上 下
143 / 693
16章

元魔王様とシキの契約者 1

しおりを挟む
 後日、ジルとアレンは再びギルドを訪れていた。
タイタンベノムスネークや他の魔物の買い取りをしてもらう為である。

「ではこちらが残りの買い取り代金となります。」

 ミラが重そうな袋を机の上に運んでくる。
中はキラキラと光り輝く金貨で埋め尽くされており、相当な金額で売れた様だ。

 大量の金貨とは別に大金貨も数枚渡される。
こちらはタイタンベノムスネークの買い取り代金であり、特殊個体と言う事もあってこちらもかなりの値段になった。

「想像以上の額だな。」

 アレンは嬉しそうに袋を受け取っている。
報酬は既にギルドの方で分けて出してくれていた。

「だがよかったのか?ジルの方が金が少なくなっちまってよ。」

 ミラから袋を受け取っているジルにアレンが言う。
どちらも大金を受け取った訳だが、アレンの貰った額の方が多いのである。

「元々そう言う約束だったからな。それにこれだけ貰えれば文句は無い。」

 ジルの報酬が少ないのは、一部のタイタンベノムスネークの素材を抜いた分である。
ライムの新スキル習得の為にタイタンベノムスネークの一部を吸収させたので、その分が引かれた報酬となっている。

 吸収させた成果は充分にあり、ライムは強力な溶解液のスキルを取得する事が出来た。
これによって最初から覚えていた変化吸収に加えて、分裂、威圧、石化、溶解液を覚えている事になる。

 スキルの構成を見ると強者感が凄まじい。
集団の低ランクの魔物相手でも絶対的優位性を保てる威圧、そして本体の死ぬリスクを減らして手数を増やせる分裂と言う使い勝手の良い二つのスキル。

 残りのスキルも石化で動きを止めて溶解液で溶かし、倒した魔物を変化吸収で自分の力に変えると言う所謂いわゆるチートコンボも可能である。

 しかし今のライムでは魔力量が足りず、そんなにスキルの乱用は出来無いのでチートコンボはお預けだ。
しかし無限に強くなれるライムなので、将来性は充分にあると言える。

「そうか、今回は本当に助かったぜ。また何かあったらよろしくな。」

 アレンはジルにそう告げてギルドを出ていった。
昨日も大金を得ていたので、孤児院に帰ってからは全員に美味い料理を振る舞っていた。

 豪勢な食事をしても全く金は使い切れなかったのに、更に今日も大金を得たので、暫くは孤児院も贅沢な日常を送れるだろう。

「ジルさんはこの後にご予定はあるんですか?」

 残ったジルにミラが尋ねてくる。

「ふむ、特に考えてはいないな。お前達は何か希望はあるか?」

 両肩に乗っているシキとライムに尋ねる。
と言ってもライムは主人であるシキに殆ど同調するので形だけの質問だ。

「シキはジル様のしたい事に付き合うのです。」

 シキがそう言うとライムも同意する様にプルプルと揺れている。

「もしお暇なら簡単な依頼を受けていかれませんか?荷運びなのですけど。」

 ミラは少し遠慮気味に尋ねてきた。
断るならばそれでも全然構わないと言った様子である。

「荷運び?」

「はい。この後一つの商隊がセダンの街を訪れる予定なんです。ギルドから魔物の素材を大量に買い取る為にです。」

 話しを聞くと隣りの領地から商隊が買い付けにくるらしい。
隣りと言っても片道を商隊規模の馬車の移動で2週間も掛かる長旅である。

 セダンの街の近くには魔の森があり、沢山の魔物の素材が取れる。
その中にはこの辺りにしかいない魔物も多く、そう言った珍しい魔物の素材を遠出してでも買い付けて、街の利益としたいらしい。

「素材はご存知の通り倉庫に保管してあります。それを表に運び出す作業は中々に大変ですので。」

 倉庫からギルドの外まではそれ程距離が離れている訳では無い。
それでも魔物の素材を抱えながら何度も何度も往復するのは大変な作業だろう。

「つまり我の無限倉庫のスキルを頼りたいと言う事か。」

 ジルの持つ無限倉庫のスキルは収納量に限界が無い。
荷運びをするとなれば一度に全ての物を移動させる事が出来る。

「そうなります。実は急遽人手が足りなくなってしまって、ギルド職員だけでは時間が掛かりそうなのです。なので冒険者の方にも依頼しようとしていました。」

「我一人いれば事足りる訳だしな。」

 多くの冒険者に依頼しなくても、荷運びならばジル一人いれば簡単に終わらせられる。
ギルド側としては受けてもらえれば大助かりだろう。

「当然依頼ですから報酬も出しますよ。どうですか?」

 そう言ってミラが依頼書を見せてくる。
依頼書はギルドからジルへの指名依頼となっていた。
Dランクに指名依頼が来る事は稀なのでジルは興味深そうに依頼書に目を通していった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

処理中です...