報酬にしているのだ。
「いいだろう。短時間で終わるし、もう一稼ぎしてから帰るとしよう。」
「ありがとうございます!助かります!」
ミラは嬉しそうにお礼を言って依頼書の手続きをする。
荷運びの作業は大変であり、受付嬢も駆り出される事になっていたので、ジルが受けてくれればミラも重労働をしなくてすむのだ。
「ミラさん、ちょっといいですか?商隊長の方がお越しなのですが。」
別の受付嬢がミラに声を掛けてくる。
どうやら荷運びの相手が到着した様だ。
「ベストタイミングですね。直ぐに素材を運びますから、外で待ってもらって下さい。」
「分かりました。」
受付嬢が自分の受付で待っている身なりの良い者と話している。
商隊を率いてきた商人であろう。
「ジルさん、早速お願いします。」
「分かった。」
ミラに案内されていつもの倉庫に向かう。
いつもと違ってギルド職員達が忙しく動いている。
大量の素材を倉庫から運び出すので、運び出しやすい様に入り口付近に集められていた。
ジルは先程依頼を受けたばかりなので、ギルド職員達は荷運びをしてくれるとはまだ知らない。
普段から大量に魔物の買い取りをギルドに頼む冒険者と言うのがギルド職員の認識なので、この忙しい時にまさかと数人が身構えている。
「皆さん、ジルさんが依頼を受けて下さいましたから、ここになるべく集めてもらえればそれで大丈夫です。」
ギルド職員に向けてミラが言うと、皆一様に助かったと言う表情になっている。
ジルのスキルについては倉庫で披露する事が度々あるので、知っている者も多いのだ。
「かなりの量だな。」
ギルド職員達によって次々と集められていく素材を収納しながら言う。
既にかなりの量を無限倉庫に収納しているのにまだ終わらない。
「往復で一月くらいは掛かりますから、頻繁に来れる訳でも無いんです。なので一度に仕入れる数も多くなるんですよね。」
そうは言っても一体馬車何台分の量なのかと言う程の量だ。
しかし無限倉庫にキャパオーバーは無いので全て仕舞う事は出来る。
ジルがこんなスキルを持っているのでギルドの者達としては、大口の取り引きをジルに移動してやってもらえれば安全で確実だと思っていたりする。
だがジルは長期間拘束されてしまう様な依頼を受けるつもりは無い。
ミラやギルド職員の一部もそれを分かっているので、受けてくれないだろうと思い頼まないのだ。
「これで全部だな。」
「では表に向かいましょうか。」
全て収納し終えたジルはミラに付いてギルドの外に向かう。
ギルドはセダンの街の中央通りに面している。
街の中央通りと言うだけあって道幅はかなり広く作られている。
馬車同士の衝突事故なんて起こらない様に、余裕をもって馬車四台分くらいの幅が設けられている。
そんなギルドの前に十台を超える大所帯の馬車が一列に綺麗に並べられていた。
少し道を占領してしまってはいるが大口の取り引きは定期的にあるので、セダンに住んでいる者達も分かっている様で、道を通る際に気を付けてくれている。
「お待たせ致しました。」
先程受付嬢に商隊長と呼ばれていた商人が見えたのでミラが話し掛ける。
「早速素材を受け取らせてもらいにきました。」
商隊長が長旅の疲労を感じさせない表情で言う。
実はギルドに訪れる前に既にこの街で行商をしてきたので、懐が随分と潤っており機嫌が良い。
大量の馬車で来たのは仕入れる為だけでは無い。
素材を買うついでにこの街では珍しい物を売りにもきているのである。
「宿屋の手配もしております。いつもの場所です。」
「助かります。」
宿の案内状を商隊長が笑顔で受け取る。
後で聞いた話しだが一泊してから直ぐに街を発つ様で、その一泊も商品のチェックをする時間らしい。
往復で1ヶ月近くも掛かるので呑気に休んでいる暇は無いのだと言う。
「それでは積んでいきますね。手前の馬車からでよろしいですか?」
ミラが尋ねながら馬車に近付いていくのでジルも付いていく。
「ええ、それで大丈夫です。ところで特に何もお持ちで無い様ですが?」
手ぶらで馬車に近寄る二人を見て商隊長が疑問に思いながら言う。
「ご心配いりませんよ。ジルさん、ここに出して下さい。」
「分かった。」
ジルは無限倉庫のスキルを使ってミラに指定された場所に先程収納した素材を次々と出していった。
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